ヒトを追従して自動運転する清掃車…三菱ふそう eキャンター センサーコレクト

三菱ふそう eキャンター・センサーコレクト
三菱ふそう eキャンター・センサーコレクト全 18 枚

三菱ふそうバス・トラックは、30日に同社川崎工場内で2台のコンセプトトラックを発表した。その1台が『eCanter SensorCollect』(eキャンター・センサーコレクト)という、見た目は国内でよく見る塵芥車(清掃車)だ。

このトラックは、フル電動のEVトラック「eキャンター」に塵芥車の架装を施したものだが、さらに同社やダイムラーグループのセンサー技術を盛り込んだ次世代トラックだ。まず車両の四隅にはベロダインのLiDARが装着される。超音波センサーは車両周囲に16か所。上部には準天頂衛星対応GNSS(QZSS)のアンテナが2基。さらに、4G/Wi-Fiのアンテナが2本立っている。

この電動トラックはなにができるのかというと、オペレータ(ドライバー)を認識し、無人でオペレータを追従してくれる。もちろん、周辺の障害物や歩行者などを検知し、安全に無人自動運転を行う。追従速度は5km/hが上限だという。オペレータの動きは360度認識しているので、後ろに回り込んだり、路地を曲がったりしても可能な限り追従を続ける。

三菱ふそうは、日本のゴミ収集の効率化・問題解決のためにこのソリューション(コンセプト)を提案したという。一般的な自治体のゴミ収集車は、だいたい3名乗車だ。入り組んだ住宅地の路地の各収集ポイントを回っていく。住宅地内部になると収集ポイントは数メートルおきにあったりする。そのため、ドライバーが低速運転しながら、残り2名が収集車の周りを徒歩で移動しながら収集作業を行うので、あまり効率がいい作業ではない。

三菱ふそう eキャンター・センサーコレクト三菱ふそう eキャンター・センサーコレクト

eCanter SencerCollectなら、住宅地内の収集時にドライバーは自分で運転する必要がない。車両から降りて収集ポイントに移動すればクルマが勝手についてきてくれる。障害物があれば避けてくれるし、歩行者がいれば停止する。オペレータはリモート緊急停止ボタンを持ち、車両外部にも2か所「キルスイッチ」がついている。

Wi-Fiアンテナはリモート緊急停止ボタンやオペレータのスマホと通信するためのものだ。オペレータはリモートボタンと専用アプリがインストールされたスマホを持って外に出る。イニシャライズゾーン(車両前方)に入り、自分を追従するように車両に認識させる。その後は、停止や解除、オペレータを見失うまで自動追尾モードとなる。

三菱ふそう eキャンター・センサーコレクト三菱ふそう eキャンター・センサーコレクト

4つのLiDARが周辺の物体、移動体をリアルタイムで認識する。追従すべき人間の動きもトラッキングしている。LiDARの情報と16個の超音波センサーの情報で、進路探索、歩行者検知を行う。

三菱ふそうは、eCanter SencerCollectのコンセプトモデルを開発するにあたって、国内のごみ収集業務を精査したという。海外、とくにEUは、回収用のゴミ箱は自治体ごとに規格が決まっており収集はロボットアームで運転席から自動で行える。日本特有のゴミ収集問題に特化したコンセプトモデルといえる。システムの堅牢性など細部を詰めて、すぐにでも実用化すべき技術といえる。

LiDARは全部で4つLiDARは全部で4つ

しかし、同社としてこのモデルをすぐに実用化する予定はないという。無人走行についても、このために法的なアプローチをとるより、法律に合わせるとしている。コンセプトとシステムはよく考えられているが、現状、LiDARセンサーは比較的大きいものがむき出しで装着されている(超音波センサーはバンパーやサイドカバー等にきれいに埋め込まれている)。また、360度の人物のトラッキングなら、LiDARよりカメラによる画像認識のほうがコストを下げられる。

つまり、eCanter SencerCollectは、実用化(に十分耐えらえると思うが)を見据えたプロトタイプというより、各種技術のPOC(Proof of Concept:概念実装)と見るべきだろう。低速でのオペレータ追従自動走行は、ごみ収集以外にも応用範囲が広い。自動駐車の応用でトラックターミナル、倉庫、集配センターなどでも使えそうだ。乗用車にも採用されてもよい機能だ。リモート操作での自動駐車やバレーパーキングでの車両の呼び出しに加え、駐車場や制限エリアでの人による車両誘導がしやすくなる。

三菱ふそう eキャンター・センサーコレクト三菱ふそう eキャンター・センサーコレクト

三菱ふそう、およびダイムラーとしては、各種の要素技術を生かしたソリューションをプロタイプやPOCとして実装することで、これからのCASE車両へのニーズにいつでも応えられるようにする狙いがあるはずだ。

《中尾真二》

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