【MaaS】日本版MaaSのポイントは3つ~中間とりまとめ要点と今後の動き~国土交通省公共交通政策部小川課長補佐[インタビュー]

国土交通省 総合政策局 公共交通政策部 交通計画課 の小川洋輔課長補佐
国土交通省 総合政策局 公共交通政策部 交通計画課 の小川洋輔課長補佐全 1 枚

トヨタ自動車とソフトバンクが設立したモネテクノロジーズ(以下、モネ)は3月のモネサミットで「自動運転を普及させる鍵は“MaaS”」と言及したようにMaaSに対する注目がますます自動車業界でも高まっている。MaaSは民間企業間のみならず国や自治体と連携したエコシステムの構築が必須といわれる。「MaaSの考え方で取組んでみたい」「どのように作ればよいのだろうか」「国はどのような方針を出しているのだろうか」といった声が自動車メーカーのみならずディベロッパー、保険、飲食、自治体、銀行、コンサルティングファームなど移動手段以外の多様な業界でも増えている。

国土交通省は、新たなモビリティの活用で、都市・地方が抱える交通サービスの課題解決をめざして「都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会」を昨年より開き、2019年3月14日にMaaSを含む新たなモビリティサービスの推進のための取組などについての中間とりまとめを実施した。

そこで、この国交省の中間とりまとめの要点と2019年度の動きについて、国交省総合政策局公共交通政策部小川洋輔課長補佐にセミナーで共に登壇するモビリティジャーナリスト楠田悦子がインタビューを行った。

※セミナーでは「日本版MaaSって何?」を詳しく楠田が切り込みながら、参加者のみなさんからの質疑応答の時間を設けます。

国交省のより具体的な政策内容、国内外の事例と日本版MaaSづくりについて聴きたい方は、こちらのセミナーへ
「日本版MaaSの実現に向けて~政策と先進事例に学ぶMaaSづくりの秘訣~」

日本版MaaSの特徴は“地方” に力点があること


---:中間とりまとめの要点を教えてください

日本のMaaSすなわち「日本版MaaS(仮称JapanMaaS)」の特徴は都市以外の“地方”にも着目している点が特徴です。世界的に都市と異なった移動手段の問題を抱える地方の課題解解決にMaaSを使う場合、ルーラル(Rural)MaaS(地方版MaaS)と表現されています。

フィンランドに出張しMaaSグローバル社やフィンランド運輸通信省などと意見交換を行ったり、他国の事例を集めました。他国はどちらかというと渋滞や環境問題を抱える都市の課題解決のツールとしてMaaSを活用しようという動きが強いように思います。

日本版MaaSのポイントは3つ


・ユニバーサルなMaaS(MaaS相互の連携によるユニバーサル化)
・高付加価値なMaaS(移動と多様なサービスの連携による高付加価値化)
・交通結節点の整備などまちづくりと連携したMaaS

1.ユニバーサルなMaaS(MaaS相互の連携によるユニバーサル化)
地域を問わずどこでも、高齢者・障がい者・貧富の差も関係なく誰もが使えるユニバーサルなMaaSを目指したいと思っています。

ICOCAやSuicaといった交通系ICカードの課題から学ぶこともたくさんあります。交通系ICカードは地域ごとに独自のICカードが生まれました。システムが異なるため相互連携にかなりの労力を要し、いまだに相互連携できていないICカードもあり、利用者の利便性にも影響がでてしまっています。

国内ではすでに、福岡ではトヨタと西日本鉄道で「my route(マイルート)」、伊豆半島ではダイムラーのmoovel(ムーベル)社のシステムを使った東急電鉄やJR東日本などの「Izuko(イズコ)」の実証実験がはじまっています。このように日本においては地域ごとに独自のMaaSが生まれるなど、数多くのMaaSが生まれるのではないかと予測しています。交通系ICカードの失敗を教訓に、はじめからMaaSでは相互連携できるように配慮をしていきます。

2.高付加価値なMaaS(移動と多様なサービスの連携による高付加価値化)
日本版MaaSは移動手段をつなぎ合わせるだけでありません。利用者視点で考えて、小売、医療・福祉、観光など“他のサービス” と組み合わせることを大切にしています。

他のサービスとの組み合わせは、日本の私鉄が昔から得意としてきたことです。阪急電鉄の宝塚劇場や小田急電鉄の小田急ストアなど、日本の私鉄の発想がMaaSの枠組みをつかうと目的地と移動をつなぐため、より高い付加価値になるでしょう。

3.交通結節点の整備などまちづくりと連携したMaaS
デジタルで移動手段をシームレスにつなげたり、MaaSアプリを開発するなどサイバー空間の取組みだけでは不十分です。例えばバス停やそこの案内表示が整備されていなければ利用者は使えません。したがって、まちづくりやインフラの整備もセットで考える必要があります。

そのため都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会の事務局は、総合政策局公共交通政策部交通計画課のみならず、都市局都市計画課都市計画調査室、道路局企画課評価室が担っています。

国交省のより具体的な政策内容、国内外の事例と日本版MaaSづくりについて聞きたい方 こちらのセミナーへ
「日本版MaaSの実現に向けて~政策と先進事例に学ぶMaaSづくりの秘訣~」

地域特性に合せて分類

地域特性に分けて日本版MaaSを進めていきたいと考えています。中間とりまとめでは
大都市型、大都市近郊型、地方都市型、地方郊外・過疎地型、観光地型の5つの地域特性で分けました。大きく分けると3つ「都市」「地方」「観光」になります。

都市での主な課題は、モビリティサービスを提供するステークホルダーが多いので、うまく一つにまとめることです。地方の課題は、移動やその手段の見える化と今ある資源の有効活用です。観光地は、訪日外国人を意識していて、海外からの旅行客にとっても使いやすいものをつくることです。

世界に向けても日本のMaaSの取組みをアピール

2019年1月にスイスで世界経済フォーラム(ダボス会議)が開催され国土交通大臣も参加しました。世界のモビリティ分野における官民リーダーたちによる「グローバル自動運転・都市交通カウンシル」の共同議長を国土交通大臣が務め「自動運転を前提とした新たな規制・制度の設計」「シームレスな交通結節点などのインフラ整備」「データの共有・活用を可能とする環境整備」など自動運転やMaaSの設計の重要性について日本の考え方を世界に発信することができました。次回は5月29日にサンフランシスコで正式会合が開催され、今後定期的に検討が進められます。

日本版MaaSの実装を支援


---:2019年度の取組みを紹介してください

2018年度は都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会に注力してきました。2019年度は主に2つあります。新モビリティ実証実験支援、共通基盤の構築です。

新モビリティサービス推進事業は2019年度予算で3.1億円が確保できました。公募をかけて、日本全国の実証実験に対して支援をしていきます。地域特性を5つに分けましたが、都市だけ、地方だけ、観光だけと偏らないように均等に選出したいと思っています。公募は春から初夏頃になる予定です。

日本版MaaSの特徴でも触れたように、民間企業のみならず、地域の自治体と話しながら作って「まちづくりとの連携」に配慮していただきたいです。またモネは約300自治体と動かれています。モネともコミュニケーションをとりながら動いています。

2つめの共通基盤の構築について。懇談会は休眠状態に入いります。しかしデータ活用の議論は非常に大切です。今後さらに議論を深める必要があるため、データについての検討会を立ち上げます。有識者だけではなく事業者に入ってもらい、議論を行います。2019年度中にまとめる予定です。

経産省とも連携


経済産業省と国交省では、将来の自動運転社会の実現を見据え、新たなモビリティサービスの社会実装を通じた移動課題解決、地域活性化を目指して地域と企業の協働による意欲的な挑戦を促すプロジェクト「スマートモビリティチャレンジ」を立ち上げます。このプロジェクトでは「スマートモビリティチャレンジ推進協議会」を立ち上げ、地域ごとにシンポジウムの開催など、地域や企業の取り組みに関する情報共有を促進し、ネットワーキングを進めます。先駆的取組に挑戦する「パイロット地域」に対する事業計画策定や効果分析等の支援を実施します。

経済産業省では製造産業局自動車課と情報経済課が主にMaaSの検討を行っています。
国交省の事業と経産省の事業は、新モビリティサービスの実証実験の支援で重複する部分もあります。またお互い得意とする部分が異なります。そこで連携することになりました。

新サービスを応援する仕組みができています。モネやJR東日本などの民間の動きもあります。民間企業とも連携して日本版エコシステムを構築していきたいと考えています。

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《楠田悦子》

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