「道の駅」を自動運転やMaaSの中核に…実証実験に見る、その可能性

「道の駅」を拠点とした自動運転サービスの実証実験の様子
「道の駅」を拠点とした自動運転サービスの実証実験の様子全 3 枚

地域に最適な公共交通のあり方として、国土交通省は「道の駅」を使った自動運転やMaaS(Mobility as a Service)の実証実験を加速させている。道の駅を活用することで、その先にはどんな目標があるのだろうか。

国土交通省の資料によれば、都市部では道路混雑やドライバー不足が顕著となり、地方部では高齢化の深刻化等に伴う地域の交通サービスが縮小、そのため移動そのものの縮小等が進んでいるとする。特に地域公共交通の輸送人員は軒並み大幅な下落傾向にあって、全国の6割の事業者が赤字に陥っている状況にあるという。

こうした諸問題を解決する糸口として注目されているのがMaaSであり、そこで展開されるであろう自動運転によるサービスなのだ。

MaaSの中核に「道の駅」を

中山間地域における道の駅等を拠点とした自動運転サービス(出典:国土交通省)中山間地域における道の駅等を拠点とした自動運転サービス(出典:国土交通省)

MaaSはモビリティをサービスのひとつと捉え、ICTを活用しシームレスにつなぐという新しい移動の概念。例えば、目的地を設定するだけで様々な交通機関がつながるようなサービスだ。これまでは接続する交通機関ごとに手配が必要だったが、この連携によって公共交通機関の利便性を高め、それぞれの特性を活かすことで利用率アップへとつなげていく。つまりMaaSは利用者にとっても交通機関にとってもメリットがある“Win-Win”の関係をもたらすサービスとされているのだ。

そして、その中核施設として国土交通省が位置付けているのが「道の駅」だ。道の駅は現在は全国に1154か所(2019年3月末現在)が整備されているが、当初の目的は一般道路上でのドライバー向けの休憩施設としてスタートした。しかし、その後は過疎地域での数少ない商業施設としても機能するようになり、地域の物産を販売し、同時に各地域の情報発信の場として使われることが多くなっている。国土交通省が道の駅を舞台として実証実験を行っているのはこうした背景を踏まえてのことなのだ。

道の駅「たかはた」で実施する自動運転サービスの実証実験の例(出典:国土交通省)道の駅「たかはた」で実施する自動運転サービスの実証実験の例(出典:国土交通省)

2014年11月に施行された改正地域公共交通活性化再生法の下、政府は2018年12月末までに439件の地域公共交通網形成計画を策定。すでに29件で具体的な実施計画が認定されている。

中でも注目度が高いのが自動運転サービスへの関心だ。自動運転そのものは多くの人から認知されており、その実現によって高齢者の移動に強い味方になってくれるとの期待感は強い。とはいえ、本当に実現するのか、あるいは安全に運行できるのか。そんな自動運転に対して懐疑的に思う人も少なくないという現実もある。

そこで国土交通省では、実証実験に参加する人たちにアンケートを実施している。それによると、参加前までは自動運転に懐疑的だった人が、参加後は概ね賛同する意見に変化。中には過疎地域にこそ位置にでも早い導入を期待するとの声も上がったほどだという。

ただ、これまでの実証実験はあくまでA地点~B地点を結ぶ、言わば線と線をつなぐルートでの展開でしかない。中継地点を設ける実験も行われているが、それは途中下車的なレベルであって、オンデマンドで地域内のどこへでも向かえるような“面”での対応はないままだ。高齢化を迎えている地域では軒先までシャトルが迎えに来てこそその便利さを享受できるわけで、これには従来の実験から一歩踏み出た対応が欠かせないだろう。

その一方で広大な駐車場を抱える道の駅には、様々な交通インフラを相互に結びつける機能が備わっている。マイカーで道の駅まで出かけ、そこから公共機関に乗り換える「パーク&ライド」として使うことができるのはもちろん、目的地を設定することで必要な交通機関がつながるMaaSの基本的な考え方にも対応できる。道の駅にはそれらに対応できるインフラがすでに整っているというわけだ。

未来の交通インフラを切り拓く可能性

道の駅の実証実験はそれだけにとどまらない。ETCは高速料金の決済だけに使うものと思われがちだが、実はその機能は大幅な進化を遂げている。ETC2.0を使うことで、高速道路を一時退出した場合でも、目的地までそのまま利用した場合と同じ料金に調整する「一時退出」社会実験を全国20か所の道の駅と最寄りICで実施されているのだ。

実は高速道路料金の仕組みとして、目的地までの途中で退出すると料金が割り増しされることになっている。これは利用するICでその都度、施設料が加算されるためだ。それがETC2.0を搭載した車両が指定されたICまたはスマートICを経由し、指定の道の駅を利用することで割り増しが免除される。1時間以内に退出したICまたはスマートICに戻る必要はあるが、ドライバーにとってこのメリットは大きい。

このサービスを利用すれば、道の駅で地元ならではの物産を購入することもできるし、料金が安いガソリンスタンドに立ち寄ることだってできる。前述の条件さえクリアすれば、その間の行動は一切自由。その間に新たな発見に遭遇する可能性も十分ある。ETC2.0がドライブの新たな楽しさを提供してくれるというわけだ。

「道の駅」で展開されている様々な実証実験は、未来の交通インフラを切り拓いてくれる可能性を秘めている。その動向には今後も目が離せそうにない。

《会田肇》

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