FからRへ再び…ホンダ CBR650R は「高回転まで回して直4官能サウンド味わい尽くす」

LPL(開発責任者)筒井則吉氏(写真右)とLPL代行・吉田昌弘氏。
LPL(開発責任者)筒井則吉氏(写真右)とLPL代行・吉田昌弘氏。全 29 枚

2003年、ホンダは“Innovative Wonder”(イノベーティブワンダー)をコンセプトにMotoGPマシン『RC211V』で培った先進技術とスタイリングを随所に取り入れ開発した『CBR600RR』を発売し、600ccスーパースポーツの魅力を広く知らしめた。

そのクラスにはベストバランスと言われた『CBR600F』が1992年からあり、2001年に『CBR600F4i』へバトンを渡す頃には、スーパースポーツの最高峰1000ccクラスより扱いやすく、充分過ぎるほどに“速い”ということはライダーの間では常識となっていた。

そこへきて“RR”の称号を得たニューモデルだったから大人気に。リアカウル直下から見えるセンターアップマフラーはシンボルとなり、新しさに満ちあふれていたのである。

CBRのミドルクラスはいま650時代、再びFからRへ

CBR600RRCBR600RR
そんな『CBR600RR』だが、いつの間にか姿を消し、そのクラスには2014年に『CBR650F』が発売されている。“RR”へ昇華したミドルクラスのCBRだが、時代は繰り返すのだろうか再び“F”に逆戻り。しかし、排気量が上がって650となっていた。

『CBR650F』はV字型ヘッドライトで大人しめのスタイルだったが、今年3月、CBRシリーズの血統をよりいっそう感じさせる顔つきになって『CBR650R』として再デビューしている。

オールラウンド・フルカウルスポーツモデルとして5年前に登場した『CBR650F』は、トータルバランスの良さをウリにツアラー的なキャラクターも持ち合わせていたが、新型『CBR650R』はよりスポーティなライディングが楽しめる前傾ポジションで、吸気マネジメントにもツインラムエアダクトを採用。見るからにエキサイティングだ。

かつて『CBR600F』が『CBR600F4i』を経て『CBR600RR』に進化したように、今度は『CBR650F』が『CBR650R』となった。じつに興味深いではないか。

スーパースポーツで培った技術を取り入れた

ホンダ CBR650R 新型ホンダ CBR650R 新型
実車を前に、LPL(開発責任者)の筒井則吉氏(本田技術研究所 二輪R&Dセンター)そしてLPL代行・吉田昌弘氏(本田技術研究所 二輪R&Dセンター)に話を聞いた。

まずLEDデュアルヘッドライトが採用されたフロントマスクが、長兄にあたる『CBR1000RR』譲りのスポーツマインドあふれるもの。筒井氏は「スーパースポーツ開発で培ってきた最新の知見を取り入れた専用フルカウルです」と言う。ヘッドライト下両側には、ツインラムエアダクトへフレッシュエアを取り入れるインテークが配置されている。

吉田氏によれば「燃焼室への吸気充填効率が向上し、高速域でのより鋭いエンジン回転上昇フィーリングを実現している」とのこと。“CBR-R”の名に相応しい、高回転域までストレスなく一気に吹け上がる直4ならではのパワーフィールを獲得したのだ。

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マフラーはマスの集中化を図って『CBR650F』時代からのショートタイプを踏襲。センターアップマフラーの時代はもうとっくに終わっていて、新型はテールパイプ後端角度を従来からさらに35.4度上向きに。こうすることで、官能的な直4サウンドを乗り手がより楽しめるのだと筒井氏が教えてくれた。

また、シフトダウンの際に生じる急激なエンジンブレーキによる後輪ホッピングを軽減するアシストスリッパークラッチを新採用。筒井氏によると「クラッチレバー操作荷重を従来比約12%軽減」で、ライダーの疲労軽減と安心感向上が狙いだ。

そして、前後の車輪速度差からリアタイヤの空転を算出したときに駆動力を制御する「Honda セレクタブル トルク コントロール(HSTC)」も搭載。後輪スリップが緩和され、安全性向上に寄与する。

吉田氏は走行実験を担当し、「高回転まで回して乗ると良さがより味わえる」と実体験を語ってくれた。1000ccスーパースポーツでは回しきれないトップエンドも存分に使って走れるのが、このクラスの持ち味。かつての『CBR600RR』のように、スポーツライディングを追求するライダーに支持されそうだ。

LPL(開発責任者)筒井則吉氏(写真右)とLPL代行・吉田昌弘氏。LPL(開発責任者)筒井則吉氏(写真右)とLPL代行・吉田昌弘氏。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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