【CES 2020】高精度HDマップをグローバル展開、TomTomの最新技術とは

CES2020に出展したTomTomのブース
CES2020に出展したTomTomのブース全 12 枚

昨年、スカイラインがハンズオフ運転を可能にし、今年はレベル3に対応した新型車の搭乗も噂される。その実現に欠かせないのが高精度マップであり、それをグローバルで展開するのがTomTom(トムトム)だ。同社は今年1月のCESに出展し、その最新技術を披露した。

デンソーや日立オートモティブと協業してHDマップの更新を効率化

ネットワークに負荷がかかるHDマップの配信システムをいち早く実現したネットワークに負荷がかかるHDマップの配信システムをいち早く実現した

高精度HDマップは自動運転の実現には欠かせない次世代のマップとして、日本も含め世界が競って開発を進めているところだ。そんな中でトムトムがCESで披露したのは高精度HDマップの配信システムだ。高精度HDマップはその名の通り極めて高精度なデータで構成されている地図データだが、これを配信するにはネットワークにも負荷がかかるなど実現のハードルは極めて高い。トムトムではこれを世界に先駆けて実現したのだ。

CES会場では高精度HDマップを携帯電話のネットワークに載せて配信するデモが行われていた。そのポイントとなるのが必要なデータをいかにコンパクトに反映させるか。そのために、トムトムではベースとなる最低限の地図データはキャッシュで持たせておき、進もうとする方角に必要な差分データのみを自動的にサーバーよりダウンロードする。

デンソーや日立オートモティブとの協業によりHDマップの信頼性を高めているデンソーや日立オートモティブとの協業によりHDマップの信頼性を高めている

しかし、この差分データを把握するには日々のメンテナンスが欠かせない。トムトムでは測定車を使ってデータ収集を行っているものの、それでもそう簡単に追いつくものではない。なにせ、トムトムが高精度HDマップは高速道路を主体として、北米や欧州のほぼ全域と日本の本州の高速道路でカバーしているわけで、そのデータは膨大なものとなる。そこでトムトムではデンソーと手を組み、高い信頼性の下で差分を更新するプラットフォームを共同開発。トムトムは今後、自社のHDマップとデンソーのカメラをはじめ車載センサーとを連携させ、完全自動運転に向けた位置確認やルート計画機能を強化していく。

一方、トムトムは日立オートモティブシステムズとの間でリアルタイム・ハザードサービスに向けた実証実験も行っている。これはトムトムのコネクテッドサービスを実装するナビゲーションやADASアプリに対して行われるもので、日立オートモティブの車両センサーによって検出された障害物の位置情報をリアルタイムで提供するというものだ。自動運転に供される高精度HDマップでは道路状況の変化が従来よりも重要度は増すわけで、トムトムとしてはこの技術を活かして他社との差別化につなげていきたい考えだ。

1週間で2兆5000億ものデータを集め、変更箇所は5600万カ所にも及ぶデータを処理する1週間で2兆5000億ものデータを集め、変更箇所は5600万カ所にも及ぶデータを処理する

1週間の収集データ2兆5000億件、変更箇所は5600万カ所

そもそもトムトムは、クルマや携帯電話からビッグデータを集めて、それを交通情報に反映させることで、交通渋滞を減らしてより安全な交通社会や、CO2削減を目指す社会につなげたいという想いがあるという。そのために同社が進めている事業は大きく二つある。一つは地図データをベースとしたナビゲーション。もう一つは世界6億台ともいわれる携帯端末から収集されたビッグデータを元にした交通情報だ。同社によればここまでのデータをグローバルで集めている会社は他になく、一昨年、ゼンリンがトムトムと交通情報の提供で提携を発表したのもこの実績を評価したからに他ならない。

世界6億台ともいわれる携帯端末から収集されたビッグデータを元にした交通情報を運用する世界6億台ともいわれる携帯端末から収集されたビッグデータを元にした交通情報を運用する

ポイントはそのデータの収集方法にある。日本のVICSのように交通インフラを使うのではなく、携帯電話からのプローブを使ってデータを反映させているのだ。すでに10年以上実施してきた独自の技術だそうで、データ一つひとつに信頼性を持たせるアルゴリズムにより平準化させているという。その収集したデータは膨大で、1週間で2兆5000億ものデータを集め、変更箇所は5600万カ所に及ぶ。時間軸で表せば1秒間に4万キロを対象とし、それは地球1周分にも相当し、この処理のために北アメリカだけでも7カ所のサーバーセンターを置いているのだという。

展示されていたのは、その処理状況を示したアメリカ国内の一都市のリアルタイムの状況。クルマ一台ごとの動きが反映されているのがわかり、そのクルマが過去にどのような動きをしていたかまでデータとして蓄積されている。このデータを元に今後発生する渋滞の予測も可能となり、新たな交通管制として役立つというわけだ。これは交通インフラを必要としないため、特に渋滞対策が遅れている新興国での管制システムに有効だとする。

各車両の動きを把握し、過去のデータから今後発生する事象を予測する各車両の動きを把握し、過去のデータから今後発生する事象を予測する

EVチャージスポットやシフトチェンジの最適化を実現する最新技術を披露

EV向けの新たなアプリケーションも紹介された。トムトムが提供するEV充電ステーションは、欧州、北米、中東、アジアの50か国で33万以上のカバレッジを誇る。リアルタイムで利用状況が地図上で把握できるほか、バッテリー残量から行くことが可能なスポットを案内し、スポットの予約をすることも可能。さらに、充電費用の支払いだけでなく、それ以外の支払いまでもアプリ内で可能とした。会場で披露されたデモでは、充電中にピザを予約して決済し、充電が終わったらそのままピザ店までのルートガイドへと引き継ぐ。充電中の時間を効率よく使う新たな提案とした。

EVスポットを案内するだけでなく、他の決済までも行えるアプリを提案したEVスポットを案内するだけでなく、他の決済までも行えるアプリを提案した

もう一つ興味深かったのはナビレスで走行中の道路状況を把握し、道路の状況や道路規制などの情報を走行中の車両に自動的に反映させるというものだ。データは車両の進行方向に合わせてクラウドから自動送信され、そこには道路の勾配情報も含むことで、最適なシフトチェンジを自動的に行う。

発想としては20年ほど前、アイシン精機がナビゲーションとローカルで連携させてこれを実現しようとしたことがあった。しかし、その時点では実現できる環境が整っておらず、結局は交差点でのシフトチェンジで対応するにとどまっている。そして今、トムトムは道路状況を車両側に直接クラウドから送信し、車両側がその情報を元に自動的に対応するシステムを実現した。これにより、効率を高めた走行が可能となり、結果としてドライバーの疲労軽減にもつながっていくという。トムトムでは今後はこうした対応がナビレスで可能になると予測している。

まずEVスポット検索で利用可能なステーションを探すまずEVスポット検索で利用可能なステーションを探す

《会田肇》

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