【マツダ2 新型試乗】ヤリス、フィットの出来に対抗できるのか?…中村孝仁

ヤリス、フィットの出来に対抗できるのか?

少し立派になった顔つき

6ATはメリットか、弱点か

マツダ2 15Sプロアクティブ Sパッケージ(AWD)
マツダ2 15Sプロアクティブ Sパッケージ(AWD)全 17 枚

ヤリス、フィットの出来に対抗できるのか?

日本市場は今、Bセグメントに熱い視線が注がれている。言うまでもなく出来の素晴らしいトヨタ『ヤリス』やホンダ『フィット』が登場したからだ。

『デミオ』の時代に日本カー・オブ・ザ・イヤーも獲得し、改良を施して名称を変更した『マツダ2』も同じセグメントで上記2車はライバルである。ただ、現状でこのヤリス、フィットの出来に対抗できるのか?ということになると、正直に言えば少々心もとない。

マツダ2 15Sプロアクティブ Sパッケージ(AWD)マツダ2 15Sプロアクティブ Sパッケージ(AWD)
まだ、ヤリスやフィットがデビューする前に試乗したマツダ2の印象は(当時試乗したのはディーゼル車)、「名前を変えても大きく中身が変わっていないなら、デミオのままでいいや」というのが正直な印象だった。

それが、この後ライバル2車がフルチェンジされて登場すると、価格的に高いと思っていたマツダ2が実はそうでもなくて、要は今Bセグメントのクルマを買おうとすると、乗り出し300万円は決して高い数字ではないということを痛感させられた。改めて自動車の値段が高くなった感じざるを得ない。

少し立派になった顔つき

マツダ2 15Sプロアクティブ Sパッケージ(AWD)マツダ2 15Sプロアクティブ Sパッケージ(AWD)
今回試乗したマツダ2は、1.5リットルガソリンエンジン搭載。グレード的にも中間ランクの「15Sプロアクティブ」である。試乗車はこれの4WDで「Sパッケージ」というパッケージオプションの付いた車両。車両本体価格は216万7000円、オプション価格が29万7000円とマツダの広報車としてはてんこ盛りのため、合計価格が246万4000円(税込)となる。

乗り出し価格的におおよそ20万円程度の諸費用をのせても300万円には届かないから、最近のBセグメント車両としてはリーズナブルだし費用対効果的にも合格点なのだが、前述したようにライバル車の出来が良いためにライバルと伍(ご)していくのは少々きつい。

以前、見た目にデミオと大きく変わらないと指摘したが、正面から見たその顔つきは堂々としたもので、大型化したグリルのせいで少し立派になった印象がある。ただ、一方でマツダのこの顔を見飽きたという人もたくさんいるようだ。

しかし、マツダというメーカーがそのアイデンティティーを確立する上では、すべてのラインナップに同じような顔つきを持たせるという手法は正しいと思う。それはメルセデスだってBMWだって同じ。年間1000万台を販売するVWだって同じような手法を取る。そうしないのは日本のメーカーだけだが、最近は日産でもヨーロッパの手法を取り入れたデザインランゲージを用いているので、こうしたデザインランゲージの統一は日本でも定着しそうな気がするし、それは良いことだと思う。

乗り心地と車両バランスに優れた4WD

マツダ2 15Sプロアクティブ Sパッケージ(AWD)マツダ2 15Sプロアクティブ Sパッケージ(AWD)
今回15Sの4WD車に試乗して特に感じたことは、乗り心地のしっとり感である。デミオの時代はどれをとっても独特な突き上げ感があって、当時のレベルでは十分に満足いくレベルだったかもしれないが、次から次へと強力なライバルが登場する今にあっては満足するレベルとは言えない。そこへ行くと今回のマツダ2はそのあたりが少しだけ改善されていると思う。

残念ながらFWD仕様に試乗していないため何とも言えないが、4WD車は車両全体の重量バランスに優れるのか、どっしり感が強い。ディーゼルでそれを感じられなかったのは、やはりフロントの軸にかかる重量がガソリン車より格段に重いから、セッティングを変えていることに起因するのではないだろうか。

とにかく今回のモデルの方がこと乗り心地と車両バランスでは優れていると感じられた。

6ATはメリットか、弱点か

マツダ2 15Sプロアクティブ Sパッケージ(AWD)マツダ2 15Sプロアクティブ Sパッケージ(AWD)
一方で、本来はメリットと言えるはずのところにもそれなりの弱点があるように思えた。

ライバルたちが皆CVTを用いているのに対し、マツダ2はステップATだ。本来ナチュラルな走りはステップATの方が、加速感とエンジン回転の上昇という部分でも親和性があって良いはずなのだが、一般道で乗る限りそのメリットはほとんど感じられない。基本的に最近は一般道における車速が低下しているように感じられ、滅多なことではアクセルをグイッと踏み込む機会が減っている。そんなわけだからCVTでもエンジンと車速の違和感を感じる状況がほとんど無いから、ステップATのメリットを見出せないということだろう。

それだけでなくマツダの場合ラインナップすべてでATは6速しかない。同じBセグメントの某輸入車メーカーのモデルには8速ATが付く。これと乗り比べるとやはり不必要な場面でエンジンが唸ることがわかった。どうも2速と3速が離れているためらしい。ちょっとした丘を駆け上がるような状況で、そこがワインディングだと2速ホールドで引っ張り上げるからエンジンが唸るのである。

クルマの出来は細かいところに気を配った大人の感性を感じさせる。それにスタイリングは今もとてもバランスが良く好感が持てる。これで価格を維持して新鮮味が出せればライバルに伍していけるのだと思うが、それはフルモデルチェンジを待つしかないのだろうか。

マツダ2 15Sプロアクティブ Sパッケージ(AWD)マツダ2 15Sプロアクティブ Sパッケージ(AWD)

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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