[カーオーディオ音質向上“もうひと手間”]パッシブを使いこなす

パッシブクロスオーバーネットワークの一例(シンフォニ/クワトロリゴ)。
パッシブクロスオーバーネットワークの一例(シンフォニ/クワトロリゴ)。全 3 枚

音質向上を果たすためのちょっとした“小ワザ”を紹介している当特集。今回はその第5回目として、市販スピーカーに付属されている“パッシブクロスオーバーネットワーク”の使いこなしについて解説していく。さて、これを用いて可能となる音質向上策とは…。

“DSP”を導入するその前に、まずは“パッシブ”を使いこなして楽しむベシ!

“バイアンプ接続”が可能な“パッシブクロスオーバーネットワーク”を付属しているスピーカーの一例(ロックフォード・フォズゲート)。“バイアンプ接続”が可能な“パッシブクロスオーバーネットワーク”を付属しているスピーカーの一例(ロックフォード・フォズゲート)。

市販スピーカーには、それがセパレートスピーカーである場合には大概、“パッシブクロスオーバーネットワーク”(以下“パッシブ”)と呼ばれる機器が付属している。セパレートスピーカーとは、例えば2ウェイなら、ツイーターに高音再生を、ミッドウーファーに中低音再生を、というように役割分担をさせて効率的に音楽を奏でようとするシステムだ。で、このようなシステムを成り立たせるためには、音楽信号の“帯域分割”を実行するユニットが必要となる。“パッシブ”とはまさしくそれを行うユニットなのだ。

ちなみに、“DSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)”を導入すれば、“パッシブ”は不要になる。“DSP”に搭載されている“クロスオーバー”機能を使って音楽信号の“帯域分割”が行えるようになるからだ。

“バイアンプ接続”が可能な“パッシブクロスオーバーネットワーク”を付属しているスピーカーの一例(ロックフォード・フォズゲート)。“バイアンプ接続”が可能な“パッシブクロスオーバーネットワーク”を付属しているスピーカーの一例(ロックフォード・フォズゲート)。

なお、“DSP”の“クロスオーバー”機能を使って“帯域分割”した方が、きめ細やかに設定できる。というのも、カー用のスピーカーの取り付けコンディションは都度異なる。ツイーターとミッドウーファーの位置関係も車種によって、または取り付け方によって変わってくる。取り付け角度もケースバイケースだ。なので“クロスオーバー”設定も都度微調整させたくもなる。取り付け状況に応じたベストな“帯域分割”設定を模索した方が、音を追い込める。

しかし、“パッシブ”には“パッシブ”ならではの良さがある。システムを巨大化させないですむし、アナログ回路だからこその味わいも堪能できる。

というわけで、将来的には“DSP”を導入するにしても、まずは“パッシブ”ならではの楽しさを満喫するのも悪くない。しかも、工夫次第ではさらなる高音質化も果たせる。“DSP”の導入は、それらを試した後でも遅くはないのだ。

さて、どのような“ワザ”が有るのかと言うと…。

ツイーターの音圧レベルを調整可能な“アッテネーター”を使ってみよう!

まず試してほしいのは、“パッシブ”に搭載されている“アッテネーター”と呼ばれる機能の使用だ。すぺての“パッシブ”に搭載されているわけではないが、もしもこれが使えるようならしめたものだ。

“アッテネーター”とは、簡単に言ってしまえば「ツイーターの音圧レベルを調整できる機能」だ。取り付け方によっては近い方のツイーターから発せられる音が耳につくことがままあるが、これを用いるとそれを緩和させられる。

ちなみに、調整機能を使ってもそれへの対処は可能なのだが、“バランス”機能を使う場合には、近い方のツイーターの音圧を下げようとするとそれと同一サイドにあるミッドウーファーの音量も下がってしまう。“トーンコントロール”を使う場合には、遠い方のツイーターの音圧レベルも下がってしまう。

しかし“アッテネーター”を使えば、近い方のツイーターの音圧レベルだけを下げられる。

または、近い方のツイーターだけ角度を振ってもきつさを緩和できるが、左右で角度を変えると多少なりとも鳴り方も変わってしまう。しかし“アッテネーター”で調節すれば、角度的な条件は揃えたままでバランスだけを整えられる。

もちろん、左右の“アッテネーター”を同様な設定とするのもアリだ。“アッテネーター”をいろいろと変えてみることで、導入したスピーカーのサウンド傾向(高音と中高音の鳴り方のバランス)を好みの方向に持っていける。

ただ、バリアブルに音圧レベルを変えられるわけではないので、その点においては多少の割り切りも必要となる。“アッテネーター”の選択肢は一般的には3段階くらい、多くても5段階くらいだ。なので緻密なコントロールはできないのだが、それでも切り替えられないよりはかなり良い。もしも“アッテネーター”が搭載されていたら、それを使ってみても面白い。試してみよう。

“バイアンプ接続”が可能なら、より詳細なサウンドチューニングも可能となる!

さらに、使用している“パッシブ”が“バイアンプ接続”に対応していたら、さらなる高音質化へのトライが可能となる。

“バイアンプ接続”に対応している“パッシブ”では、音楽信号の入力を2系統に分けられる。通常接続の場合には1系統を入力し、それを“パッシブ”内で高域信号と中低域信号とに分割するのだが、“バイアンプ接続”が可能な“パッシブ”では、ツイーター用の信号とミッドウーファー用の信号とを個別に入力できるのだ。

となると、次のような接続方法が選択できる。メインユニットのフロントスピーカー用の出力を“パッシブ”のミッドウーファー用の入力端子に接続し、リアスピーカー出力をツイーター用の入力端子に接続する。こうしたときでも、ツイーター用の信号の“ハイパス(ローカット)”とミッドウーファー用の信号の“ローパス(ハイカット)”は“パッシブ”内で行われるのだが、入力を個別にすることで“パッシブ”内での音楽信号の干渉がかなり減り、音がすっきりしてくる。

そして何より、メインユニットの内蔵パワーアンプの4chすべてでフロントスピーカーを駆動させることとなるので、2chだけで鳴らすときよりも効率よくスピーカーを動かせるようになる。余裕が生まれ、解像度も増し、S/Nも向上する。

結果、同一スピーカーであるにもかかわらず、グレードが1ランク上がったかのような音質向上が果たされる。試す価値は相当に高い。

そして、もしもメインユニットに簡易的な“タイムアライメント”機能が搭載されていたら、“バイアンプ接続”をすることでより詳細なサウンドチューニングが行えるようになる。

簡易的な“タイムアライメント”機能では、ツイーターとミッドウーファーを1つのスピーカーと見立てることになるので、ツイーターとミッドウーファーの個別制御はできない。しかし“バイアンプ接続”を実行すると“タイムアライメント”が、「フロントとリアを個別に制御する」仕様から、「ツイーターとミッドウーファーを個別に制御する」仕様へと変貌する。サウンドコントロール面でも、より良好なコンディションで鳴らせるようになる、というわけなのだ。

今回はここまでとさせていただく。次回もまた別の、そして効果的な“もうひと手間”を紹介する。お楽しみに。

音質向上のための“もうひと手間”、完全解説! 第5回「“パッシブ”を使いこなす!」

《太田祥三》

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