【川崎大輔の流通大陸】アセアンからの外国人自動車整備エンジニア その1

ベトナムの技能実習生送り出し機関
ベトナムの技能実習生送り出し機関全 5 枚

新年度がスタートし、改正入管法が施行され、新たな在留資格としての特定技能1号による外国人受け入れが2019年4月に始まった。自動車整備業も例外ではない。すべての自動車産業にかかわる企業が、大小問わず外国人の受け入れの問題に真正面から向き合う時代がきたと言える。

◆外国人整備人材と向き合う時代が到来

2016年4月1日より外国人技能実習生制度において「自動車整備」が職種に追加された。これによって外国人技能実習生が自動車整備の研修生として日本企業で働けるようになった。更に2019年度がスタートし、改正入管法が施行された。これによって4月から新たな在留資格「特定技能1号」での外国人整備人材の受け入れが始まった。2018年に技能実習制度を3年から5年に伸ばしたばかりだが、その成果がわからないうちに新しい制度を作った。

日本の労働力不足は逼迫した状況、予想以上にはやいスピードで進んでいると言って間違いない。特に自動車整備の業界は、他(ほか)の業界に比べて外国人の受け入れにおくれをとっている。

工場で働く技能実習生(鈴木自動車)工場で働く技能実習生(鈴木自動車)

日本における認定工場としての自動車整備会社は約9万2000社。日本自動車整備振興会連合会による自動車整備白書によれば、その中で約5割の整備事業会社で整備士が不足している。約1割の事業者が既に運営に支障が出ていると言う。国内で自動車整備人材の不足が深刻化する中、ようやく外国人労働者雇用を検討する自動車整備会社が出てきた。自動車整備業界は外国人の活用にもっと真剣に目を向ける時期にきている。

外国人は安い労働者ではなくパートナー

ベトナム人と面接する相本社長(ヴィーテック)ベトナム人と面接する相本社長(ヴィーテック)

鈴木自動車(鈴木社長、愛知県一宮市)は、自動車業界ではもっともはやくに外国人採用に踏み切ったパイオニア経営者の1人だ。2009年より技能実習制度を活用しベトナム人を採用。以後、10年間採用を続けている。

最初に採用したベトナム人リュウ氏の時より、採用後は鈴木社長自らベトナムを再訪問し、彼らのご両親に直接挨拶に行っている。「ご両親は大事な息子さんを預けてくださる。息子さんが働く会社が安心できる会社だとご両親にも知ってほしい」(鈴木社長)。更に「ベトナム人を安い労働者として考えている経営者は、この(技能実習)制度の利用を遠慮してほしい。日本の父親として、私は彼らを育成する」と語る。

ベトナムの自動車整備学校ベトナムの自動車整備学校

既に外国人を受け入れている自動車整備会社の中には、異文化の融合や、彼らの教育、言葉の壁にとまどう声も聞こえてくるように難しい一面もある。しかし、鈴木自動車での鈴木社長の思いは社内にもきちんと共有されている。「仕事でも根性がある。彼らをみていて日本人の従業員たちも『私たちもしっかりしなきゃ』と思ってくれたし、社内が活性化してチームワークもよくなった」(鈴木社長)。

単なる「人手」として考えるのではなく、彼らがいずれ母国で活躍できるようなキャリアアップを支援することだ。これからは長期的な信頼関係を築き、将来のパートナーとして外国人整備人材を受け入れていくという考え方、仕組みが必要となる。

ベトナムのモータリゼーションベトナムのモータリゼーション

外国人活用による組織の活性化

山田石油株式会社(山田社長、山口県周南市)は、県内26カ所のガソリンスタンドを展開している山田石油株式会社のグループ会社だ。既に4名の技能実習生が日本で働く。外国人を最初に受け入れた理由と尋ねると「技能実習制度というスキームを知りました。ちょうどその時に、(カーコンビニ倶楽部に)フランチャイズの加盟をしていて、面接会のお話をいただきました。また、人手不足というのも大きな理由でした」(山田社長)。

外国人を現在受け入れている会社も、初めての外国人受け入れには不安があった。「最初社員は不安がっていました。言葉が通じない中で仕事をしていくことに不安を感じていたからです」(山田社長)。しかし、「一緒に働いてみてわかることですが、(タイ人は)極めて優秀です。知らない国に若い人が1人で来るということはすごいこと。研修生は夢を掴み取りたいと頑張っていますので、まず受け入れてみることです。彼らの稼ぎよりも技術が上達し、生産性が上がっていきました」と指摘する。

外国人の活用は会社における人手不足の解消だけではない。私(川崎)がかかわったほとんどの自動車整備会社は、外国人整備人材の活用を通じて、日本人スタッフの意識が変わり、何かしらの組織活性化が起こっている。

まさに、日本の整備会社は外国人整備人材とどのように向き合っていかなければならない時代に突入している。自ら考えていく必要がある。外国人を安い労働者としてではなく共存できる戦力として考え、同じ釜の飯を食べ、信頼関係を構築しておくことが重要ではないだろうか。

海外からのインターンシップの活用

株式会社ヴィーテック(相本社長、山口県下松市)は車の買い取り・販売・修理・車検を行っている。2018年に(株)アセアンカービジネスキャリア(ACC)によるベトナムでの面接ツアーに参加。将来のスカイブルー人材となるインターンシップ生(ホーチミン工業大学の学生)の受け入れを決定した。2019年に彼らは入国予定だ。

「実際に日本(会社も含めて)になじめるかどうか、仕事を教えることができるかなどは、これから入社するのでまだ不安な部分はあります」(相本社長)。「今後ますます日本人の働き手がなくなると感じていました。また海外進出も視野に入れて活用に踏み切りました」と語る。

日本政府における外国人政策の大転換は、自動車整備の業界の中にも本格的に外国人が入ってくることを意味する。政府は外国人の日本での就職に更なる後押しをしていく方針だ。すべての自動車産業にかかわる企業が外国人の受け入れの問題に真正面から向き合う時代がきたと言える。

<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。

《川崎 大輔》

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