「超小型モビリティ」地域生活や観光のニーズに合った新カテゴリーを…日産自動車 グローバルEV本部 EVオペレーション部 シニアエンジニア 柳下健一氏[インタビュー]

「超小型モビリティ」地域生活や観光のニーズに合った新カテゴリーを…日産自動車 グローバルEV本部 EVオペレーション部 シニアエンジニア 柳下健一氏[インタビュー]
「超小型モビリティ」地域生活や観光のニーズに合った新カテゴリーを…日産自動車 グローバルEV本部 EVオペレーション部 シニアエンジニア 柳下健一氏[インタビュー]全 3 枚

 日本の中で移動手段の種類は足りているのだろうか。また果たしてニーズを満たしているのだろうか。自動車が高度化する中で、不便さも感じることも増えているのではないだろうか。
 「超小型モビリティ」を通し、新たなモビリティに挑戦し続けている、日産自動車グローバルEV本部EVオペレーション部シニアエンジニア柳下健一氏にうかがった。

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地域生活や観光にちょうどいい

---; 超小型モビリティとは?

「超小型モビリティ」地域生活や観光のニーズに合った新カテゴリーを…日産自動車 グローバルEV本部 EVオペレーション部 シニアエンジニア 柳下健一氏[インタビュー]「超小型モビリティ」地域生活や観光のニーズに合った新カテゴリーを…日産自動車 グローバルEV本部 EVオペレーション部 シニアエンジニア 柳下健一氏[インタビュー]

柳下氏;四輪の自動車の多くは1.6人で乗っていて、移動する距離は21km程度です。そこで地域の手軽な移動の足となる1~2人乗り程度で、環境にやさしく自動車よりもコンパクトで小回りが利きく新しい車両カテゴリー(原付以上で軽自動車未満)「超小型モビリティ」が考案されました。高速道路は走行できませんが、地域生活にはちょうどよいです。

欧州には以前から一般の乗用車より軽量の二輪から四輪の「マイクロカー」や「Quadricycle(クワドリシクル)」の車両カテゴリーがあります。国によっては高校生の通学や高齢者の生活の足として使われており、16歳以上から運転ができたりします。超小型モビリティはそのクワドリシクルのL6やL7にあたります。日本でも超小型モビリティとして法整備の検討が進められています。

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日産の超小型モビリティの名前は「ニューモビリティコンセプト」で、ルノーでは「Twizy(トゥイジー)」の名前で欧州などですでに販売されています。

ニューモビリティコンセプトは電動で、一般的な四輪のEVと同じで200Vの普通充電での充電が可能で、約4時間でフル充電ができ、航続距離は約100km。全長が2,340mm、全幅が1,230mm、全高1,450mmの前後2人乗り。最高速度が約80km/h、出力は定格出力が8kWで最高が15kWです。

---;ニューモビリティコンセプトは、高齢者のみならず、あらゆる層が使えるおしゃれなデザインですね。トヨタ車体の「コムス」やホンダの「MCβ(エムシーベータ―)」も超小型モビリティにあたりますね。コムスは東京都内で業務用に使っているシーンをよく見かけます。パーク24のカーシェアとともに超小型モビリティのシェアリングの実証実験も行われていますね。

知事連合「高齢者に向けた移動手段を作って欲しい」

---;いま高齢者の事故や免許返納が社会問題化しています。しかし2010年代前半も高齢者の移動手段に対する社会的な要請が強かったように思います。

柳下氏;2010年5月に福岡県の知事が中心となり35都道府県の知事から、高齢者が自立し、いきいきと生活できる活力ある地域社会の構築に向けて、高齢者がさっそうと運転する安全な自動車の開発を推進する「高齢者にやさしい自動車開発推進知事連合」が設立しました。そこから事故分析やアンケート結果から必要な機能や車両カテゴリーまで提案されました。そこでも提案されたのが生活圏内を日常生活のちょい乗りに便利で、細い道や狭い駐車場もラクラクの原付以上で軽自動車未満のカテゴリー、つまり超小型モビリティです。

実証実験の域を超えてきている

柳下氏;安全性の確認に2011年に横浜市の元町山手で体験試乗会を行いました。2013年には超小型モビリティの認定制度ができて、自動車メーカー以外のいろいろな事業者が主体となり実証実験が行えるようになり補助金も用意されました。横浜市内で100台規模の大規模シェアリング「チョイモビヨコハマ」の実証実験を行いました。2019年の現在においても超小型モビリティの認定制度や補助金も継続しています。

2013年から、のべ約30か所、約150台で実施してきました。積雪のある北海道でも約半年間行うなど全国各地での実績があります。実証実験を取り組んだ地域の1~2割は続かずやめましたが、それ以外は継続できています。

奈良県の明日香村では「MICHIMO(ミチモ)」のブランド名で3時間3000円、5時間4750円、1日8,000円のレンタル料金をとってサービスをしているところもあります。このように超小型モビリティは実証実験の域を超えてきていると言ってよいでしょう。

---;知らない地域で乗ったことのない自動車に乗るのは大変です。超小型モビリティは操作性もシンプルで、小回りが利くので、行きたいところに行けます。観光利用にも非常にニーズがありそうです。

観光MaaSでも期待高まる

柳下氏;観光に対するニーズも非常に高く、最近ではMaaSでの引き合いがきています。

これまでずっとやってきたため経験値がたまっています。観光利用では最低3年間取組んでみないと分かりません。やめていくところは、サービスモデルが描けなかったり、サービスの受け皿となる民間企業が見つからなかったりしていました。

日常生活での活用も

柳下氏;日常利用でも新しい取組みをしようと進めています。現行の制度内では、ニューモビリティコンセプトは個人が購入することができません。しかし所有者が個人にならなければ長期レンタカーにならないので、日常づかいのシェアリングなどができないか販売店と話しながら検討しています。

これからはいままで以上にライフスタイルに応じたクルマ選びが必要になるでしょう。

---;いまの自動車は高機能化・高価格になっていて、操作も複雑化しています。最低限の機能でシンプルなものは逆に受け入れられるかもしれません。 

動きが出てきている法整備

柳下氏;これまで超小型モビリティの勉強会が行われてきました。法整備の動きがトーンダウンしたものの、他社で2020年を目標に販売を開始しようとする強い動きがあます。ガラパゴスのガラパゴスができないか心配しています。

むかしスバル360の時代は日本でも16歳で軽自動車に乗れていました。暮らしや社会のニーズに応じた新しいカテゴリーがいま求められているのではないでしょうか。

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《楠田悦子》

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