【SUPER GT×DTM 交流戦】アウディスポーツ代表 「富士での交流戦が、モータースポーツにとっての大きなマイルストーンに」【インタビュー】

【SUPER GT×DTM 交流戦】アウディスポーツ代表 「富士での交流戦が、モータースポーツにとっての大きなマイルストーンに」【インタビュー】
【SUPER GT×DTM 交流戦】アウディスポーツ代表 「富士での交流戦が、モータースポーツにとっての大きなマイルストーンに」【インタビュー】全 8 枚

「クラス1」というテクニカルレギュレーション(技術規定)が昨年完成し、同じ規格のマシンが走ることになったドイツ・ツーリングカー選手権「DTM」と日本の「SUPER GT」。10月4日から6日にはドイツのホッケンハイムサーキットで、11月23日から24日には富士スピードウェイで初の「交流戦」が行われる。ヨーロッパとアジア、2つの地域で人気のあるモータースポーツシリーズが同じ舞台で戦う。この記念すべきイベントを前に、アウディモータースポーツを統括する、ディーター・ガス氏に聞いた。

トータルのパッケージとして強さが勝利を導く鍵

【SUPER GT×DTM 交流戦】アウディスポーツ代表 「富士での交流戦が、モータースポーツにとっての大きなマイルストーンに」【インタビュー】【SUPER GT×DTM 交流戦】アウディスポーツ代表 「富士での交流戦が、モータースポーツにとっての大きなマイルストーンに」【インタビュー】
----:まず今シーズンのDTMについてお聞かせください。アウディにとっては、比較的楽なシーズンに見えますが、今季の出来をどう評価していますか?

ディーター・ガス氏(以下敬称略):実際のところ、あなた方が(外から)見ているほど、楽ではありませんよ。エンジンが、長年使用していたV型8気筒自然吸気エンジンから全く新しい2リットル4気筒ターボになったわけですから、課題はたくさんあります。でも、DTMというシリーズ自体は、これまで以上にエキサイティングなものになり、いい方向に発展していると思います。

例えば5月にホッケンハイムで行われた開幕戦では、アウディとBMWの速さは全く互角で、土曜日のレース1ではBMWが優勝し、日曜日のレース2では我々が優勝するという結果でした。一つ言えるのは、我々アウディ陣営は(BMWと比べて)、どのレースでも複数のドライバーが上位争いに絡んでいるところが強みでしょう。そうしたコンシステンシーによって、アウディとしての獲得ポイントも多くなっています。(*アウディは2ラウンド/4レースを残し、前戦でBMWを破りマニュファクチャラータイトルを決めている。)

----:新しいエンジンはいかがですか?

ガス:技術的には、まだやるべきことが残っています。4気筒エンジンは、特に高回転域でのバイブレーションがとても大きいため、マシンの様々なコンポーネンツにクラックが入るなどの影響を与えます。

----:エンジンのさらなる開発が必要ということですか?

ガス:エンジン自体は問題ありませんが、周辺(部品)の開発・最適化が必要です。(エンジンの振動が伝わる)周辺機器、特にステアリング系統が一番影響を受けます。

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----:とはいえ、今シーズンのアウディ勢は非常に好調です。既に2ラウンド/4レースを残してマニュファクチャラーチャンピオンを獲得しました。秘密は何ですか?

ガス:難しい質問ですね…。つまり、ライバル(BMW)がどんな状況かを詳しく知る立場に無いので、(比較という形で)ハッキリとしたお答えをするのが難しいのです。ただ、モータースポーツでは常に言えることですが、トータルのパッケージとして我々に強さがあったということでしょう。特に挙げるとすれば、ドライバビリティという点で、エンジンの出来が非常に良いのは間違いないありません。

今シーズンのマシンは、全体としてのバランスも優れていると思います。昨シーズン前半は、マシンの状態に苦戦しましたが、かなりの開発を行ってシーズン後半にはだいぶいい感じになりました。その時の経験やデータが、今シーズンの開発にも役立っています。それから、8人いるドライバーのラインナップも、とてもバランスが取れていると思っています。

----:ドライバーというと、常に速いマシンを要求するものですが、彼らの意見はどうですか?

ガス:ハッピーです。バイブレーションの問題も解消に向かっているので、現在、一番の課題はタイヤですね。去年と同じタイヤを使っているので、(パワーとトルクが上がった新しいエンジンでは)摩耗が激しく、タイヤマネージメントが非常に重要です。

----:なるほど。いずれにしてもマニュファクチャラーチャンピオンを既に獲得していますね。おめでとうございます。

ガス:ありがとうございます。できれば、ここでドライバーチャンピオンも決めたいですね。最終戦のホッケンハイムではSUPER GTのマシンも走ります。GT500の走りに注目する余裕があるといいですね(笑)

日本×ドイツの答えは如何に

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----:そのSUPER GTですが、GT500マシンのどこに注目しますか?

ガス:その前にまず申し上げたいのは、ついにGT500との交流戦が実現して「スーパーエキサイティング」!この交流戦は、DTMとSUPER GTにとって、とても重要なステップです。GT500とDTMのマシンが同じレベルでバトルできるよう、(日本、ドイツ双方の関係者)全員で努力しています。

----:一番の課題は性能調整(Balance of Performance)ですね。

ガス:はっきりとは分かりませんが、これまで見てきた印象ではGT500の方が我々(DTM)のマシンよりも少し速いと思います。(今季まで使用されているGT500は)空力面において開発が許されている部分が少し多いはずです。また、4気筒2リットルターボエンジンでの経験も豊富なので、熟成が進んでいるでしょう。いずれにしても、GT500のマシンがDTMのレースを走るのを実際に観る、それ自体がワクワクします。

交流戦では、全てのマシンが同じ(ハンコック製)タイヤを装着するので、それがGT500にどう影響を与えるかが未知数です。いずれにしても、とても面白いレースになるのは間違いないですね。

----:短時間ですが、日本でハンコックタイヤのテストが行われました

ガス:聞きましたよ。ドライバー達は、「グリップしない!」って泣いていませんでしたか?())

----:日本勢は初めての(ハンコック)タイヤ、初めての(ホッケンハイム)サーキットで、マシンのセットアップが決められるでしょうか? レースエンジニアとしてどう思いますか?

ガス:それは可能だと思います。(SUPER GTのように)「タイヤウォーズ」のあるシリーズでチャンピオンシップを争っているチームであれば、タイヤの違いを「合わせてくる」ことは問題ないでしょう。

----:BoPにもよると思いますが、いいレースが観られそうですね。

ガス:それが、我々全員が望んでいる事ですからね。日本から三大メーカーがやってくるということは、とても大きなことです。

----:何年にもわたって「クラス1」規則の作成に携わってこられました。感慨もひとしおでしょうね。

ガス:そうですね。富士に行った時に、達成感をしみじみと感じるかもしれません。ホッケンハイムのレースは、あくまでDTMの一戦(で、そこに3台のGT500が走るのみ)です。富士では、GT500の全マシンと(数多くの)DTMマシンがバトルします。その状況を確認できた時、まず一息つく感じかなと思っています。

----:最後に、日本のファンへ一言お願いしいます。

ガス:日本のメーカーと同じ舞台で戦うのを、本当に楽しみにしています。富士での「交流戦」は特別なものになるでしょう。日本のレースファンの熱心さは世界的にも有名なんですよ。アウディのサポーターも多いと聞きました。みなさんにお会いできるのを楽しみにしています。
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富士で交流戦が行われる日、「電気自動車のF1」、フォーミュラEがサウジアラビアで「シーズン6」の開幕戦を迎える。クルマの電動化に伴い、アウディを含め世界的な自動車メーカーがワークス体制で参戦する同シリーズ。だが、トップのガース氏を始め、アウディ・スポーツ首脳のほとんどが来日するという。「クラス1」が、ドイツの自動車メーカーにとっても大きなマイルストーンである証だろう。

《石川徹》

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