アウディ(Audi)は9月7日、大気中のCO2を直接回収して、石に変えて貯蔵する世界最大の施設の建設プロジェクトに参画していると発表した。
アウディは、スイスの環境スタートアップ企業のクライムワークス社と提携し、プロジェクトを結成して、この未来のテクノロジーを推進している。この施設は、年間4000トンのCO2を大気からろ過し、地下に送り込んで鉱化する。これにより、アウディはクライムワークス社を通して、大気から1000トンのCO2を除去することになるという。
地下にCO2を貯蔵する方法が、ダイレクトエアキャプチャー技術だ。これは、周囲の大気からCO2を抽出し、CO2を含まない空気を大気に戻す技術。アイスランドにあるクライムワークス社の新しい施設は、空気からろ過されたCO2を地下に送り込み、そこで自然のプロセスによって鉱化させる。そのため、CO2は大気から永久に除去されるという。
この施設では、まず周囲の空気を吸引し、フィルターが設置された「CO2コレクター」と呼ばれる装置に送り込む。そこでは、特別に開発された吸着剤を使用して、空気中のCO2をフィルターに吸着させる。フィルターがCO2で飽和状態になると、近くの地熱プラントからの廃熱を使用して100度に加熱し、回収したCO2分子を放出させる。
アウディが参画している大気中のCO2を石に変えて貯蔵するプロジェクト次に、アイスランドで最大規模の地熱発電所のヘトリスヘイジ発電所から施設に流れてくる水を利用して、CO2を地表から約2000mの地下に送り込む。CO2分子は玄武岩と自然の鉱化作用によって反応し、数年かけて炭酸塩に変換されるため、CO2は永久に地下に貯蔵されることになる。利用した水は、地熱発電所のサイクルに戻される。この施設は、24時間365日稼働し、年間4000トンのCO2を大気からろ過する。クレジット制度により、その4分の1がアウディに付与される。自然界でその量のCO2を化学反応させるには、8万本の木が必要になるという。
アウディがこのプロジェクトに取り組む理由について、アウディのサステナブルプロダクトコンセプト責任者、ハーゲン・ザイフェルト氏は、「科学的な観点から見て、大気からCO2を吸着することは、車両や工場のCO2排出量削減とともに、グループの気候目標を達成するための重要な対策となっている。クライムワークス社のCO2回収プロジェクトへの参画を通じて、脱炭素化に貢献していく」と語る。
アウディが属するフォルクスワーゲングループは、2025年までにバリューチェーン全体で、自動車および小型商用車の環境フットプリントを、2015年と比較して30%削減することを目指している。そのためアウディは、2050年までにあらゆる面で完全にCO2ニュートラルな企業になるという目標を掲げている。