ライドシェア1.0から2.0の時代へMaaSとライドシェア…ROOTS Mobility Japan代表安永修章氏[インタビュー]

ライドシェア1.0から2.0の時代へMaaSとライドシェア…ROOTS Mobility Japan代表安永修章氏[インタビュー]
ライドシェア1.0から2.0の時代へMaaSとライドシェア…ROOTS Mobility Japan代表安永修章氏[インタビュー]全 1 枚

「ウーバー・ジャパン」その政府渉外・公共政策部長として2017年1月から日本でのロビイング活動や事業戦略部長を担い、森ビルが社内向け実証実験を開始したことで日本でも話題になったニューヨーク発の乗合交通サービス「ヴィア(Via)」などの外資系モビリティ企業の日本ローンチアドバイザーを務める異色の経歴を持つ日本人がいる。安永修章氏だ。

なぜ今彼はウーバー・ジャパンを選んだのか。ウーバーとはどのような組織なのか。風当たりが厳しかった日本国内でどのようなロビイング活動を展開したのか。なぜ彼はいま新たに日本ローンチアドバイザーを務めるのか。ライドシェア新時代「ライドシェア2.0」とは?安永氏に聞いた。

6月19日、20日に東京オリ・パラとCASE・MaaSのキープレイヤーが一堂に会するセミナーが開催されます。詳細はこちらから。

---:なぜ今彼はウーバー・ジャパンを選んだのですか?


安永氏:モビリティやライドシェアに興味があったわけではありませんでした。

早稲田大学大学院修士課程修了したのちに、2009~2014年に米国ワシントンD.C.のシンクタンク日米研究インスティテュートにてマネージャー兼リサーチャーとして5年間勤務しました。東京大学、京都大学、早稲田大学、慶応大学、立命館大学の5つの大学が作ったシンクタンクで、日米関係に関する経済、安全保障、TPPなどの問題を扱っていました。

その後日本に帰国し、日系アメリカ人が設立した日米関係の強化に貢献する米日カウンシルで働きました。ちょうど2011年に関東大震災が発生し、トモダチ作戦で集まった募金を次世代のリーダーの育成につかうTOMODACHIイニシアチブの事務局を米日カウンシルが担うことになったため「メンバーに入って欲しい」と声がかかったことがきっかけでした。日米の政府間で動いていた内容でした。このあたりから政府渉外の道を歩みはじめました。

これがきっかけでウーバーにリクルーティングされたのです。

タクシー業界などと仲が悪かったウーバー


---:ウーバーとはどのような組織でしたか?
安永氏: 2017年1月からウーバー・ジャパン(Uber Japan)に政府渉外・公共政策部長として入社しました。当時のウーバーは、日本のタクシー業界や国土交通省の内情を知らず、アメリカのやり方をそのまま持ち込んだため、非常に関係性が悪い状況でした。国交省に行くと「なぜここにウーバーがいるんだ」と不信感が漂っていました。

それにも関わらず、その当時のウーバー・ジャパンには営業部隊しかなく、ロビー活動担当者がいませんでした。「ケンカをやめて関係性をゼロから再構築する必要がある」と、早くライドシェアを日本でローンチさせろ一辺倒のウーバー本社に対して談判しました。1年かけて国交省やタクシー議連の国会議員との関係構築にも努めました。

関係性が変わるターニングポイントは2018年1月。ウーバー2代目CEOダラ・コスロシャヒに安倍晋三内閣総理大臣が1対1で会ってくださったのです。外資系の代表に総理が1対1で会うことは非常にまれで、過去にアップルのCEOに合われた事例くらいだと言われています。ウーバーに入社後に築き上げた国交省や国会議員、そして米国ワシントンD.C.時代のネットワークをフル活用しました。

---:初のウーバーの配車システムを使ったタクシーの実証実験はなぜ淡路島からはじまったのですか?
安永氏:色々な理由がありますが、米国ワシントンD.C.時代から親交があった自民党所属の衆議院議員の西村康稔先生の支援があったからです。大阪や東北地方でもタクシー事業者との連携が開始するわけですが、その下準備にも約2年かかています。

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ライドシェア1.0からライドシェア2.0の時代へ


---: その後、安永さんはウーバーを離れられるわけですね?

安永氏:時代は「ライドシェア1.0」から「ライドシェア2.0」の時代へ移っています。「ライドシェア1.0」の時代はウーバーなどのライドシェア企業が市場を占拠した時代です。ですが、ウーバーが生まれたアメリカでも状況が変わってきています。カルフォルニア州発のサービスですから、他の地域の自治政府としては他の地域のサービスが入ってきて、交通体系を荒らされることを良しとしないと思う自治体が増えてきました。何とか交通を自分たちの手に戻したい。新モビリティサービスも自治体と協業する「ライドシェア2.0」の時代へと移っています。

そのためホワイトラベルとして地域の課題に寄り添う姿勢をとる「Via(ヴィア)」や「moovel(ムーヴェル)」などは自治政府との協力に好感を持たれます。ホワイトラベルとして入るところは、自治政府や運行事業者とデータの共有を行います。しかしウーバーなどのライドシェア1.0時代の企業は行わないのです。

---:日本はライドシェアに対する動きが遅れていると一般的には言われています。各国のサービスを昨年と今年にかけて見てきました。遅れているという評価は間違っていると思うのです。日本のタクシーがライドシェアを入れまいと頑張った結果、世界的に稀にみるライドシェアの関係がうまく保たれている国ではないかと感じるようになりました。日本は「ライドシェア1.0」はなく、「ライドシェア2.0」から進展しているように思います。

安永氏:日本のタクシーのサービスの質は非常に良いです。ライドシェアが広がった国は、タクシーのサービスの質が悪いので、その代替としてライドシェアが広がったところという共通項があります。日本にあったライドシェアのかたちを考える必要があるでしょう。

日本と海外とのかけ橋でありたい


---:どうしてROOTS Mobility Japanを立ち上げるようになったのでしょうか。

安永氏:これまでお話してきたようにモビリティに携わる以前より渉外の仕事に携わってきました。経験やノウハウも蓄積されたてきています。海外から日本に参入しようとする新たなモビリティサービスが“日本に根付く(roots)”ためのかけ橋になりたいと思っています。

---:まさにモビリティの外交官ですね。世界には良いサービスがたくさんあります。日本と海外が安永さんを通じて良い交流が行われ、より良い社会になれば良いなと期待します。

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《楠田悦子》

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