SUVテイストをスーパーハイトに盛り込んだ三菱 eKクロススペース…東京オートサロン2020[インタビュー]

三菱 eKクロススペース(東京オートサロン2020)
三菱 eKクロススペース(東京オートサロン2020)全 23 枚

間もなく市販が予定されている三菱の軽スーパーハイトワゴン、『eKクロススペース』と『eKスペース』が東京オートサロン2020に出品された。そこでこの2モデルについてデザイナーに話を聞いた。

“スペース”の位置に込めた想い

東京モーターショー2019で参考出品されたときには三菱『スーパーハイト軽ワゴン』と呼ばれていたが、今回正式に「eKクロススペース」(東京モーターショーに展示されたモデルの市販車)と「eKスペース」(初公開)と発表された。つまり、従来の「eKスペース」はそのまま、「eKスペースカスタム」が廃止され、「eKクロススペース」が誕生したことになる。

このネーミングをよく見ると、eKのあとに“スペース”がついているものから、“eKクロス”のあとにスペースが移ったことに気付く。その点について三菱デザイン本部プロダクトデザイン部デザイン・プログラム・マネージャーの大石聖二さんは、「eKクロスでトライしたことは、eKクロススペースも同じにしようと、SUVテイストのスーパーハイトワゴンを作った。それは顔も然り、その他のパーツや外観から醸し出す雰囲気など全てeKクロスの世界観をスペースバージョンに盛り込んだ。その意味を込めて先にeKクロス、次にスペースという順にした」と述べた。

従来型の弱さを払拭

新型eKスペースファミリーのデザインコンセプトは「“SMILES & FREESTYLE”。自由な発想でユーザーが思う使い方に対応出来るようにデザインした。つまり従来型のeKスペースの弱かった点を、全部払拭したいという想いを込めている」という。そこで、「室内幅や後席の広さ、積載量などは全てクラストップを目指し開発した」と説明。さらにスライドドアの開口幅は従来型からプラス95mm大きくなった。

エクステリアにおいても、「あまりにもボクシーに見えないように、限られたスペースの中で抑揚を持たせ、立体感のある見せ方が出来るボディ断面とした。ともするとバンのような平面な断面になりがちだが、そうはならないように特にフロントフェンダーの下回りなども含めて気を使った」とコメント。

これらはeKクロスなども共通だが、「クルマの性格として、eKクロスよりもワゴン的、ボクシー的に見えると思う。ベルトラインもeKクロスより水平基調とし、基本的には全て長手方向で、クルマが短く小さく見えないような工夫をしている」と説明した。三菱 eKクロススペース(東京オートサロン2020)三菱 eKクロススペース(東京オートサロン2020)

eKスペースカスタムとeKスペースターボの関係

今回新たに設定されたeKクロススペースのデザインの特徴は、「ダイナミックシールドフェイスだ。eKクロスと比べて背が高くなったのでグリルも縦横比などバランスを全て取り直し、スーパーハイトワゴンの顔に入れてもおかしくないよう緻密にデザインした」と述べる。

一方のeKスペースは、「eKクロススペースよりもより親しみやすい、万人受けしやすい形を狙った」とし、「外観上いかつく見えないようにしながら立体感は損なわないようデザインした」と話す。そして、「eKスペースファミリーの中ではeKスペースの方が女性向け、eKクロススペースの方が男性向けとなるだろう。eKスペースは40から50代の女性に向けて、嫌悪感を持たれないよう、柔らかい面を使った立体感のある造形をしている」とした。

またeKスペースでは2種類のフロントフェイスを持たせた。ひとつはターボのもので「顔を精悍に見せたいのでグリルを黒に。ノンターボはボディカラーと同色だ」と大石さん。これは、「eKスペースカスタムが廃止となりSUVテイストのeKクロススペースになった。しかしeKスペースカスタムのテイストが好みという方は必ずいるので、その方々に向けてこのターボの外観をお勧めしたい。それを意識してデザインしている」と説明した。三菱 eKスペース(東京オートサロン2020)三菱 eKスペース(東京オートサロン2020)

隠す収納と見せる収納

インテリアについて大石さんは、「特にカラーリングやステッチ、素材などはかなりこだわった」という。具体的には荷室部分に撥水素材を使い、リアシートを畳んでフラットにした際に、自転車を載せたり、アウトドアで子供達と遊んだあとの汚れ物をそのまま載せることなど、汚れを気にせず使えることを意識。また、ekクロススペースの上級グレードにはシートにオレンジのステッチやグレイスコード(シート背面の横基調のもの)を入れたほか、インパネにもステッチが入る。

ルーフ部分のサーキュレーターも現行は樹脂の後付け感があったものをインテグレートさせるなど、「他車と比較し劣っているところは全て改善し、良いところはそのまま踏襲。特に収納の多さはクラストップレベルを狙った」と述べた。

この収納については数とともに、レイアウトも重視。「隠す収納と見せる収納がある。例えばティッシュボックスなどは普段見せたくない。でも使いやすいように助手席前の引き出しを開けたらすぐ使えるようにした。またセンタークラスター下部にボックスを作っており、空き缶や汚れたゴミなどを見られないよう仕舞っておける」と説明。その一方、「スマホを置き、充電出来るように、USBとの位置関係も考え、インパネの棚などに置けるようにし、そこには滑り止めも配した」とコメントした。

eKクロススペースとeKスペースとでは内装基調色や樹脂類のカラー、シート生地などが違っている。eKスペースはグレージュを基調としており、「優しく見えるようにしている」と大石さん。また、「汚れが気になるので黒い方がいいという意見もある。しかし、そこは逆で、泥汚れや靴についた汚れは白いので、こちらの方が目立たないはず。足元あたりが黒い内装トリムだと白い汚れが気になってしまうだろう。お母さん目線だと内装基調色はベージュの方がいいはずだ」とこだわりを語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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