【日産 デイズ 新型】登録車に負けない存在感をめざして[デザイナーインタビュー]

日産デイズ新型
日産デイズ新型全 16 枚

新型日産『デイズ』は、これまでの軽自動車の概念を超える存在感や洗練さを表現するために、細部にまでこだわりながら精度感ある作り込みが行われたという。それは内外装のデザインにまで及ぶことから、その点を含めてデザイナーに話を聞いた。

登録車に遜色ないデザインへ

日産デイズ新型日産デイズ新型

----:早速ですが、エクステリアデザインのコンセプトを教えてください。

日産グローバルデザイン本部第三プロダクトデザイン部デザイン・マネージャーの渡辺和彦氏(以下敬称略):はい。全体のプロポーションという意味では、しっかりとした骨格とそれによる存在感。そしてスリークな流れや躍動感を高次元で並立することです。その理由は軽を超えて、登録車に遜色のないようなデザインを目指したからです。

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----:その一方で、先代のデイズのイメージというものもあったと思います。そういったものは踏襲されているのでしょうか。

渡辺:進化という形で継続していると考えています。先代のデイズは当時の軽自動車の中でも最も三次元的な造形が実現できていました。特に流れだとか動きといったものが高いレベルで表現できていたのです。しかし、実際のパッケージングよりも少し室内が小さく見えているのではないか、そのように思われている節がありました。そういったところを払拭して大きく進化させたのです。

日産 デイズハイウェイスター日産 デイズハイウェイスター

そういったことを踏まえ、キーワードを3つ挙げました。リライアブル、信頼感を感じてもらえるような全体としてしっかりした見え方。もうひとつはバイブラント、生き生きとした、例えばエクステリアでいうと躍動感だとかきびきびした印象。最後がプリサイズ、精緻な作り込みです。

顔の印象で差別化

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----:先代同様新型でも標準車と「ハイウェイスター」がラインナップされました。それぞれのデザインの狙いはどういうものでしょうか。

渡辺:プロポーション、厚みを感じてもらえるようなウエストから下のボディのボリューム感とスリークなキャビンは共通です。またそれによる安心感も一緒です。

日産 デイズハイウェイスター日産 デイズハイウェイスター

大きな差は顔の印象で強く感じさせています。標準車では親しみやすさというものを意識。ハイウェイスターはシャープさや先進感を強調してデザインしています。

----:標準車では親しみやすさとひと目で日産車とわかる“V-Motion”グリルとの両立がキーだと思いますが。

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渡辺:V-Motionはヘッドランプとグリルの部分に使っていますが、そこは人間の顔でいうと目のあたりの要素になり重要です。そこではハンサムさを表現しました。親しみやすさは全体で感じてもらいながら、同時に目元や顔周りでハンサムさを感じてほしい。そこで比較的ダイナミックでシャープなV-Motionと、キリッとした目つきをひとつのつながりの要素としてまとめあげました。

----:一方、ハイウェイスターはグリルの大きさを強調しているデザインに見えます。

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渡辺:存在感を増したいという思いがあります。サイズという意味と同時に、上下方向では存在感、威厳といった印象につながります。従ってV-Motion自体も大きく、Aピラーの根元から来る流れに完璧に沿うような形で、クルマのシェイプの中に溶け込み、かつ大きく主張していることで顔の印象を強めているのです。

精緻に見える作り込み

日産 デイズハイウェイスター日産 デイズハイウェイスター

----:ハイウェイスターではヘッドランプにもこだわりがあるそうですが。

渡辺:ヘッドランプの外側の透明なレンズですが、真ん中で上下に折れ曲がっています。通常ヘッドランプのレンズの途中が折れると光がそこで屈折してしまうなどで、変な筋が出てしまいます。しかし、ハイウェイスターの場合はLEDの小さなポケットを作り、これが上下二段積みの小さなリフレクターになり、上下別々で光が前に出ていきます。その間は光を発する光源自体がないので折れていても構わないのです。これはなかなか目にする機会のない構成ですから、新鮮に感じてもらえるでしょう。

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また、そのヘッドランプの周りに被さってくるボンネットとの合わせ関係も高品質に見えるように工夫しています。部品と部品の隙間が目線から見えないように工夫したのです。ヘッドランプの上が終わったところに隙間があってボンネットという形ではなく、少しだけボンネットがヘッドランプに被さっているのです。そうすることでつながり感が出て精緻な感じを出しています。

広々明るくオシャレな内装

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----:新型デイズのインテリアデザインのコンセプトは何でしょう。

日産グローバルデザイン本部第三プロダクトデザイン部デザイン・マネージャーの松尾才也氏(以下敬称略):デザインキーワードは3つあります。まずリフレッシングスペースは、清々しい気持ちの良い空間という捉え方です。次にバイブラント、気分がワクワク上がるような感じ。そしてスマート。これは収納とかスイッチのオペレーションなどの部分に関わるキーワードをベースに開発しました。

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他社を含めて広くて小物入れがいっぱいあるクルマは多くありますので、我々もそこはきっちりやるのですが、ちょっとだけオシャレ心も入れたいということもあり、バイブラントという言葉を使って、エクステリアと同調したトレイのパターンや、プレミアムオプショングレードにあるPVCラッピングしたインパネなどを採用しました。これは、茶色いインパネのアッパー部分とシートがブラウンの組み合わせで、そこにリアルステッチを施しています。さらにそれだけではなくその下に、ミントの色で織られたパイピングがあり、非常に凝った仕上げです。

とにかく気持ちよく広くて、収納もきちんとある。なおかつちょっとオシャレ心のあるという内装を目指しました。

日産 デイズハイウェイスター日産 デイズハイウェイスター

コントラストをつけることで

----:室内がすごく明るく感じますね。それとシート生地の色使いや織り込み方がすごく上手で、デイズ独特の世界観が表現されていると思います。

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松尾:標準車でも織物調のパターンや柄がシート全面に展開されています。なおかつ全部をベージュにするのではなく、シートの裏側とかは、よく子供がつかんで汚くなってしまうという声もありますので、その部分はブラウンにして室内の明るい部分と暗い部分のコントラストを作りました。

インパネの部分も同様で、アッパー部分はベージュですが下半分はブラックにして分割点を目立たなくするなどで、室内全体の明るい部分と暗い部分のコントラストを作っています。

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また、実際に明るく広く感じる部分としては、Aピラーと人の位置の関係があります。車両全体のレイアウトとしては、Aピラーは先代よりも前に出ています。一方人の位置もより前に出て、結果として先代よりもAピラーは人に近づきました。そのレイアウトを俯瞰すると、前方の見開き角はクラストップです。その結果、シートに座った時に視界が開けて明るい気分になると思います。

さらに、インパネのアッパー部分でベージュから色が変わる部分をなるべく人に近づけるようにし、見えにくくしました。その部分(インパネのアッパー部のフロントウインドウまでの距離)が前後に長く見えてしまうとクルマが長く感じてしまい、女性は運転しにくい気持ちになってしまうのです。そこで、なるべくその面を実際の寸法よりも目立たないような角度にして、なおかつすっきりと目立たせないようにしました。カラーについても、デザインの要素として見えるべき部分は目立つように明るい色にして、それ以外は目立たないようにしているのです。

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----:その角度をつけるというのは良いアイディアですね。

松尾:人間工学関係の女性からそういう話を頂きながら、我々も色々とトライをしました。実際にこの角度をつけるとインパネ自体が高くなってしまうのですが、その高さは意外と女性は気にしないという人が多くて、むしろナビが飛び出さなくなり、パネル全体としても一体感が出せました。

またスマートというキーワードに紐づくのですが、エアコンスイッチが現行車のものは表示部分と押す部分が別々で、風量の調整は矢印ボタンを何度も押さないといけませんでした。そこで新型では、ダイレクトに好みの風量ボタンを押すことで、即必要な風量が得られます。実は先代の場合、開発者でさえ間違えて表示部分を押してしまうことがあり、それであれば一緒にしよう、なおかつコンパクトで位置も高いところに配しましたので、非常にオペレーションしやすいと思います。

お互いの知恵を出し合って

----:そういった考え方などは三菱自動車と共有しながら進めたと思いますが、デザイン的にはどちらがリードしたなどはあったのでしょうか。

松尾:基本的には協業です。従って我々のスタジオに三菱の方々が来て一緒に開発を進めました。ドアポケットに車検証を入れるアイディアがあるのですが、これは昔から三菱の軽自動車でやっていますので、そういったところはうまくお互いに取り入れながら作り上げました。

先ほどのエアコンのタッチパネルなども、先代デイズで出来ていた部分もありますので、それをより良いものにしたという考え方です。これをゼロから日産で出来たかというとそこはどうかなという思いもあります。もともとお互いが持っているアセットをうまく活用しながらより良いものに進化させたということです。

----:初めて軽自動車をデザインしたと思いますが、どうでしたか。

松尾:寸法のマネージメントは非常に難しかったですね。そこで気がついた部分もありました。今回普通車に負けないぐらい割と大きなメーターを入れています。通常それぐらいのサイズのメーターを普通車で使うと、虚像がサイドミラーあたりに映り込んでしまうのです。その理由はガラスにタンブルがついているからなのですが、軽自動車はガラスが立っていますので虚像が真横に飛ぶのです。そうすると今度はミラーに虚像が映り込んでしまいます。そこを四苦八苦しながらメーターフードの寸法を増やしたりして虚像が映らないようにしました。そういうことがあるので、他社ではシングルの小さなメーターやセンターメーターを使っているのということがわかりました。

しかし普通車に負けないくらいの内装にしたかったので、最初から普通車サイズのメーターを入れようと、メーターの位置を調整したり形状を工夫したり、ミラーの位置を少し動かしたり、そういうマネージをしながら仕上げました。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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