【展望2020 その3】日欧そして中国へと日本車EVが本格始動

トヨタは日本では2人乗り超小型車でスタート

同容量35.5kWhのバッテリーを搭載して欧州に乗り出すホンダとマツダ

中国に3モデルを投入し、BYDとも合弁を設立するトヨタ

トヨタ超小型EV
トヨタ超小型EV全 6 枚

トヨタは日本では2人乗り超小型車でスタート

日本の自動車メーカーによる2020年の電動化策では、日産自動車を除いて多くが距離を置いてきた電気自動車(EV)の事業展開が本格化する年となる。日本、欧州、そして政府主導でEV激戦区となる中国など、日本メーカーの新たなEVが市場参入する。

トヨタ自動車は20年冬ごろに、日本で2人乗りの電気自動車『超小型EV』を発売する。同社が国内向けに量販を目指す最初のEVであり、東京モーターショー2019の関連展示でも披露した。乗車定員は2人で、左右に並んで乗車できるようにしている。

全長2490mm、全幅1290mm、全高1550mmと軽自動車よりさらに小ぶりであり、床下にバッテリーを配置し、リヤタイヤをモーター駆動して最高速度60km/hで走行する。「免許をとったばかりの方や高齢の方などが、買い物など日常の近距離を移動されることを想定して開発した」(トヨタZEVファクトリーの谷中壯弘グループ長)としており、同社は日本では、パーソナルな近距離移動向けからEVの普及を図るという従来の方針を貫く。ホンダe(東京モーターショー2019)ホンダe(東京モーターショー2019)

同容量35.5kWhのバッテリーを搭載して欧州に乗り出すホンダとマツダ

ホンダとマツダは初の量産EVを、20年にいずれも欧州から販売開始する。内燃機関による車両への排出ガス規制が今後は一気に厳しくなる一方、先進諸国では比較的EVへの受容性が高い欧州で足場を築こうという事業戦略だ。

ホンダは初の市販EVである『ホンダe』を、19年秋から英国をはじめドイツ、フランス、ノルウェーで先行予約を開始している。20年初夏に納車を始める計画で、英国でのベース車両価格は2万6160ポンド(約370万円)に設定した。

マツダの量産EV第1弾は東京モーターショー2019で初公開したクロスオーバータイプの『MX-30』で、容量35.5kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載している。20年後半から欧州で販売を始めた後、順次グローバルに展開する方針だ。マツダMX-30(東京モーターショー2019)マツダMX-30(東京モーターショー2019)

実はホンダeのバッテリー容量も同じ35.5kWhである。フル充電時の航続距離は、欧州のWLTP測定モードでホンダeが220km、同車よりやや大ぶりなマツダのMX-30は200kmとなっている。いずれもバッテリー容量は抑制気味だが、それでも、欧米での現状のEVの利用形態では1日の走行距離を十分賄えるパワートレインだという。

マツダはバッテリーが製造過程で電力を多消費するため、車両全体のライフサイクルでの環境負荷にも考慮してこの容量に設定したという。高価なバッテリーは車両価格への影響も無視できない。期せずして両社のバッテリーは同じ容量に帰結した。レクサスUX300eレクサスUX300e

中国に3モデルを投入し、BYDとも合弁を設立するトヨタ

今後のEVの普及ペースを測るうえで、最大の市場であり政府が強く関与する中国の動向が無視できない。中国政府は19年12月に21年から35年に至るまでの「新エネルギー車産業発展計画」の素案を公表し、20年の半ばまでに正式決定する方針を示した。

中国の新エネルギー車(新エネ車)は、EVとPHV(プラグインハイブリッド車)および燃料電池車(FCV)を指しており、19年からは中国で活動する自動車メーカーに一定の販売量を義務付ける規制も始まっている。今回公表された発展計画の素案では、25年の新車販売に占める新エネ車の比率を25%とする方針が盛り込まれた。同年のこれまでの目標は20%だったので、普及を一段と加速させたい政府の意向が色濃く反映されている。

中国の日本車のEVでは日産が先行しているが、トヨタは20年から一気にトヨタブランドで『C-HR EV』とその兄弟車である『イゾアEV』の 2モデル、レクサスでもグローバルで初の市販EVとなる『UX300e』を市場投入する。

また、中国最大のEVメーカーであるBYDとは19年11月にEVの研究開発合弁を中国に設立する契約を交わした。折半出資で20年中に立ち上げ、両社のEVやそのプラットフォーム(車台)、関連部品などの開発を担う会社とする。中国では新車販売最大手の独VW(フォルクスワーゲン)がEVでも新たな生産合弁の設立などで攻勢をかけており、日本勢の対抗策が20年から本格化していく。

【その1】日本から自動運転技術の進化を発信
【その2】国内市場は500万台維持で堅調に…トヨタチャンネル統合の波紋も
【その3】日欧そして中国へと日本車EVが本格始動

《池原照雄》

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