東京メトロ「虎ノ門ヒルズ」駅開業---日比谷線 95年の歴史を振り返る

日比谷線全線開通式(銀座駅)
日比谷線全線開通式(銀座駅)全 34 枚

2020年6月6日、東京メトロ日比谷線の日比谷~神谷町間に、全線開通から56年ぶりの新駅「虎ノ門ヒルズ」が開業する。日比谷線の最初の開業(部分開業)は1961年、全線開業は1964年だ。日比谷線の歩みを東京メトロの資料に基づいて紹介しよう。

震災復興計画が原案

日比谷線は北千住~中目黒間の営業キロ20.3kmと21駅を持ち、輸送人員は1日平均123万6000人(2018年度)となっている。現在の日比谷線の建設が計画されたのは1925年までさかのぼる。東京が都市として大きく変わりつつあった時代に、どのような過程で開業に至ったか。

関東大震災後の復興計画に合わせて東京で5路線の地下鉄が計画され、その「2号線」が日比谷線の原案だ。これらの地下鉄計画は、戦争などの影響で終戦まではほとんどが実現しなかった。戦争が終わると東京や近郊の人口は急激に増加し、地下鉄建設がふたたび計画される。

1957年、銀座線、丸ノ内線に続く路線として、都市計画第2号線(日比谷線)が改めて計画された。近郊に路線を伸ばす私鉄との「相互直通運転」を計画したことが2号線の最大の特徴だ。さらに着工後、1964年の東京オリンピック開催が決定し、開催までの開業という時間的制約が建設計画に加わった。集電方式とトンネル高さの比較集電方式とトンネル高さの比較

3社相互直通運転を計画

銀座を中心とした都心の要所を経由する日比谷線は、北千住駅で東武伊勢崎線(現:東武スカイツリーライン)に、中目黒駅で東急東横線(現在は乗り入れなし)に相互乗り入れを予定した。鉄道会社の相互直通運転はまだ珍しく、東京メトロ(当時は営団地下鉄)では初となる。実現に向けては様々な問題があったという。

例えば、電車の動力源である電気の集電だ。銀座線、丸ノ内線では建設費を抑えるため、トンネルの断面積を小さくできる第三軌条方式(電車の足元の三番目のレールから電車に電気を供給する)を採用していた。日比谷線は相互直通運転を行なうため、乗り入れ先で導入されていたパンタグラフ方式(電車の上部の架線から電気を供給する)を採用した。

郊外を走る鉄道会社が、既存のパンタグラフ方式の給電設備をすべて改築するのは現実的ではないし、地上を走る鉄道が地面に給電レールを設置するのは危険でもある。日比谷線ではパンタグラフ方式を採用し、トンネルの断面積を極力小さくするため「剛体架線」という新たな給電設備を日本で初めて導入した。設備面での対応の他にも、乗り入れ区間の調整、運転士の取り扱いなどの課題があったという。工事中の銀座駅工事中の銀座駅

日比谷線建設工事において最大の難工事が、既存の銀座線・丸ノ内線と連絡する銀座駅だった。そのため、日比谷線は北千住~東銀座間と霞ケ関~中目黒間をそれぞれ先行開業することになった。そして1964年8月に銀座駅を含む東銀座~霞ケ関間が開業して全線が開業し、3社間の相互直通運転が始まった。

日比谷線を走った車両

日比谷線では1961年の開業以来、3種類の東京メトロ所有車両が活躍した。開業と同時に導入された車両が3000系車両だ。東京メトロでは初となるパンタグラフや、国内で初めてATC(自動列車制御装置)を搭載した。曲線を多用した銀色の車体は「マッコウクジラ」の愛称で親しまれた。18m3扉車8両編成。1994年まで運用された。

日比谷線2番目の車両が、1988年7月に運行を開始した03系だ。東京メトロの新型車両として初めて車内冷房が搭載され、乗降時間短縮、混雑緩和のために5扉車も導入された。日比谷線では2020年2月に運用を終了した。03系車両03系車両

03系に代わる車両として2017年3月から導入が始まった新型車両が13000系だ。現在、日比谷線のメトロ車はすべて13000系となっている。ホームドアの設置に対応するため直通運転先の東武鉄道と規格をそろえて、20m4扉車7両編成に車両フォーマットが変更された。

再開発計画は進行中

新駅・虎ノ門ヒルズ駅の建設は2016年2月に着工された。電車が走行する両脇で地中を掘削したりトンネル壁を撤去したりしていった。駅は営業を開始したが全体計画は未完成で、周辺の再開発ビルとの接続工事を続ける。2023年には地下2階を改札階として「まちと一体となった新たな駅」になるという。

2020年6月6日には、虎ノ門ヒルズ駅の開業に加えて、日比谷線で初の座席指定制列車である「THライナー」が運行を開始した。さらに、新型車両13000系への更新を完了したことから、日比谷線各駅でホームドアの設置を順次開始し、2022年度までに全駅設置をめざす。東京メトロ虎ノ門ヒルズ駅(6月6日)東京メトロ虎ノ門ヒルズ駅(6月6日)

《高木啓》

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