VWの新EVレーサー、『ID. R』発表…ニュルを仮想走行できるオンラインゲームも同時発表

パイクスピーク2018を制したEVレーシングカーのID. Rパイクスピークの進化版

ニュル最速EVを目指して空力性能や電動パワートレインを再チューニング

ID. Rでニュルを仮想走行できるオンラインゲームも発表

フォルクスワーゲン ID. R
フォルクスワーゲン ID. R全 8 枚

フォルクスワーゲン(Volkswagen)は4月24日、EVレーシングカーの『ID. R』をドイツでワールドプレミアした。

パイクスピーク2018を制したEVレーシングカーのID. Rパイクスピークの進化版

フォルクスワーゲンは2018年、1987年以来、31年ぶりにパイクスピーク国際ヒルクライムにワークス体制で参戦した。そのために開発した『ID. Rパイクスピーク』には、モーターを2個搭載し、最大出力680hp、最大トルク66.3kgmを引き出す。カーボンファイバー製のボディは、車両重量が1100kg以下。軽量ボディと高性能モーターの組み合わせが、0~100km/h加速2.25秒の性能を備える。

ID. Rパイクスピークには、市販EV同様、リチウムイオンバッテリーを搭載する。バッテリーセルには非常に高い性能を求められた。電力密度は、高電圧を発生する際のシステムで重要な要素になるためだ。市販車とは異なり、モータースポーツでの技術目標は航続ではなく、パイクスピークの頂上を目指すために可能な限り最大の出力を発生することにあった。

必要とされる電気エネルギーの約20%は、パイクスピークのおよそ20kmの走行中に生み出される。ブレーキング時に発電機として作動する電気モーターが、制動エネルギーの一部を電気に変換して、バッテリーに供給する。

フォルクスワーゲン ID. Rフォルクスワーゲン ID. RこのID. Rパイクスピークがパイクスピーク2018の決勝レースにおいて、ロマン・デュマ選手のドライブにより、初めて8分を切る7分57秒148の新記録で優勝した。2013年、セバスチャン・ローブ選手がプジョー『208 T16 パイクスピーク』で打ち立てた8分13秒878のコースレコードを、16秒以上短縮した。また、2016年にリース・ミレン選手が打ち立てたEVによる最速記録、8分57秒118を、1分近く短縮している。

ニュル最速EVを目指して空力性能や電動パワートレインを再チューニング

ID. Rパイクスピークの次なる挑戦が、ドイツ・ニュルブルクリンク北コースにおけるEV最速記録だ。そのために開発されたのが今回、ドイツで初公開されたID. R。中国上海に本拠を置くEVメーカー、NIOのEVスーパーカー『NIO EP9』が2017年に打ち立てた6分45秒900の更新を目指す。

ID. Rは、ID. Rパイクスピークの進化バージョンだ。ヒルクライムからサーキットへ、走行場所が変わるのに伴い、主にエアロダイナミクス性能を再チューニングした。パイクスピークでは、最大のダウンフォースを得ることに主眼を置いていた。

具体的には、平均車速180km/h以上、最高速270km/h以上に達するニュルブルクリンクに合わせて、F1マシンの「DRS」(抗力減少システム)を導入した新しい空力パッケージを開発した。さらに、電動パワートレインのエネルギー管理を最適化。2つの電気モーターの出力制御とブレーキ時のエネルギー回収の制御を見直した。

ID. Rでニュルを仮想走行できるオンラインゲームも発表

フォルクスワーゲンは、もう一つのワールドプレミアとして、無料でプレイできるID. Rのオンラインレーシングシミュレーションを発表した。このゲームでは、ユーザーがID. Rで全長20.832kmのニュルブルクリンク北コースを仮想走行し、ロマン・デュマ選手と競争することができる。

ゲームでは、VR(バーチャル・リアリティ)メガネも使用可能。コンピュータで開発された車両は、オリジナルのID. Rのデータに基づいて作成された。フォルクスワーゲンモータースポーツのエンジニアが、ゲーム開発者にEVのドライビングダイナミクスに関するアドバイスを行った、としている。

《森脇稔》

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