高齢者の運転免許証「自主返納」---支援制度は狭き門

高齢者の運転免許証「自主返納」---支援制度は狭き門
高齢者の運転免許証「自主返納」---支援制度は狭き門全 1 枚

親に運転免許証の自主返納を勧めたい

自主返納をすすめるタイミングをどうしよう

高齢者の運転による事故が増えています。

ニュースなどを見て、今までは気にもしていなかった高齢になった親の運転について、真剣に向き合った人も多いのではないでしょうか。

「一刻も早く返納すべき。高齢者の運転事故は他人事とは思えない」と思い詰める家族と、「あの人、いつまで親に運転させているのだろう?」という親せきや近所からの目に見えない圧力も感じます。

年老いた親にさりげなく話をしてみても「まだ大丈夫、免許証の自主返納の時期は自分で決めたい」と言い、万が一事故が起こったらとどうなるか真剣に考えているようにも見えません。

仲が良いからこそ強く言い過ぎて話がこじれてしまい、お互いの関係が悪化した夫婦や親子を何組も見てきました。

運転免許証の自主返納は、本人がその気になりさえすれば「いつでも簡単に」できると思っている方は多いのではないでしょうか。

しかし、実はそうでもないのです。

この記事ではここから説明していきましょう。

「自主返納高齢者支援制度」は狭き門です

運転免許証を自主返納するといろいろな特典を受けられることはよく知られています。

返納後、希望者には有料で運転経歴証明書を発行してくれます。

これを提示すればバスやタクシーなどの運賃の割引や商品の割引などの特典が受けられます(地域によって特典やサービスは異なります)。

この運転経歴証明書は、免許証を持っていた人であれば誰でも発行してもらえると思いますが、「自主返納をした人だけ」にしか発行されません

そして自主返納には

65歳以上で運転免許証が有効期限内であること

という、条件があります。

自主返納できない場合「更新時」

75歳以上になると免許更新時の条件がかなり厳しくなります。(平成29年3月施行・改正道路交通法)

70歳以上の免許証更新期間は3年ごとで、75歳以上になると更新の度に臨時認知機能検査が義務付けられています

そこで認知症の恐れがあると判断されれば、主治医等の診断書を提出しなくてはいけません。

認知症と診断された場合は、免許証の取り消しとなります。

つまり、認知症になってからでは自主返納できないということになります。

認知症になってからでは自主返納できない

自主返納できない場合「更新後」

更新したからあと3年は運転できると思っていても、認知症の進行は個人差があるので、3か月前は出ていなかった症状が出ていることも稀ではありません。

認知症になった方の老化は、認知症のない人の2~3倍のスピードで進行する場合もあります。

ですから高齢者は信号無視、一時停止、逆走など一定の違反が1回でもあれば、直ちに警察に呼ばれるだけでなく、主治医等の診察を受けて診断書を提出しなくてはなりません

認知症と診断された場合は有効期間内であっても免許証の取り消しとなり、運転経歴証明書を発行してもらうことはもちろん、自主返納の支援制度の特典を受けることもできなくなります。

どうも様子がおかしい、ハラハラするような運転になってきた時は、免許証の更新をしたばかりだからと過信せず、近隣の地域包括支援センターや最寄りの警察に相談して情報をもらったり対策を立てたりすることをおすすめします。

参考元:LIFUL 認知症の症状 初期の症状や進行のしかた

認知症で損害保険の補償はどうなる?

認知症が原因で万が一交通事故を起こした場合はどうなるのか、家族なら心配でたまらないと思います。

被害を受けられた方の大切な時間を奪い、苦痛を与えてしまうだけではなく、思うように保険が適用されなければ、一体どうなることでしょう。

状況や契約内容によっても異なりますが、さまざまなパターンがあります

契約されている保険の相談窓口で1度問い合わせて見ることをおすすめします。

参考元:保険市場 認知症の運転者が事故を起こしたとき、自動車保険はでるの?

運転経歴証明書で受けられるサービス

車で移動できなくなるためタクシーやバスを使うことが増えると予想されます。

サービスはお住まいの地域によって違いますが、私の住んでいる地域では、

・ 初回のみバスの回数券1万円分(その後は運賃100円引)
・ タクシーの利用料10%割引
・ 弁護士による法律相談1時間を2回まで無料
・ メガネの割引
・ 飲食店での飲み物1杯サービス

など、さまざまなサービスが受けられます。

このサービスは身体が動かなくなってからでは利用しにくいものがたくさんあります

我が家には要介護4になってから免許証を自主返納した父がいますが、自由に動ける間にこれらのサービスを使って、もっともっと外出を楽しんでほしかったな、と悔やまれます。

安全な運転を家族が見守る

一方で交通が不便なため、なかなか車を手放せないという方もおられると思います。

認知症だけではありません。

ゆるやかに視力が低下した場合、反射神経が鈍くなった、自分本位の運転になっている、体力の衰えから的確な運転操作ができにくくなったという場合も、本人には自覚症状がないことがあります。

定期的な健康診断の情報は家族で共有しておきましょう

高齢者の運転そのものを本人が把握したり、近くにお住まいならドライブレコーダーをつけて定期的にチェックをしたりすることも大切です。

もし遠くに住んでいてなかなか帰省することができない場合でも、家族の見守りサービス機能がついたドライブレコーダーを活用するのもひとつの手段です。

見守るサービスのエバードライブ

≪画像元:エバードライブ≫

ライフスタイルの変化をシュミレーションする

免許証の返納をしたのはいいが、外出の機会が減って生きがいがなくなってしまった、認知症の進行が早くなったのでは本末転倒です。

そこで、もし免許証を返納したら何が一番困るのかを聞きとって代替案を考えてあげることは、最も大きな援助となります

「車がなくなったら代わりにタクシーを使ったらいいじゃない」ではなくて、

・ タクシー会社の電話番号を調べてわかりやすいところに貼るか携帯電話に登録してあげる
・ よく行く場所の料金の目安を調べる
・ 家まで迎えに来てくれる時の料金を調べる
・ まとめて月1回請求してもらう手続きをする

など、やることはたくさんあります。

また、家で車を使っていた時の年間の維持費を割り出してあげましょう。

車は(車両代金・ガソリン代・自動車税・自賠責・任意保険・オイル交換・車検・駐車場・冬用のタイヤなど維持費など)を1年あたりいくら、1か月あたりいくらで計算してあげます。

これだけで「こんなにお金がかかってるのか」と自主返納に前向きになった方もおられました。

タクシーも1か月あたりの車の維持費内であれば、生活に支障なく使えるという目安にもなります

どんな人でもいずれは運転できなくなる日が来ます。

その時に向けて、周りからのサポートを始めるのは今日からでも早すぎるということはありません。(執筆者:北里 真彩美)

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親の運転免許証「返納」を考える 認知症と判断できる状態からでは遅い「自主返納」について。

《北里 真彩美》

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