【トヨタ ヤリス 新型試乗】恐るべき経済性能と「星5つ」のキビキビ感…中村孝仁

自動車が高くなったと思わざるを得ない

恐るべき経済性能

とにかくキビキビ感がハンパない

トヨタ ヤリス ハイブリッドZ
トヨタ ヤリス ハイブリッドZ全 22 枚

北米で良く使われる言葉にリデザインという言葉がある。俗に日本ではフルチェンジと呼ばれるやつだ。ただし、かなり明確に定義があって、リデザインと呼ばれるにはプラットフォーム、エンジン等動力源、外観デザインの刷新。この3つが揃って初めてリデザインと呼ばれる。

いわゆるマイナーチェンジ(と言っても中には大幅な変更がある場合もある)はフレッシェンと呼ばれている。この呼称を使うのは基本的にアメリカ最大と言うか、最も権威ある自動車業界の新聞で、その影響力から他の多くのメディアもこの呼称を使うケースがある。

トヨタ ヤリス ハイブリッドZトヨタ ヤリス ハイブリッドZ
で、『ヤリス』である。プラットフォーム、エンジンを含むメカニズム、それに外観デザインをひっくるめた完全なリデザインであるだけでなく、日本市場の場合はその名称まで変えてしまったのだから、ある意味ではブランニューモデルといっても過言ではないような存在だ。

もちろん、ヤリスの名はヨーロッパではすでに聞き慣れた名前だし、日本はヨーロッパでヤリスを名乗っていた『ヴィッツ』のフルモデルチェンジ版で、その名称がヤリスに統一されたわけだからブランニューモデルではなくフルモデルチェンジ車というわけだ。

と、余談はさておき、新しいヤリス。本当は4月6日から試乗の予定だった。ところがこのコロナ禍で後ろ倒しになること2か月半。ようやくその実力を試すことが出来た。

自動車が高くなったと思わざるを得ない

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初めてこのクルマを見たのは2019年の10月のことだから、それから数えたら8か月もたっている。いわゆるワールドプレミアされた当初、ハイブリッドの恐るべき燃費だけが目に付いた。その後GR版が発表されると今度はその走りにも注目が集まった。

そもそも、ヨーロッパではすでにラリーで大活躍しているから、それなりに走行性能に対する期待は高かったかもしれない。しかし、ワールドプレミアでその内装を見た時は正直言って少しがっかりした。というのは内装の作りがかなりプアで、いい歳をしたおじさんのクルマではないという印象を持ったからである。

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近頃のBセグメント車の中には内装の充実に驚かされるクルマがある。その代表格が『デミオ』から名を変えた『マツダ2』だ。当時これなら大人が卑下しないで堂々と乗れるクルマだと思った。今もその思いは変わらない。最新のホンダ『フィット』の上級グレードもそうだ。ただしお値段は今や乗り出し300万円越えは当たり前。このヤリスも、今回拝借した「ハイブリッドZ」という最上級仕様のモデルにあれこれオプションが付いた価格は296万500円(消費税込み)。

このうち66万5000円がオプション価格だから、ここを圧縮すればお安くはなるが、このオプションにはナビゲーションキットからETC、ブラインドスポットモニターをはじめとするセイフティーデバイスの一部、さらに最近必要不可欠になりつつあるドライブレコーダーなどがあって、やはりこうした必需品を積み上げると乗り出し価格はやはり300万円に届いてしまう。だからどうしても自動車が高くなったと思わざるを得ない。

恐るべき経済性能

とまあ、嘆くのはこのくらいにして、クルマの出来である。たしかにワールドプレミアの時に感じた質感のプアさに関しては、とても上質に感じたマツダ2やフィットLUXEと比較するとやはりだいぶ見劣りするものの、我慢ならぬというレベルではないし、気にしない人にとっては恐らく「何がいけないの?」と不思議に感じるレベルかもしれない。それよりもこのクルマの美点は、その恐るべき経済性能と、実に能動的な印象を与えるクルマの動きにある。

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まずは燃費だ。特に省燃費運転をしたわけではない。だから3つあるドライブモード、エコ、ノーマル、スポーツは場面場面で使い分けてみた。特にスポーツでは意図して深く踏み込んでみたりもした。そうした結果でも距離は大して稼げなかったのだが、総合計で27.2km/リットルというとんでもない記録を打ち立てた。これ、かつて僕が乗ったクルマの中ではベストな記録だ。

ただし、同じZグレードのガソリン車との価格差は36万9000円もある。そしてヤリスの各グレードで最高の燃費性能36.0km/リットルを叩き出したハイブリッドXと比較しても29万7000円の差だから、まあ、経済性だけでこのクルマを買おうという人は敢えてハイブリッドを選ぶ必要はない。

とにかくキビキビ感がハンパない

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ハイブリッドならではの特徴として、勿論燃費もさることながら、最近は当たり前になったアイドリングストップからの発進のスムーズさがクローズアップされる。一方で回生ブレーキを用いている関係から、ブレーキフィールに違和感を持つ人もいるかもしれない。僕は慣れるまでその踏み込んだ瞬間の効き具合が結構唐突で、ついついカックンブレーキをしてしまったが、これは慣れで克服できた。

能動的と評したその動きについてである。とにかくキビキビ感がハンパない。これは、日本製のBセグメント車としては個人的評価ではスズキ『スイフトスポーツ』と並ぶ★5つである。(★5つが最高評価)それ故にGRヤリスに乗ってみたいという衝動に駆られる。コーナリング中の姿勢保持や荷重変化に対する追従性能も申し分なしだ。さすがに乗り心地については★3つのレベル。

これまでヴィッツにはさっぱり高印象を持たなかったが、ヤリスは「こいつはただ者じゃない」!そんな印象を持った。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファーデプト代表取締役も務める

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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