京セラのコンセプトカー『モアイ』…死角の“見える化”を実現する光学迷彩技術

京セラがコンセプトカーとして新たに発表した「モアイ」。
京セラがコンセプトカーとして新たに発表した「モアイ」。全 13 枚

京セラは9月29日、独自デバイスを数多く搭載したコンセプトカーの第二弾として新たに「Moeye(モアイ)」を発表し、京セラ本社に隣接する京都府総合見本市会館「京都パルスプラザ」で説明会を開催した。

驚きと快適をもたらす未来のコックピットを具現化

光学迷彩技術を用いてコクピットをシースルー化するようにしてドライバーを視野を拡大できる。光学迷彩技術を用いてコクピットをシースルー化するようにしてドライバーを視野を拡大できる。

Moeyeは、自動運転化やMaaS(Mobility as a Service)の普及が進んでいく中で、車室内空間の重要性に着目して開発されたものだ。開発の目標となったのは「驚きと快適をもたらす未来のコクピット」である。想定するのは完全自動運転が実現した未来で、そんな時代の中で、人とモビリティの新たな関係性を探るコンセプトカーとしてMoeyeは誕生したというわけだ。

説明会では、京セラの執行役員上席 研究開発本部長 稲垣正祥氏が登壇してMoeyeの開発コンセプトを紹介した。その中では業界で注目されているCASEを採り上げる一方で、クルマを単なる移動する箱として捉えるのではなく、「人間の五感の中から味覚を除いた“視覚”“触覚”“聴覚”“嗅覚”の4つの感覚で楽しめる移動空間を提案することを目的にMoeyeを開発した」と話す。ではその内容はどんなものなのか。

前方を撮影するために装備されたカメラは前方に6つある。前方を撮影するために装備されたカメラは前方に6つある。

まず「視角」では4つの技術が投入された。京セラ独自の技術として採用されたのは3つ。「空中ディスプレイ」は、ヘッドアップディスプレイのようにフロントウインドウにオリジナルキャラ“モビすけ”が浮かび上がって表示されるというもの。ナビゲーション案内などを通してドライバーと様々なやり取りを行う。「LED照明 CERAPHIC(セラフィック)」は自然光に近い、生体に優しい光を作り出す独自のLED照明で、朝夕の自然光を自由に変調し車室内を演出する。京セラ製京都オパールをドアの内面に、人工オパールをセンターコンソールに装飾したのも見逃せない。

死角となる部分をシースルー化する光学迷彩技術を採用

ヘッドライトのヨコにもカメラが備えられた。ヘッドライトのヨコにもカメラが備えられた。

象徴的なのが独自の光学迷彩技術を用いてコクピットの一部を透明化してドライバーの視野を拡大する技術で、東京大学 先端科学技術研究センターの稲見昌彦教授と協働して実現した。カメラと液晶プロジェクターを組み合わせ、本来なら死角となる部分をダッシュボードに投影して“見える化”することでドライバーの安全運転を支援する。

この効果は、たとえばMoeyeはノーズの先端が盛り上がっているが、それで陰となる部分も、まるで透けて見えているかのようにその先の風景が映し出されている。投影された映像は3D化されており、実際に風景と違和感なくつながっているのも注目点だ。

光学迷彩技術によるデモ。光学迷彩技術によるデモ。

「触覚」にはHAPTIVITY(ハプティビティ)が使われた。パネルを指でタッチした際に感圧で微細な振動を発生させる技術で、インパネとセンターコンソールに搭載した。「聴覚」にはピエゾ素子を用いた振動スピーカーを搭載。薄型である特徴を活かし、ダッシュボードやヘッドレストにも内蔵することで一体感のあるサウンドを提供する。いずれも京セラ独自の技術として紹介されている。また、「嗅覚」として搭載された技術が「アロマ芳香器」だ。車室内に5種類の豊かな香り・匂いを噴射させ、気分に応じて香りを選び楽しむ快適空間を演出するという。

Moeyeは完全オリジナルデザインとして製作されているが、最初に作り上げたコンセプトカーとは違って走行のためのパワーユニットは搭載していない。ただ、イメージとしては自動運転を実現したEVを想定して作り上げたという。つまり、CASE時代になっても「こんなクルマがあったら面白いんじゃないか?」Moeyeにはそんな想いが込められているのだ。

「モアイ」に搭載された技術。「モアイ」に搭載された技術。

《会田肇》

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