ゴードン・マレーの700馬力軽量スーパーカー、『T.50』…ダリオ・フランキッティが開発に参画

伝説のF1マシンの「ファン」技術を採用

986kgの軽量ボディ

自然吸気のV12エンジンに48Vマイルドハイブリッド

ダリオ・フランキッティ氏がダイナミクス面を中心に開発の重要な役割を担う

ゴードン・マレーとダリオ・フランキッティ
ゴードン・マレーとダリオ・フランキッティ全 26 枚

デザイナーのゴードン・マレー氏が率いるゴードン・マレー・オートモーティブは10月9日、2022年に限定100台を発売する予定の新型スーパーカーの『T.50』の開発に、「インディ500」を3回制したダリオ・フランキッティ氏が参画すると発表した。

伝説のF1マシンの「ファン」技術を採用

T.50は、ゴードン・マレー・オートモーティブの第1号車となる新型スーパーカーだ。車名の「50」とは、ゴードン・マレー氏の自動車デザイン、エンジニアリング、モータースポーツにおけるキャリアが50周年を迎えたことを意味している。

T.50では、先進的なエアロダイナミクス技術を採用する。そのひとつの例が、車体後部に装着される直径400mmの「ファン」だ。これは、ゴードン・マレー氏が、かつて設計したF1マシン、ブラバム「BT46B」(通称:ファンカー)のアイデアだ。

大型のファンを回転させることにより、フロア下の空気を強制的に後方へ吸い出し、強力なダウンフォースを生み出す。1978年のF1スウェーデンGPに初投入されたブラバムBT46Bは、ニキ・ラウダが操り、いきなりの優勝を成し遂げた。しかし、ブラバムBT46Bは、この優勝限りでF1参戦を終了し、伝説のF1マシンの1台となった。ゴードン・マレー・オートモーティブ T.50ゴードン・マレー・オートモーティブ T.50

T.50のファンは、可変式の車体下部ダクトとリアウイングを組み合わせることにより、6つの異なるエアロモードが切り替わる。通常走行の「オートモード」では、速度とドライバーの操作に応じて、リアウイング、ファン、アンダーボディディフューザーを最適化する。高レベルの減速が必要な場合、「ブレーキモード」に切り替わり、リアウイングを自動的に展開し、ファンを高速回転させる。これにより、ダウンフォースが2倍になり、安定性とグリップを向上させる。ファンは最高7000rpmで回転する。

他の4つのエアロモードは、ドライバーが選択可能だ。 「ハイダウンフォースモード」はトラクションを強化する。ファンとウイングが連携してダウンフォースを30%増加させる。「流線型モード」では、抗力を10%削減し、直線での速度を向上させると同時に、燃費とダウンフォースを抑える。このモードでは、アンダーボディダクトが閉じられ、ファンが高速で作動する。「仮想ロングテール」状態を作り出すという。

986kgの軽量ボディ

T.50のボディサイズは全長4352mm、全幅1850mm、全高1164mm、ホイールベース2700mm。ポルシェ『911』よりも小さい2ドアのグランドツアラースーパーカーになる。ゴードン・マレー氏がデザインを手がけ、1992年に発表されたマクラーレ『F1』同様、運転席と、そのやや後方に2座席を設置する3シートレイアウトを採用する。ゴードン・マレー・オートモーティブ T.50ゴードン・マレー・オートモーティブ T.50

T.50には、独自設計のカーボンファイバー製モノコックを採用する。ボディパネルもカーボンファイバー製だ。ブレーキもカーボンセラミックとした。すべての部品の重量を最小限に抑えることに重点を置いた軽量化戦略によって、車両重量は1トンを下回り、986kg(乾燥重量は957kg)に抑えられる。

この軽量化に貢献しているのが、フルカーボンファイバー製のモノコックとボディパネルで、合計重量は150kg以下。インテリアでは、3つのバケットシートにもカーボンファイバーを使用した。

また、トランスミッションの重量は80.5kgと軽量。ガラスは他のスーパーカーよりも薄い設計とした。3.9リットルV型12気筒ガソリンエンジンの重量は178kg。これにより、マクラーレンF1のBMW 製V12に比べて、およそ60kgの軽量化を達成している。ゴードン・マレー・オートモーティブ T.50ゴードン・マレー・オートモーティブ T.50

自然吸気のV12エンジンに48Vマイルドハイブリッド

T.50のミッドシップに搭載されるのは、コスワースと共同開発された排気量3.9リットル(3980cc)のV型12気筒ガソリン自然吸気エンジン「GMA」だ。最大出力は663ps/11500rpm、最大トルクは47.6kgm/9000rpmを引き出す。

このV12は、1万2100rpmまで回る高回転域志向のエンジンであると同時に、最大トルクの71%は、2500rpmから得られる柔軟性を持つ。トランスミッションは、英国のXtrac製の6速MTを組み合わせる。シフトは「Hパターン」。多くのスーパーカーが採用するデュアルクラッチは、あえて採用していないという。

「Vmaxモード」では、最大出力は700psに引き上げられる。T.50には「ISG」(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)と呼ばれる48Vのマイルドハイブリッドシステムが搭載される。Vmaxブーストモードは、48Vのスタータージェネレーターからの電力により、最大3分間、追加ブーストが得られるモードだ。ゴードン・マレー・オートモーティブ T.50ゴードン・マレー・オートモーティブ T.50

ダリオ・フランキッティ氏がダイナミクス面を中心に開発の重要な役割を担う

このT.50の開発に、ダリオ・フランキッティ氏が参画する。ダリオ・フランキッティ氏は、スコットランド出身のレーシングドライバーだ。「インディカー・シリーズ」において、3年連続を含めて4回のシリーズチャンピオンに輝いた。インディ500では、3回の優勝を果たしている。2013年に、現役レーシングドライバーを引退した。

ダリオ・フランキッティ氏は、ゴードン・マレー・オートモーティブと協力して、T.50のダイナミクス面を中心に、開発の重要な役割を担うことになるという。ダリオ・フランキッティ氏の力を借りて、ゴードン・マレー・ブランドを確立することを目指す。また、ダリオ・フランキッティ氏が、将来のすべての製品決定に関与し、助言を行う。

ダリオ・フランキッティ氏は、「情熱的なロードカーファンとして、T.50の開発に携わるのはエキサイティングであり、T.50は信じられないレベルの車になるだろう。エンジニアとしても友人としても、常に尊敬してきたゴードン・マレーと仕事をし、そこから学ぶことも夢の実現だ。ゴードンと彼の素晴らしいチームと、緊密に協力することを楽しみにしている」と語った。

なお、T.50の価格は、税抜きで236万ポンド(約3億3250万円)。2022年1月から、限定100台を生産する計画だ。この100台は、8月4日の発表から48時間で完売している。

《森脇稔》

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