【MaaS】トヨタ×西鉄MaaSアプリ「マイルート」実証実験の成果とこれから…トヨタ自動車未来プロジェクト室 室長代理 天野成章氏[インタビュー]

【MaaS】トヨタ×西鉄MaaSアプリ「マイルート」実証実験の成果とこれから…トヨタ自動車未来プロジェクト室 室長代理 天野成章氏[インタビュー]
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トヨタ自動車が手掛けるMaaSアプリと注目されている「my route (マイルート)」。他社に先駆け2018年11月から西日本鉄道(西鉄)と組み福岡で実証実験を開始し、2019年8月末まで実施される予定だ。

実証実験を通じて感じたことや今後などについて、トヨタ自動車未来プロジェクト室室長代理の天野成章氏に聞いた。

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予想以上の反響

---:福岡で実証実験をしてみての感想は?

天野氏; まだまだ道半ばのサービスではあるのですが、"手ごたえ"も感じています。当初、実証の目標ダウンロード数は5、000でしたが、2019年7月末時点で約26、000人のダウンロードがあり、アクティブユーザーも4割弱となっています。またアンケート調査では
外出回数が増えたや移動の範囲が広がったといった人もたくさんいらっしゃいました。加えて、約4割の方が福岡への興味・関心が増えたと回答してくれています。

my routeのビジョンは「もっと移動したくなる環境づくりを通じて、すべての人の移動の自由とずっと賑わう街づくりに貢献したい」です。クルマだけでは移動の自由が既に提供できない社会の中で、さまざまな移動手段の一つとしてクルマを改めて位置づけています。

したがって、私たちが狙っていたことに対して、ある一定の効果が出たのだと言えます。しかしmy routeはもちろんまだまだ完成されたサービスとは言えません。実証実験だから許容してもらえたことも多いので、それを一つ一つクリアしていきたいですね。

今後my routeをどのように展開していくかは現時点で公表できないのですが、一人一人のニーズにあった最適なルートや街の情報提供など、まだまだ課題はたくさんあります。そのため、さらなる他社との連携が必要です。その一つとして、マルチモーダルの肝となる検索アルゴリズムをナビタイムさんと共同開発することとし、先日(2019年7月19日)に発表させていただきました。

サブスクは0か100ではない

---:サブスクリプションモデルについてどう思いますか?

天野氏; my routeでは既にタクシー、バスチケットの予約・決済まで一連のサービスとして提供しています。タクシーアプリを別途インストールする必要はありません。

また西鉄さんの福岡市内1日フリーデジタルバス乗車券とmy route専用の新商品として6時間フリーデジタルバス乗車券を実証実験の開始当初から提供しています。これが大変好評でして、バスに加えて、鉄道でも天神と大宰府間の1日フリーデジタル乗車券を7月から発売開始しました。

サブスクに関しては、もちろん魅力的なモデルの一つだとは思いますが、全ての地域や状況に応えられるものではないと思っています。日本と欧州ではモビリティビジネスやニーズの環境、要求水準が異なります。日本では民間事業者が主に交通サービスを担っており、そのサービスを鍛えてきました。サブスクを強いれば中抜きされるとして拒否されてしまうなどせっかく築いた関係性が崩れてしまう可能性すらあります。

それ以上に、サブスクを使うかどうかは、0か100の論点ではなく、地域毎の課題やニーズに沿って的確なメニューや決済方法を提供することが重要だと考えています。

---:欧米と異なり、日本には通学・通勤の定期券や敬老パスがありますね。その存在は大きいでしょう。行動範囲もかなりその範囲で制限されているように思います。

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責任と気概「地域の足を奪うわけにはいかない」

---:もし今後他の地域で展開するとしたらどんなところと組みたいですか?

天野氏; 福岡の実証実験がうまくいった要因はやはり西鉄さんの存在が大きいです。西鉄さんは、福岡の地域の交通を担うのは西鉄だという責任感を持ってまちづくりや鉄道そしてバス事業に取組んでらっしゃいます。「地域の足を奪うわけにはいかない」と気概を持って西鉄さんが事業展開されていることを地域住民もよくわかっていて、その信頼関係がとても重要だと学ばせて頂きました。

実証のアンケート調査で「地域への愛着がさらに高まった」との回答があったのは、西鉄さんがこれまで育んでこられた地域愛と地域住民の方との強い絆がもともとあって、my routeが一緒にさせていただいたことで、相乗効果が出たのだと思います。

よく分かったんです「トヨタが前面に出てはいけない」と。その地域にはその地域の色や温度があります。それをさらに伸ばす存在でmy routeはありたい。実証段階である今回、全国展開をしている企業との連携を極力避けたことも良かったのかもしれません。店舗やイベント情報は地元のサンマークさんや福岡市さんとの連携を重視しました。

もし他地域で展開するとしたら、西鉄さんのように「自分の地域を何とかしたい」という気概と情熱を持っている方とご一緒したいです。そういう方との連携なくしては、決してうまくいかないでしょうから。

---:トヨタの自動車販売店の戦略の展開にともない、チャネルの統合と地域の生活サービスを担う動きが全国で出てきています。my routeの活用を視野に入ってくると思いますが、「地域の移動を何とかする」といった責任や気概が必要なのですね。

100年に一度のモビリティ革命 既存の事業性評価では測れない

---:他のプレーヤーも直面しているMaaSの事業性をどう測りますか?開発・運用に1億以上投資されていると思います。

天野氏:100年に1度のモビリティ革命と言われている時期です。このうねりに先行的に動いていかなければ流れに乗り遅れてしまいます。他プレーヤーの実証が一通り出揃うまでのこの2年が勝負でしょう。そこまでは事業性よりもサービスを鍛えることに注力すべきだと思います。それに新領域での事業ですから、既存のマネタイズポイントでは測れないのではないかと思っているので、今事業性の確からしさを測るのは難しいと思います。

もちろん赤字事業にはしませんが、my routeで稼ごうとも思っていません。生活者の視点に立ち、移動の総量を上げて街を元気にしたいと強く思っており、my routeが生活者、地域の交通事業者、弊社が今後展開していく新たなモビリティサービスなどと街をつなぐコミュニケーションツールであり、インターフェースでありたいと思っています。

勝ち組をねらった後発プレーヤーも当然出てくるでしょうが、勝つ負けるではなく、目指すビジョンの共有が重要ですので、世の中では競合とされている私鉄さんなどが手掛ける他サービスとも未来はよいパートナーになる可能性も十分あると思っています。

---:投資コストの回収を鑑みると福岡にとどまらず全国展開することで吸収する必要がありますね。モビリティカンパニーへの転身を高らかに宣言したトヨタ。宣言だけではなく自動車販売店で生活サービスの提供など実際の動きが出てきています。これは他社にはない動きです。

my routeがコミュニケーションのツールとなり、潜在的な地域ユーザーとのコミュニケーションや時代に合った多様なモビリティの提供に先駆的役割を果たすのではないかと非常に楽しみです。

天野氏: 実証実験の後の他都市含めた展開については、まだお話しできない事が多いのですが、 8月29日のレスポンスのセミナーでは、もう少しお話しできることもあるのでないかと思っています。

天野氏が登壇するセミナーはこちら。

《楠田悦子》

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