楽しくなるアイコンは残した、スズキ ハスラー コンセプト…東京モーターショー2019[デザイナーインタビュー]

スズキ四輪商品・原価企画本部四輪デザイン部エクステリア課係長の長田宏明さん
スズキ四輪商品・原価企画本部四輪デザイン部エクステリア課係長の長田宏明さん全 16 枚

スズキから次期『ハスラー』のコンセプトモデルが、東京モーターショー2019に出展された。エクステリアはキープコンセプトながら、インテリアは大きく変貌を遂げている。そこで、そのデザインの考えについてデザイナーに話を聞いた。

ルーフを延長し差別化

この次期型といわれているハスラーコンセプトのエクステリアは、どのような考えのもとにデザインされたのか。スズキ四輪商品・原価企画本部四輪デザイン部エクステリア課係長の長田宏明さん(以下敬称略)は、「今までのぱっと見て楽しくなるようなハスラーのアイコンは残しながら、タフで力強さといったものを強調、加味した」という。

具体的には、ルーフが約120mm長くなったことを挙げ、それに伴いクォーターウインドウが新たに追加された。「デザイン的差別化も行いつつ、後方視界の確保も考えデザインしている」と長田さん。ルーフを延長した方法は「バックウインドウを現行より立てたことで伸ばした」とのことだ。

もうひとつは正面から見てAピラーを立てたことがある。「これまではタンブルをつけて台形のような形だったが、今回は立てるようにした。そうすることでよりスクエアな感じが出ており、全体的に大きくなったような印象になるだろう」という。また、フード位置を約20mm上げられた。その結果、「ものすごく顔の存在感が強まったことなどが現行に比べて変わったところだ」と説明した。スズキ・クロスビースズキ・クロスビー

ハスラーとわかること

一方、これまでのハスラーのデザインモチーフで残したのは何か。長田さんは、「遠くから見てもハスラーだということわかるということが重要だ。『クロスビー』を含めたハスラーブランドとして今後育てていきたいからだ」。その遠くから見てもわかるアイコンとは、「丸目と四角い基調のグリルで、そこは残している」と述べる。

クロスビーとの関係について長田さんは、「差別化はしていきたい」としながらも、「現行はハスラーの兄貴分みたいな形で出ているので、差別化はしなければいけないが、基本的には少し近しい関係ではある」とし、次期型についても、「どうなるかわからないが、兄弟だとわかるような方向性にしていきたいブランドではある」とコメントした。スズキ・ジムニー1000(1982年)スズキ・ジムニー1000(1982年)

昔のジムニーをイメージしてツートンカラーを表現

ハスラーコンセプトのカラーリングはツートーンを踏まえたものになっており、これは現行も同様だが、違いはCピラーまでルーフカラーがつながることだ。「これはハードトップやホロのイメージ。昔の『ジムニー』などからモチーフを取り入れた。タフな感じ、ハードなSUVに見せたいことと同時に、アイキャッチや楽しさを一緒に表現したかった」と採用理由を述べる。またタフさや力強さを強調するために、フェンダーのガーニッシュの形状をこれまで以上に四角く太くしたことを明かした。

同時に現行のピラー部分は黒いシールを貼っていたが、ハスラーコンセプトではボディ色を採用し、「しっかりと柱を見せている。ひとつのドアを機能として見せるような形にして、より機能感やプロテクト感、頑丈さを表現している」と話した。

がっちりとガードするフレームを取り入れて

では、インテリアのデザインはどうか。「時計などにタフさを持たせるためにフレームなどをあしらってデザインすることがある。そのモチーフを取り入れ機能ごとに配置した」という。運転席前はメーター、中央は情報、助手席前はボックスと機能で分け、そこをプロテクトするようにデザインされたのだ。また黒のバーをインパネの上下に通した。これにより、「フレームをがっちりと挟み込んだ。これが大きなテーマだ」と話す。スズキ・ハスラーコンセプトスズキ・ハスラーコンセプト

このフレームのアイディアは、「全体的なテーマが力強さとかタフさなので、フレームなどをプロテクトしたもの(前出の時計など)からイメージしデザインした」とし、ここは現行とは大きく違うところでもある。

長田さんは、「2014年に現行ハスラーがデビューした時のアウトドアのイメージと、2019年の今とではイメージはだいぶ変わった」ことを挙げ、「今は街中でハードウェアを着たり、タフな時計をつけたりなどがファッション的におしゃれでかっこいいという時代で、日常に溶け込んでいる」と現在の感覚を説明。そのうえで、「街中でしっかりとしたタフなものをファッションとして使うのはおしゃれなので、今回のコンセプトに至った。それをより強調したモデルがオレンジのクルマ、アーバンアウトドアスタイルだ」とした

今の説明を聞くと、スズキ『ジムニー』もタフなクルマとしてモチーフになるようにも思う。長田さんは、「ジムニーは本当にプロユースなので、ハスラーを好きな人はジムニーも好きだと思う。ただし、ジムニーは燃費も決して良いわけでなく、人も乗れない。そういった実用面も重視する方々に向けてハスラーのニーズがあるのではないか」と述べた。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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