[フロントスピーカーのセッティング術]パッシブ? アクティブ? その2

“バイワイヤリング接続”の接続図。パワーアンプのLch出力、Rch出力のそれぞれに2組ずつケーブルを接続し、パッシブクロスオーバーネットワークのツイーター用の入力端子とミッドウーファー用の入力端子のそれぞれに接続する。
“バイワイヤリング接続”の接続図。パワーアンプのLch出力、Rch出力のそれぞれに2組ずつケーブルを接続し、パッシブクロスオーバーネットワークのツイーター用の入力端子とミッドウーファー用の入力端子のそれぞれに接続する。全 3 枚

スピーカーの“鳴らし方”について考えている。カー用のスピーカーは、売っている状態ではまだ半完成品だ。クルマに取り付けて初めてスピーカーとしての体を成す。そして、取り付け方、システム構築の仕方、チューニングの煮詰め方で鳴り方が変わってくる。

それらについて1つ1つ検証している。今回は前回予告したとおり、とある特別な“パッシブ”セッティングを紹介していく。

スピーカーに付属するパッシブクロスオーバーネットワークが“バイアンプ接続”に対応しているのなら…。

前回は、“パッシブ”システムと“アクティブ”システムとの違いや、基本的なメリット・デメリットについて解説した。その最後で、“パッシブ”システムならではの「音を良くする方法」を紹介したのだが、今回はそれらとはひと味違う、特別な方法をクローズアップする。

“バイアンプ接続”の接続図。パワーアンプの出力1chずつを1つのスピーカーに割り当てるという接続方法。“バイアンプ接続”の接続図。パワーアンプの出力1chずつを1つのスピーカーに割り当てるという接続方法。

結論から入ろう。“パッシブ”システムにおいてのスペシャルな高音質化策とはズバリ、“バイワイヤリング接続”および“バイアンプ接続”だ。

なおこれを実践するためには、スピーカーに付属されているパッシブクロスオーバーネットワークが“バイアンプ接続”に対応している必要がある。つまり、すべての“パッシブ”システムで行えるものではないのだが、もしも対応するパッシブを使っているのならそれを活用しても面白い。活用すれば使用スピーカーの能力をもう1段階引き上げられるのだ。

ダイヤトーンスピーカー『DS-G300』。当機に付属されているパッシブクロスオーバーネットワークは、“バイアンプ接続”に対応している。ダイヤトーンスピーカー『DS-G300』。当機に付属されているパッシブクロスオーバーネットワークは、“バイアンプ接続”に対応している。

実践方法を説明していこう。まずは通常のパッシブクロスオーバーネットワークの使い方から。パッシブクロスオーバーネットワークは普通、備えられている入力端子は1系統だけだ。なので右chのパッシブには右chの音楽信号を入力し、そうすればそれをパッシブが“帯域分割”して、高域の信号をツイーター用の出力端子へ、中低域の信号をミッドウーファー用の出力端子へと分配する。

対して“バイアンプ接続”に対応したパッシブクロスオーバーネットワークでは、入力端子が2系統備えられている。つまり、ツイーター専用の入力端子とミッドウーファー専用の入力端子とがそれぞれ設定されているというわけなのだ。なのでそれぞれにフルレンジの信号を入力する。そうすればパッシブ内のツイーター用の回路では中低音の信号がカットされ(ローカット)、ミッドウーファー用の回路では高域の信号がカットされ(ハイカット)、それぞれがツイーター用とミッドウーファー用の各出力端子へと送り込まれることとなる。

“バイアンプ接続”が可能なパッシブの活用方法は2とおりある!

ところで、「パッシブクロスオーバーネットワークのツイーター用とミッドウーファー用それぞれの入力端子にフルレンジの信号を入力する」と説明したが、具体的にはそのやり方は2とおりある。1つが“バイワイヤリング接続”で、そしてもう1つが“バイアンプ接続”、というわけだ。

それぞれの接続方法を紹介していこう。まず“バイワイヤリング接続”から。これはパワーアンプのLch出力とRch出力のそれぞれの出力端子に、スピーカーケーブルを2組ずつ接続して実行する。そうしてその1組をパッシブのツイーター用の入力端子に接続し、もう1組をミッドウーファー用の入力端子に接続する。

パッシブ内で信号を分割するのではなく、入力する前に信号をふた手に分けるので、パッシブ内部で信号が干渉するといった音に良くない現象が相当に減少する。結果、一層の高音質化が図れる。なお、これによって生じるコスト増は、ケーブル代と配線引き回しに関する工賃のみ。ユニットを新調するわけではないので財布にも優しい。

もう1つの“バイアンプ接続”の実践方法は以下のとおりだ。フロントスピーカーをメインユニットの内蔵パワーアンプで鳴らしている場合には、フロント用のスピーカー出力をパッシブのミッドウーファー用の入力端子に、リア用のスピーカー出力をツイーター用の入力端子にそれぞれ接続する。

つまり、リアスピーカーは鳴らせなくなる。しかし、内蔵パワーアンプの4ch出力をすべてフロントスピーカーで使い切るというこの贅沢な接続方法が音に効かないわけはない。“バイワイヤリング接続”と同じようにパッシブクロスオーバーネットワーク内部での信号の干渉がなくなることに加えて、スピーカーの1つ1つをより力強く、そして余裕を持って鳴らせるようになるからだ。つまり、“アクティブ”システムで行う“マルチアンプ接続”で得られるのと同様なメリットも得られる、というわけなのだ。

使用しているメインユニットに“タイムアライメント機能”が搭載されていれば、さらなるメリットも出現!

そして、“バイアンプ接続”を実行すると、さらなる利点も発生する。それは、「より詳細なサウンドチューニングが可能となる」というものだ。

ただし、このメリットを享受するためには条件がある。それは「メインユニットに“タイムアライメント”機能が搭載されていること」だ。もしも“タイムアライメント”機能が搭載されているのなら、リアスピーカー用の“タイムアライメント機能”をツイーター用として運用できる。そして、フロントスピーカー用の“タイムアライメント機能”をミッドウーファー専用とすることが可能となる。

つまりそれまでは、ツイーターとミッドウーファーが別々の場所に取り付けられていながらも、それらを「1つのスピーカー」と見なして“タイムアライメント”をかけるしかなかったのだが、“バイアンプ接続”を行うことでツイーターとミッドウーファーの個別制御が可能となる。ハイエンドDSPを用いて行うようなシステム制御方法を、お使いのメインユニットでも実行できるようになるのだ。

ただし、“パッシブ”システムだからこそのメリットは、1つ消失してしまう。“パッシブ”システムでは「パワーアンプのch数が少なくてすむ」こともメリットだったのだが、それは失われてしまうのだ。しかも、リアスピーカーも鳴らせなくなる。

とはいえ、“バイアンプ接続”によって音が良くなることもまた事実だ。もしもお使いのスピーカーのパッシブクロスオーバーネットワークが“バイアンプ接続”に対応しているのなら、音を良くする選択肢を1つ余分に持ち得ているということになる。そのことをくれぐれもお忘れなきように。その選択肢を実行に移すことで失うものもあるけれど、今より音を良くできる。音にこだわるのであれいつかはそれも試してみよう。音が良くなる感動を味わえる。

さて次回は、“アクティブ”システムの楽しみ方について詳しく解説していく。お楽しみに。

フロントスピーカーの“セッティング術”、大研究!! 第5回「パッシブ? アクティブ?」その2

《太田祥三》

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