[カーオーディオ音質向上“もうひと手間”]部分デッドニング2種類

“部分デッドニング”の施工例。
“部分デッドニング”の施工例。全 3 枚

音を良くするためのトライをして期待どおりの結果が得られると、言いようのない満足感を味わえる。当特集では、その具体的な方法を紹介している。特に、ユニットのアップグレードや追加といった大がかりなアプローチではない、手頃な“もうひと手間”にフォーカスしている。

今回は、“部分デッドニング”をテーマに話を進めていく。

ドア内部の“共振”を止めるだけでも、聴こえ方は大きく変わる!

スピーカー交換をしている、していないに関わらず、もしもまだドア内部の“デッドニング”作業が未施工だと言うならば、“デッドニング”もまた音を良くするための“もうひと手間”になり得る。

“部分デッドニング”の施工例。“部分デッドニング”の施工例。

さて、ひと口に“デッドニング”とは言っても、メニューはさまざまあるのだが、“もうひと手間”的に手軽に音を良くしていこうと思ったときには、ライトなメニュー、つまりは“部分デッドニング”から徐々に実践していくと良いだろう。そうすることで、低コストでかつ段階的に音質向上を果たしていける。

具体的には何から手を着けるといいのかと言うと…。最初に行うべきはこちらだ。まずは「鉄板の制振」から行うことをおすすめしたい。

“部分デッドニング”の施工例。“部分デッドニング”の施工例。

クルマのドアは、ホームオーディオのスピーカーで言うところの“箱(エンクロージャー)”の役目を負うのだが、ドアは音響機器としては設計されていない。なので、音響機器としてのスペックを上げていく必要がある。“デッドニング”とはそのための作業だと言っていい。

すべきことはいくつかあるが、「鉄板の制振」もその1つだ。ドア内部の鉄板は案外薄っぺらい。大きめのボリュームで音楽を聴くと、割と簡単に共振してしまう。これが音に悪影響を及ぼす。

ビリビリと音を立てるほど共振すれば相当に耳障りだし、耳に付くほどではないにしても共振が起こっていると、音楽の低音成分をマスキングして音を曇らせる。しかし「鉄板の制振」作業を施して強度を上げれば、それらを防止可能となる。要所に“制振材”を貼り付けることで鉄板の共振を止められて、結果、ビビリ音が消え、低音楽器の音がクリアになってくる。

もしも“デッドニング”が手つかずになっているのなら、まずは「鉄板の制振」から着手してみよう。これだけでもかなりの効果が期待できる。費用対効果はなかなかに高い。おすすめだ。

「サービスホールを塞ぐ」というメニューも効果的! そのワケは…。

続いて推奨したい“部分デッドニング”のメニューは、「サービスホールを塞ぐ」だ。これがどのような効果を上げるのかを解説していこう。

ドア内部のインナーパネルには、サービスホールと呼ばれる穴が開けられている。この穴は、ドア内部のメンテナンスを行うためのものなのだが、これも音響的にはあまりよろしくない存在となっている。

ところで、ホームオーディオのスピーカーはユニットが箱に取り付けられた状態で完成品となっているのだが、この箱は、音響的にいくつかの役割を負っている。その最たるものはズバリ、「スピーカーの裏側から発せられる音を閉じ込めること」である。

スピーカーは振動板を前後に動かして空気を震わせ音を伝える。で、その営みはスピーカーの裏側でも行われている。そしてもしも裏側から発せられた音が表側の音と混じり合うと…。“キャンセリング”と呼ばれる現象が引き起こされる。お互いの音を打ち消しあってしまうのだ。

表側の音と裏側の音は、耳で聴く分には同じ音だが、音波としては真逆の関係にある。表側と裏側とでは、瞬間瞬間で振動板の動きは逆だ。表側から見て振動板が前に出ているときには、裏側から見ると振動板は奥に引っ込んだ状態となっている。動きとして真逆の関係にあるので、波形としても真逆の関係になる、というわけなのだ。ゆえに、その2つが同一空間に放たれると打ち消し合いが起こるのだ。

しかしエンクロージャーを設けて裏側の音を箱の中に閉じ込めれば、“キャンセリング”は起こらない。スピーカーのエンクロージャーは、そのためにあると言っていい。

裏側から発せられる音をブロックすることで、“キャンセリング”を防げる!

ところがクルマのドアは、裏側の音が前側に回り込みやすい状態となっている。内張りパネルによって裏側の音はある程度ブロックされてはいるものの、パネルと鉄板のすき間から多少なりとも音は漏れ、内張りパネルを介しても音は伝わってくる。

しかし「サービスホールを塞ぐ」と、その弊害を緩和できる。スピーカーの裏側から発せられる音をブロックでき、音の回り込みをかなり抑え込める。結果、音の質がぐっと良化する。

当メニューは「鉄板の制振」と比べると作業の手間は多く掛かるので、その分工賃も上がってくるが、こちらも「鉄板の制振」と同様になかなかの効果を発揮する。もしも当メニューが未施工ならば、これも有効な“もうひと手間”となり得る。

ところで、“デッドニング”作業はDIYで行われることも少なくない。確実な効果を得たいと思えばプロに任せるべきなのだが、DIY用のキットも販売されている。なのでこの機会に、DIYで行う際のコツを2つほど紹介しておこう。

まずお伝えしたいのは、「左右で施工内容を揃える」である。スピーカーは左右で形が変わることはなく、ユニットにしてもエンクロージャーにしても、すべてを同一にして作られている。左右で異なる部分があると、正しいステレオ再生が行われなくなるのだ。

それは“デッドニング”でも同様だ。左右でやり方を変えてはならないのだ。“制振材”の量、貼る位置、すべてをまったく同様に行う必要がある。サービスホールを塞ぐ場合にもそれは同様だ。

あと、「ビビリ止め」を実行する際には、「平らな面積が広い場所」に重点的に施工すると、効率的に“ビビリ”を止められる。平らな部分の面積が狭い箇所は、案外共振しにくい。しかし平らな面積が広い場所は、比較的に共振しやすい。覚えておこう。

今回はここまでとさせていただく。次回も音を良くする“もうひと手間”を紹介していく。乞うご期待♪

音質向上のための“もうひと手間”、完全解説! 第2回「“部分デッドニング”を実行!」

《太田祥三》

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