リース、レンタカー、カーシェアをワンストップで提供するオリックスの次の一手…オリックス自動車 執行役員 池田学氏[インタビュー]

リース、レンタカー、カーシェアをワンストップで提供するオリックスの次の一手…オリックス自動車 執行役員 池田学氏[インタビュー]
リース、レンタカー、カーシェアをワンストップで提供するオリックスの次の一手…オリックス自動車 執行役員 池田学氏[インタビュー]全 1 枚

社会全体の価値観が所有から利用へと移行していくなかで、消費者や企業とクルマの関係も変化しつつある。そんななか、自動車リース、レンタカー、カーシェアリング事業などを手掛けるオリックス自動車がどのような試みをしているのか。オリックス自動車 執行役員 レンタカー本部長の池田学氏に聞いた。

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レンタカー、カーシェアリングともに大きく伸長

---:オリックス自動車は自動車リース、レンタカー、カーシェアリング事業などを行っています。それぞれに対する考え方を教えてください。

池田氏:お客さまの車両利用状況に応じて、リース、レンタカー、カーシェアリングの最適な組み合わせを提案しています(リース営業事業所数54カ所、レンタカー拠点数1,055カ所、カーシェアリングステーション数1,790カ所。2019年3月末時点)。

かつての法人企業は、利用のピーク時に合わせて車両を用意しているケースが多かったように思います。しかしながら、リーマンショックを契機にその考え方は変わり、車両台数をピーク時に合わせるのではなく、最低限の車両を持ち、足りない時はレンタカーやカーシェアリングで補うという固定費を変動費化する動きが表れてきたのです。
個人にも同様の変化が見られ、コスト的に有利なカーシェアリングに切り替える方が増えてきたと思います。

近年はカーシェアリングの認知度がますます向上し、利用者数が伸びています。
カーシェアリングとレンタカーは同じようなサービスのため、カーシェアリングがレンタカーのマーケットを浸食していると思われがちですが、実際はレンタカー、カーシェアリングともに前年比で大きく伸びています。世の中のニーズが所有から利用へと変化している中で、利用時間や場所、用途などに応じて、その時々で最適なものを選ばれる方が多くなってきていると思います。

法人利用からスタート 伸びる個人利用

---:オリックスでは、法人と個人とでは、法人の方が多いのでしょうか?

池田氏:オリックスはもともとBtoB事業に強いグループのため、以前は法人のお客さまが多かったのですが、最近は個人の利用が大きく伸びています。

---:個人利用が伸びている理由は?

池田氏:かつては、カーシェアリングに対して面白い仕組みだと興味を持っていただいても、“借りたい時に借りられないのではないか”という漠然とした不安が解消されず、会員になるには至らない方が多かったと思います。さらには、会員になっても使うまでの最初の一歩がなかなか踏み出せない方もいらっしゃいました。
最近では利用者のそうした不安やハードルがなくなってきているのではないでしょうか。カーシェアリングが一般化してきていることと、カーシェアリングの拠点が増えているからだと思います。弊社では、1拠点にクルマを複数台置いて、面的にはメッシュを細かくしてステーションを設置するようにしています。そうすることで、いつも利用している車がない場合でも同じステーションに他の車がある、その車がない場合でも、もう少し離れたステーションに行けば車が確保できる、そういう状態をつくって利用者の不安を解消してきました。
また、車両美化やサービスメニューにも力を入れています。そういう地道な努力を評価していただいたのか、J.D.パワー ジャパンが実施している「カーシェアリングサービス顧客満足度調査」において3年連続総合でNo.1を受賞しました。
利用者の年齢層も広がっています。以前は利用者のメインは20~40代でしたが、最近では50代~60代の利用も増えてきており、幅広い年齢層の方にご利用いただいています。

レンタカーとカーシェアリングを組合せる

---:カーシェアリングを業界で先駆けてはじめ、レンタカーではネットワークが最大級のオリックス。今後の展開は?

池田氏:ガソリンスタンドでは有人スタンドからセルフタイプの店舗が増え、証券もインターネット取引が当たり前の時代になりました。レンタカー業界にもデジタル化の流れが来ていると感じます。MaaSやCASEの時代になれば、ますます"簡単、便利、早い"に対するニーズが加速するのではないでしょうか。

レンタカー店舗の24時間営業はなかなか難しいのが実情で、オリックスのレンタカーでは、ほとんどの店舗の営業時間が20時までとなっています。しかし、早朝や深夜など、レンタカー店舗の空いていない時間帯にもクルマを借りたい、あるいは返却したいというお客さまが大勢いらっしゃいます。そのニーズにお応えするため、カーシェアリングを併設させたレンタカー店舗の展開を進めたいと考えています。

オリックスレンタカーの強みの一つは店舗数の多さです。そして、同じグループであるオリックス不動産も数多くの施設を運営しています。そういう場所にカーシェアリングを配備していく。さらには、カーシェアリング機能を求める他の事業者と連携する手もあります。当社だけで事業展開するのではなく、いろいろな会社と連携して、お互いの知恵や資産、強みを生かしながら、より良いサービスを提供していきたいと思っています。

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走行データの活用にも期待

池田氏:当社のカーシェアリング車両には、車両運行データを収集できるテレマティクスシステムが搭載されており、走行データが日々どんどん溜まっています。
あるスタートアップ企業とともに走行データを分析して、カーシェアリング利用者の目的地を検証しました。単に軌跡を追うのではなく、一定時間以上車両が停まった地点を目的地と仮定し、その地点とそこにある施設のマッチングを行ったのです。その結果、カーシェアリングを使って向かわれた場所が可視化されました。それまでは、利用シーンを想像することしかできませんでしたが、可視化されたことで、同種の施設などへ優待提携などの取組提案ができるようになりました。 この走行データを活用できるパートナーをもっと増やしたいと思っています。

MaaS関連の取組み

池田氏:これまでも鉄道やホテルとの連携を行ってきましたが、今後もさらに進めたいと思っています。
2019年3月には関西の私鉄企業と新たに提携し、その沿線の20カ所にカーシェアリングを展開しました。また昨年の11月には沖縄本島の路線バスやモノレールを展開する企業と提携し、その交通系ICカードをオリックスカーシェアの解錠キーとする取組を実行しました。どちらも鉄道利用の二次交通として、お客さまの利便性向上に寄与していると思います。
ホテルを対象とした取り組みも展開しており、お客さまから大変好評いただいています。

自動運転時代にも対応可

池田氏:オリックス自動車は自動車関連サービスにおいて約45年の実績を誇り、レンタカー拠点は1,055カ所、整備事業者のネットワークは約9,000社に上ります。
カーシェアリングは無人で借りられる便利なサービスですが、車両の整備や洗車は通常のレンタカー同様、人の手を使わなければなりません。将来的に自動運転車両が一般的になっても同様ではないでしょうか。自動運転の時代が来たとしても、オリックス自動車は車両運行に必要なさまざまなネットワークを生かして、差別化されたサービスを提供できると考えています。

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《楠田悦子》

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