【ダンロップ ウインターマックス03 試乗】今、スタッドレスタイヤに「氷上性能」が求められている理由…木下隆之

ダンロップ ウインターマックス03
ダンロップ ウインターマックス03全 16 枚

スタッドレスの進化が止まらない。クルマを構成するパーツの中で、もっとも進化の歩みが早いのがスタッドレスタイヤではないかと想像する。

過去のスノーライフを思い起こしてほしい。雪道に差し掛かれタイヤチェーンを巻き、そろそろと亀のような低速で走らねばならなかったあの頃を回想すると、隔世の感がある。いまでは、よほどの豪雪路でないかぎり、スタックして立ち往生することは稀だ。

特に最近、スタッドレスタイヤに求められる性能は、氷上をターゲットにされることが多い。というのは、雪路での性能が飛躍的に高まったことで、残された課題が氷上性能とされているからだ。

幹線道路の信号停止は厄介な課題である。多くのクルマが赤信号で停止する。そこから加速する。そのたびにタイヤが路面を磨く。スケートリンクのようなミラーバーンが出現する。雪路性能が整ったいま、残された障害はミラーバーンでのグリップ性能、つまり高い氷上性能が期待されているというわけである。

アイスバーンでの性能に特化したウインターマックス03

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ダンロップが発表した『ウインターマックス03』もまさに、ミラーバーンでの吸着性能を主眼に開発されている。雪路やウエット路面でのクリップ性能を『ウインターマックス02』と同等レベルとしながらも、アイスバーンでの性能に特化させているのだ。資料によると、タイヤライフやドライ性能を低下させても氷上性能に拘ったという潔さである。

技術的なハイライトは、除水の早さだという。特許出願中の「ナノ凹凸ゴム」が、素早くアイスバーンに食い込むのだ。ミクロの世界で覗いてみると、ゴムが激しく凹凸しているという。それがアイスバーン上の水膜を切り裂き、ゴムと氷を密着させるのである。

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氷上でなぜタイヤが滑るのか? 氷の表面に浮いている水の膜がタイヤを浮き上がらせてしまう。それが氷上でタイヤがスリップする原理である。一般的にゴムが氷に接していると想像以上にグリップする。そのグリップ点に素早く到達させるのが「ナノ凹凸ゴム」なのである。除水能力の高さだけではなく、除水するスピードが早いのだ。

02との違いは旋回性能にあり

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実際にドライブしてみると、特にコーナリング性能に「ウインターマックス02」との違いが確認できた。試乗コースは、スケートリンクである。

ブレーキ性能の違いは体感できなかったが、旋回性能は格段に差が現れた。ステアリングを切り込み、スリップアングルの限界を超えそうになっても、まだフロントタイヤはグリップを見放さなかった。これが例えばミラーバーンに磨かれた交差点であったのなら、対向車線にはみ出る危険性も低いだろう。安心してカーブを曲がれるのである。

さらに言えば、氷上性能が長持ちするのも特徴だ。ゴムの中に「マックスグリップトリガー」と呼ばれる固形物が配合されている。タイヤが減ればそれが表面に露出する。すると同時にそれが水に反応して溶け出す。常に新しい溝が現れるという仕掛けだ。

冒頭で紹介したように、格段に性能が進化したスタッドレスタイヤに、いま期待されるのは高い氷上性能である。その性能をとぎすませた「ウインターマックス03」を履いて早くスノーロードに行くたくなった。冬が待ち遠しい。

モータージャーナリスト 木下隆之 氏モータージャーナリスト 木下隆之 氏

木下隆之| モータージャーナリスト
プロレーシングドライバーにして、大のクルマ好き。全日本GT選手権を始め、海外のレースでも大活躍。一方でカー・オブ・ザ・イヤー選考委員歴は長い。『ジェイズな奴ら』を上梓するなど、作家の肩書きも。

《木下隆之》

木下隆之

学生時代からモータースポーツをはじめ、出版社・編集部勤務を経て独立。クルマ好きの感動、思いを読者に伝えようとする。短編小説『ジェイズな奴ら』も上梓。日本・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。「心躍るモデルに高得点を与えるつもり」。海外レース経験も豊富で、ライフワークとしているニュルブルクリンク24時間レースにおいては、日本人最高位(総合5位)と最多出場記録を更新中。

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