大丸有版スマートシティとMaaSは他のエリマネ団体に横展開できるように…大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会 黒田和孝氏[インタビュー]

大丸有版スマートシティとMaaSは他のエリマネ団体に横展開できるように…大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会 黒田和孝氏[インタビュー]
大丸有版スマートシティとMaaSは他のエリマネ団体に横展開できるように…大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会 黒田和孝氏[インタビュー]全 1 枚

大手町・丸の内・有楽町地区スマートシティプロジェクトについて大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会(大丸有まちづくり協議会)スマートシティ推進委員会委員長代理の黒田和孝氏に聞いた。

黒田氏は、10月27日に開催するオンラインセミナー大手町・丸の内・有楽町と豊洲のスマートシティ~に登壇しプロジェクトについて詳説する予定だ。

ビジョンオリエンティッドで進める

---:大丸有まちづくり協議会は以前からスマートシティに取組まれていますね。

黒田氏:大丸有地区は、東京駅と皇居の間に位置し、120ヘクタールの区域に約28万人・4300社ほどの企業が集積しています。大丸有まちづくり協議会は、区域内の地権者を中心に行政なども加わって、1988年より30年余にわたり官民連携でまちづくりに取り組んで来たエリアマネジメント団体です。

大丸有まちづくり協議会活動の大きな柱のひとつとして、まちづくりの将来像を東京都、千代田区、JR東日本と協働で策定している「大丸有まちづくりガイドライン」の存在があります。社会環境の変化等に合わせ、現在まで複数回の改訂を行っていますが、「スマートシティ化」もガイドラインで定めたまちづくりの考え方、すなわちビジョンオリエンティッドで進めています。

「ユースケース」を考え、小さくはじめる

---:近年のスマートシティとは、都市とデジタルの融合ともいわれます。大丸有でも地理空間情報、人流、交通、環境、行政情報など様々なデータを収集し利活用を実現する統合データ基盤や都市OS、バーチャル空間でのデータ可視化やシミュレーションを可能にする機能の構築などを目指されていますが、大丸有の特徴は何だと思われますか。

黒田氏:スマートシティ化によって解決・改善すべき課題をもとに「ユースケース」を設定し、それを実現する為に必要なデータは何であるか、というアプローチ方法をとっていることだと思います。データの可視化や分析、シミュレーションをしていくなかで、必要なデータや機能を加えていく考え方です。併せて、地区内の事業者の方々をはじめとして様々なサービスを創発するように、都市OSもオープンなシステムやリソースを出来るだけ活用して、柔軟性のあるものにしたいと考えています。

大丸有にはMaaSが欠かせない

黒田氏:「ユースケース」を設定するにあたっては、日常と非日常、ポテンシャルの向上とレジリエンスの増強という二つの軸を設定して4象限に分けて考えています。これによって導き出されるユースケースは大丸有では移動、モビリティが関わることにより課題解決が図られることが多いため、大丸有版MaaSにも取組んでいます。

---:巡回バスの運行、自動運転やパーソナルモビリティなどの実証実験なども数多く実施されていますね。2020年度後半の取組みは。

黒田氏:MaaSに関しては、公共交通機関の方々や、モビリティ関連ベンチャー企業の方々とワーキングを組成し、検討を進めています。また、新事業特例制度を活用し、普通自転車専用通行帯も含めて走行可能な状態で電動キックボードの走行の実証実験を秋から始め、年が明けてからは自動運転バスの実証実験を予定しています。これらのモビリティは将来的に既存交通機関と連携することによって、駅から地区内の目的地まで移動の選択肢を増やしたり、移動をよりスムーズに行えるようになって、街の活発化に繋がると期待しています。

まちの将来イメージをパースで提示して「リ・デザイン」を進める

---スマートシティ実現へのロードマップは何年先を見据えて作られていますか。自動車業界と違い、スパンが違うように感じます。数多くの実証実験を行われていますが、まだまだ実装したものは少ないように思います。また新型コロナウイルスの影響はどのように捉えていますか。

黒田氏:全体のロードマップは約20年で設定しています。先ずデータ利活用の基盤等については、2023年に概ね実装、2025年に定常稼働を目指し、一方「リ・デザイン」については、2040年頃の実現を目指しています。大丸有は既成市街地であり急に変わるものではありませんし、協議会の会員はもとより、街に関わる様々なステークホルダーの方々との議論を通じてビジョンを理解していただき、共に変えていく必要があります。そのため、議論のたたき台として、現状で考えられるアイディアを描きこんだパースを作成して将来イメージを提示しています。
実証実験については、おっしゃる通り実装に至っていないものもあります。これにはそれぞれ事情があるのですが、新たな技術やサービスの普及には、技術面や法律面の問題に加えて社会的受容性の問題があります。私たちは実験を積み重ねることで、大丸有を「リビングラボ」として機能させ、人々がこれらに慣れていただくことが大切だと考えています。その結果として、街が活性化され、描くビジョンへ近づいていきたいと思っています。

新型コロナウイルスの影響はまだ先が見えていませんので、ロードマップを現時点で見直すことはしていません。しかし、コロナ対策としてオンライン会議が推奨されたり、デジタル庁が設置されるといった新たな動きや変化は始まっています。社会のデジタル化は確実にスピードアップしていくのではないでしょうか。

他のエリマネ団体も適用可能なスマートシティモデルへ

---:エリアマネジメント団体は全国にありますが、誘客のイベント開催が中心になっているところが多いようで、大丸有のようにエリア全体でスマートシティに取組む事例は少ないと感じます。

黒田氏:スマートシティはそれ自体が目的ではなく、課題解決の手段であるといわれています。ですから街によって個々に課題が設定され、それを解決する仕組みとしての汎用性を持たせるよう意識しています。今後、さまざまな形で街のスマートシティ化は進んでいくと思いますが、大丸有の取り組みがひとつのモデルとなって各地と連携していければ良いと考えています。

黒田氏が登壇するオンラインセミナー大手町・丸の内・有楽町と豊洲のスマートシティ~は10月27日開催。

《楠田悦子》

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