【スズキ ハスラー 新型】よりSUVらしく、ワクワクさせてくれるデザイン…チーフエンジニア&デザイナー[インタビュー]

スズキ ハスラー
スズキ ハスラー全 12 枚

スズキ『ハスラー』が2代目に進化した。パッと見はキープコンセプトのエクステリアデザインをまとっているが、実は様々な思いの上にこのデザインが選択されたという。そこでチーフエンジニアとエクステリアデザイナーそれぞれに話を聞いた。

実験からチーフエンジニアへ

スズキ ハスラースズキ ハスラー

----:竹中さんはこれまで車両開発の実験を行っていたとお聞きしています。そこからハスラーのチーフエンジニアになったそうですが、どういう経緯だったのでしょう。

スズキ四輪商品第一部チーフエンジニア課長の竹中秀昭さん(以下敬称略):はい、車両性能開発で実験を行っていました。当時は小型車を主に担当していましたので、スペースも余裕があり、重量もある程度許されますし、予算もそこそこ。しかし、いまの担当になり、軽自動車のコストと重量は(開発する上で)すごく大変でした。

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その中で、目標性能を成り立たさなければいけませんし、何よりもこのクルマはデザインがキモです。見て楽しそう、何か出来そうと思って買ってもらい、乗ってもらうクルマですから、デザインを損なわずに性能を成り立たせることにすごく苦労しました。

----:2代目ハスラーの担当に決まった時、どう思いましたか。

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竹中:困ったな(笑)。直前までテストコースで小型車の振動騒音の開発を行っていましたので、軽自動車は見ていませんでした。そんなある日突然商品企画の方へいけとなったのです。そこに異動したのはいいけれど何をやるのか……。ちょうどハスラーが動き始めた時でしたので、最初からやってみろ、となったわけです。

通常ですとアシスタントを何年か経験し、企画も勉強しながら営業や購買や生産などの色々な人とのつながりを作って、人の後押しがあり、こいつならといってもらえてようやくなれる立場でしたので、重圧でした。

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クルマ自身がチャレンジしていない

----:そうして担当になったわけですが、竹中さんは2代目となるハスラーをどのようにしたいと思いましたか。

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竹中:自分なりのクルマに育てていきたいと思いました。その中でこいつがやったんだという色は出したいと考えていたのですが、その後全然思い通りにいかないというのを思い知らされました。デザインが始まり1/1モデルを作りこれで試作車を作るぞというタイミングでやり直しとなってしまったのです。その理由は先代ハスラーからの変化感や、何を表現しているのかが伝わらなかったのです。

やはり先代の存在の大きさがあるがゆえに、色々な人の考え方があったのです。ハスラーは色々な想像をさせてくれますし、人にもチャレンジングな気持ちにさせてくれるクルマです。そのクルマ自身がチャレンジしなくてどうするんだと役員からいわれました。社長も含めたプレゼンの場などでそういう議論をした結果やり直しとなったわけです。その時のクルマは今以上にキープコンセプトでした。

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そこでもう一度市場調査をしながらもっとSUVらしくという方向にしていきました。それはアウトドアの市場の動き、ライフスタイル、グッズ類、着るものなどが変わってきていたからです。我々としてはそういった世の中の動きを見ながら、かつ今後数年にわたり作り続けますから、機能や性能を満足し続けられるように搭載し、デザインなど飽きのこないものを開発していったのです。そうした上でやはりワクワクさせてくれる色々な要素を入れていきました。

SUVテイストを盛り込んだエクステリア

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----:では、エクステリアデザインはキープコンセプトと捉えられると思いますが、なぜそうしたのでしょう。

スズキ四輪技術本部四輪デザイン部エクステリア課長の山本雄高氏(以下敬称略):先代ハスラーが市場から大きく支持されていることははっきりしていましたので、その部分はきちんと引き継ぐ案は開発当初からありました。

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実はこのデザインは(前述の通り)途中で一度やり直しをしています。最初のデザインはもっともっと初代ハスラーに近いデザインだったのです。しかしこれではいくらなんでも近すぎるだろうとやり直しをしました。

様々な市場調査を行った結果、アウトドアの世界が初代ハスラーを開発していた時よりもさらに世の中に深く浸透し、日常化しており、その頃とは雰囲気が違うぞということが分かったのです。そういったところをデザインに織り込むことでSUV度を高めました。

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例えば先代よりも(正面から見て)ピラーを立ててスクエアにして、ボンネットも水平にし、バックドアも立てて屋根を長くしています。その結果シックスライトが出来ました。このようにスクエアでタフなデザインに変えたのが一番大きな違いです。

ジムニーのエッセンスも

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----:アウトドアレジャーで使われるものを街中でも使うようになって来ています。そういったイメージをクルマでも表現したかったということですか。

山本:そうです。しかも普段使っているものが“なんちゃって”ではない結構本格的なものですから、やはり本格的な感じのものの方がいまの時代には合っていると思います。

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----:例えばスズキの場合には『ジムニー』がありますね。これをモチーフにすることは考えなかったのでしょうか。

山本:実はこのクルマを作っている時に隣でジムニーをやっていたのです。なのでエッセンスはおそらく入っていると思います。スクエアであったり、ボンネットが水平であったりというプロポーション的なところですね。しかしジムニーは雰囲気だけではなく機能性を極めるというコンセプトですから、全く考え方が違います。参考になることはありました。

----:例えば、ウインカーを外に、ヘッドランプを内側になどの考え(悪路でヘッドランプを割ってしまう確率を減らすため)を取り入れているのは、近しい関係のように見えます。

山本:はい。ただ、ランプについてはどちらかというと先代もそうでしたし、ここはすごくキャッチーでアイコン的な部分です。実はランプはイメージを踏襲しているのですが、それ以外は全部変わっています。ランプを隠すと結構違うクルマに見えると思いますし、屋内ではなく外で先代と比較をしてみるとかなり違うということが分かっていただけるでしょう。

厚い鉄板を曲げたように

----:その他デザイン的にこだわったところはありますか。

山本:軽自動車のサイズの中でスクエアにしましたので、平べったく弱く見えてしまいがちです。そこで先代ハスラーよりも丈夫で頑丈に見せるために、ガソリンの携行缶などのような強さが出せないかとモデラーと一緒に話をしました。

通常クルマの鉄板は薄いのですが、2mmぐらいの板厚がある鉄板を曲げたような形にしたいとトライしました。例えばショルダー部分の丸さや、サイドを走るキャラクターラインの丸さ加減など、厚い板を曲げてとろみのあるようなデザインにしています。そういうところから頑丈な感じを醸し出しているのです。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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