【空飛ぶクルマ】マルチコプターはなぜ電動なのか…SkyDrive 技術渉外VP 山本賢一氏[インタビュー]

【空飛ぶクルマ】マルチコプターはなぜ電動なのか…SkyDrive 技術渉外VP 山本賢一氏[インタビュー]
【空飛ぶクルマ】マルチコプターはなぜ電動なのか…SkyDrive 技術渉外VP 山本賢一氏[インタビュー]全 1 枚

空飛ぶクルマは、テクノロジーの力で移動の概念を拡張するという役目を担っていると同時に、地方・離島交通の問題解決手段としても注目されている。官民が取組む「空飛ぶクルマ」プロジェクトでは、法を含む社会環境の整備や関連市場の開拓などを進め2023年には事業化をスタートさせると、いくつかの企業が名乗りを上げている。

国内で唯一フルスケールモデルを制作し、屋外での飛行許可も得ているベンチャー企業のSkyDrive 技術渉外VPの山本賢一氏に聞いた。

「空飛ぶクルマ」のキーマンが登壇するセミナーは7月22日開催。詳細はこちらから

まず、SkyDriveという会社について概要を教えてください。

山本氏(以下同):SkyDriveの母体はCARTIVATORという任意団体でした。もともとは、モビリティで何か面白いことをやりたいという有志が集まったもので、最初から空飛ぶクルマを考えていたわけではありません。

その中で空飛ぶクルマという発想はいつ頃でてきたものでしょうか。

2012年頃です。いまの形のドローン(マルチコプター)が出始めたころで、メンバーには「鳥人間コンテスト」の参加者もいました。陸と空を移動できる乗り物はできないかと考えて、モデルの作成が始まりました。私は2015年頃からグループに合流しましたが、まずは小さいモデルの試作を繰り返していました。

現在は、人が乗れるサイズ、フルスケールモデルを作っています。2018年には屋内ですが飛行実験に成功しています。現在、SkyDriveにかかわっている人は180人くらいいます。空飛ぶクルマに取組む事業体としてはおそらく日本最大だと思いますが、モデルの制作からひとつずつ形にしてきた成果のひとつと自負しています。

SkyDriveでは、どんな用途の空飛ぶクルマを目指しているのでしょうか。

まず、道路が整備されていないようなところの用途から考えています。クルマが普通に走っているところでは飛ばそうとは思っていません。山の中や離島など、文字通り飛んでいけたら便利なところへの移動手段として考えます。

政策的な問題や社会的な課題という点では、まず地理的な問題で道路や交通手段が確保できない所へ、交通インフラを広げる意味が期待できるからです。

政府や自治体のニーズもそのようなところにあるのでしょうか。

ニーズは、自治体の特性ごとに異なります。地方では確かにそのようなニーズがあります。地方公共交通が抱える問題解決として、空飛ぶクルマが活躍できる場面があるでしょう。しかし、都市部では渋滞解消、通勤問題のための活用が考えられています。愛知県などは、新しい地場産業にするべく、空飛ぶクルマを推進しています。

SkyDriveとしては、まず過疎地や離島交通などの課題解決のため空飛ぶクルマを考えていますが、次の段階では、ビルの屋上をつなぐ交通手段といった応用もあると思っていますし、景観を楽しめるという特徴から、観光やレジャーとしての用途もあると思っています。

ところで、ドローンや空飛ぶクルマは電動のものが多いように見えます。なにか理由があるのでしょうか。

離島の移動やクルマが到達できないところへは、現在でもヘリコプターという手段があります。しかし、通常のヘリは大掛かりで手軽さはありません。より便利な乗り物、個人でも気軽に利用できる乗り物としては、内燃機関より電気モーターのほうが便利な面があります。

機体整備、エンジン整備など一般的なヘリや航空機のメンテナンスには、膨大なコストがかかります。電動ならメンテナンスコストを下げられる可能性があります。騒音レベルも違うので、飛行する場所や時間の幅が広がります。じつは、電動化は空の革命のひとつとして世界中の航空関係者が取組んでいる分野でもあります。

空飛ぶクルマの技術的な課題は大きいのでしょうか。

電動のマルチコプターで人を乗せること自体は、ほぼ実現されています。バッテリー性能の向上など細かい課題はありますが、本質的な技術の部分で問題はありません。現在は実用性能の向上に取り組んでいます。飛行時間を長く、充電時間を短くといった性能や、安全に飛行させる技術、あとは乗りたいときに乗れるような配車システムやサービス環境の整備といった部分も課題です。

安全や利便性については、法整備の問題が避けて通れません。航空法の枠組みで考えていくわけですが、現在、電動のマルチコプターで有人飛行(旅客)という枠組みがないので、その整備を国交省他が取り組んでいます。

最後にセミナーではどんなことを講演されるのでしょうか。

そうですね。モデルの試作機からフルスケールモデルまでの話や、デモフライトの動画を用意しています。事業化に向けた空飛ぶクルマがもたらす社会についても考えたいですね。

「空飛ぶクルマ」のキーマンが登壇するセミナーは7月22日開催。詳細はこちらから

《中尾真二》

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