規模縮小、展示から体験型へ…東京モーターショーがフランクフルトから学ぶべきことは

日本車メーカーはホンダのみ

出展が減り「体験型」へシフト

東京モーターショーが学ぶべきことは少なくない

「体験型」へシフトするフランクフルトモーターショー。写真は仮設オフロードコースを同乗体験できる「4×4アドベンチャー@IAA」
「体験型」へシフトするフランクフルトモーターショー。写真は仮設オフロードコースを同乗体験できる「4×4アドベンチャー@IAA」全 12 枚

日本車メーカーはホンダのみ

完成車メーカーとして、今回の「IAA」(フランクフルトモーターショー)に日本から唯一出展したホンダのブースは8号館にあった。ここにブースを構えた完成車メーカーは、ホンダの他は中国のバイトン(EVのスタートアップ)、紅旗(第一汽車系列の高級車メーカー)、ウェイ(長城汽車の新ブランド)、そしてドイツを本拠地のひとつとするフォードの4社だけ。ブース面積の半分はサプライヤーが占めていた。

日本車メーカー唯一の出展となったホンダの「ホンダe」日本車メーカー唯一の出展となったホンダの「ホンダe」
ホンダは意欲満々にバッテリーEV、『ホンダe』の量産モデルをデビューさせたが、8号館は半ば「部品館」と言えそうな展示館。しかも同居する完成車メーカーの多くは、ホンダに比べれば欧州ではまったく実績のない中国勢だ。前回までは、ここにトヨタなどもいたのだが…。

今回のフランクフルトショーは、完成車メーカーの出展が前回から激減した。地元ドイツ勢とそのグループ企業はブースを構えたが、それ以外はホンダ、ジャガー・ランドローバー、現代、そして前記3つの中国メーカーだけ。広大な会場に建ち並ぶ12の展示館のうち5つが閉鎖されていた。1号館や12号館を使わないことは過去にもあったが、会場の中央に位置する7号館が閉鎖というのは、89年からIAAを取材している筆者にとっては異様な光景に見えた。

出展が減り「体験型」へシフト

高級車のマクラーレンは「立派なブースはいらない」と話す高級車のマクラーレンは「立派なブースはいらない」と話す
閉鎖された展示館がある一方で、アウトドアのスペースが積極的に活用されていることも印象的だった。メルセデスやフォード、ランドローバーは会場内の通路脇にスペースを確保してクルマを展示。展示館にブースを持たないポールスター(ボルボの電動化ブランド)とマクラーレンは、それぞれ小さなショールームを仮設していた。

ポールスターは新型『ポールスター2』の世界巡回展示を行っており、その一環でIAAを利用したかたち。マクラーレンの説明員は「展示館のなかより、アウトドアのほうが気持ちいいでしょ? 顧客と良い関係を作るために必ずしも立派なブースは要らないと考えている」と笑顔で語ってくれた。

テストドライブテストドライブ
なにしろ会場のフランクフルト・メッセ・ゲレンデは広大だから、アウトドアのスペースも充分にある。それを活用して主催者が用意したのが、さまざまな体験コーナーだ。「IAAテストドライブ」はハイブリッドやバッテリーEV、燃料電池車などの試乗。

「4×4アドベンチャー@IAA」は仮設オフロードコースの同乗体験。さらに電動アシスト自転車や電動キックボードの試乗コースがあり、大手サプライヤーのコンチネンタルはレベル5の自動運転車のデモ走行を実施していた。

完成車メーカーの出展が減り、ニューモデルの話題もいつもに比べれば少ない。主催者はそれを見越してショーの内容を「体験型」にシフトしたのだろう。筆者もコンチネンタルの自動運転車に乗せてもらい、5分足らずだがレベル5を初体験。ステアリングもペダルもない対面6座のコミューターが、あらかじめ定められたルートとはいえ、きわめてスムーズに走るのは新たな感動だ。

コンチネンタルではレベル5自動運転を体験コンチネンタルではレベル5自動運転を体験

東京モーターショーが学ぶべきことは少なくない

メッセ・ゲレンデを歩き回りながら、頭を離れなかったのが10月24日に開幕する東京モーターショーのことである。海外からの出展はメルセデス、スマート、ルノー、アルピナの4ブランドだけ。今回のIAA以上にローカル色の強いショーになることは間違いない。

しかも東京ビッグサイトと、そこから1.5km離れた青海展示棟との分散開催。そのハンデを補うべく、主催の自工会は両会場を結ぶプロムナードを「体感エリア」と銘打ち、超小型モビリティの試乗などさまざまな「体験型」の内容を用意しているという。

東京モーターショー2019イメージ東京モーターショー2019イメージ
しかしIAAとは違って、このアウトドア・スペースを活かして出展社を増やそうとはしなかった。ここを安い価格で「コマ売り」すれば、インポーターがショールームを仮設できたかもしれない。1.5kmの移動に、レベル5の自動運転車を持つ大手サプライヤーや海外スタートアップを誘致することもなかった。

世界中の自動車メーカーが一堂に会するモーターショーは、今後は中国だけになっていくのかもしれない。先進国では「モノからコトへ」がトレンド。だからこそモーターショーはモノ=クルマを見せるだけでなく、コト=体験を提供することが大事になってくる。

IAAを取材して、東京モーターショーが学ぶべきことは少なくないと痛感した。

《千葉匠》

千葉匠

千葉匠|デザインジャーナリスト デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは11年前から審査委員長を務めている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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