【三菱 エクリプスクロス PHEV 新型試乗】アウトランダーPHEVと比較して見えた「持ち味」とは…御堀直嗣

三菱 エクリプスクロス 改良新型のPHEVモデル
三菱 エクリプスクロス 改良新型のPHEVモデル全 28 枚

三菱自動車工業のSUV(スポーツ多目的車)である『エクリプスクロス』が改良を受け、新たにプラグインハイブリッド車(PHEV)が車種追加された。そのPHEVを、富士スピードウェイのショートコースで短時間体験することができた。

目玉はより洗練された内外装とPHEVの追加

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新しいエクリプスクロスの特徴は、より洗練された内外装/PHEVの追加/安心して楽しめる運転感覚の3つが柱となる。

外観については、前後のオーバーハングを140mm延長し、より伸びやかで精悍な見栄えとなった。またPHEVでは、フロントドアとリヤゲートにバッジが付く。室内は、座席が変わり、スエード調素材と合成皮革を組み合わせたコンビネーションシートと、本革シートが新しい。本革シートには、ブラックとライトグレーの選択肢がある。

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ほかに、8インチのカーナビゲーション画面や、PHEVにはコンビネーションメーターやシフトレバーが新しく装備される。

PHEVの走行性能では、ツインモーターによる四輪駆動とS-AWCの組み合わせで、あらゆる路面に対し優れた操縦性と走行安定性をもたらすとしている。そして30~50km/hのアクセル全開による追い越し加速で、PHEVは1.5リットルのガソリンエンジン車に比べ短時間での到達性能を得ているという。

「ターマック」モードで激変するPHEVの走り

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富士スピードウェイのショートコースには、途中にパイロンスラロームが設定され、ハンドル操作の切り返しでのS-AWCの働きなども体感できるように準備されていた。

走行モードは、ノーマル/スノー/グラベル/ターマック(エンジン車にはない)があり、まずノーマルで走行をはじめた。PHEVとなることで、前後輪のモーターや、リチウムイオンバッテリーの搭載による重量増となり、その重さが重厚な乗り心地を覚えさせた。

1.5リットルのガソリンエンジン車にかつて試乗した際は、軽快で俊敏な運転感覚により、SUVといえどもハッチバック車のような壮快さが印象的だったが、PHEVはより上級車種の趣である。またモーター走行により、滑らかな加速と静かな室内であることにより、エンジン車とは違った魅力を備えたと感じる。エクリプスクロスという一台のクルマに、二通りの持ち味を得たといえるだろう。

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次に、乾燥舗装路用のターマックモードに切り替えてみる。すると、アクセルペダルの操作に対して応答が早まり、わずかなペダルの踏み込み加減で加減速の様子が変わり、より勢いのよい手応えとなる。運転に集中し、速度を微妙に調整しながら操作する面白さが高まった。

加えて、駆動力と旋回の制御がより高められ、ことにスラロームのように左右へハンドルを切り返しながら急カーブを曲がり、加減速も素早く調整するような場面で、エンジン車で体感したような俊敏さが出てきたのであった。電動化による重量増により、重厚な乗り味に感じたPHEVから、重量感が消えていくように壮快な走りになった。

その際、タイヤ接地面が適正に路面と接しているという手ごたえも確かにある。三菱自の開発陣によれば、車体剛性が高まり、サスペンションが適正に働いて確かなグリップ感覚が得られているとの説明だ。このタイヤ接地面の手ごたえは、減速時のブレーキへの信頼とともに、今回体験することのできなかった滑りやすい路面での安心にもつながるはずだ。

アウトランダーPHEVとの比較で見えた、エクリプスクロスPHEVの持ち味

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今回は、アウトランダーPHEVも同じ条件で比較走行することができ、これによって、エクリプスクロスPHEVの特徴がいっそう明らかに実感できた。

アウトランダーPHEVは、車体寸法がより大きく、ゆったりとした乗り味に高級さがある。一方、ショートサーキットのようなコースを走行すると、慣性力が残り、スラロームのような切り返しや、急なカーブでロールも大きくもたつく印象がある。また、タイヤも接地面の外側のヘリで踏ん張っている感触だ。

しかしそれが悪いとか、性能が低いということではなく、本来アウトランダーというSUVが、サーキット走行を前提としていない車種であるということであり、長距離移動などSUVに求められる目的においては、落ち着きがあり疲れにくく、快適な乗り味が喜ばれるはずだ。

三菱 アウトランダーPHEV三菱 アウトランダーPHEV
エクリプスクロスPHEVも、同じようにSUVとしての積載性や長距離移動という目的も求められるだろうが、アウトランダーPHEVに比べると、より日常的な移動でも手軽に走り回れることを期待されるのではないか。そのためのコンパクトSUVということだろう。いわばハッチバック車のような使い勝手が、エクリプスクロスPHEVの持ち味になってくる。

そのうえで、単に俊敏で壮快な走行感覚だけでなく、PHEVとなることによる重厚さや、静粛性が、一層快適な移動空間をもたらす。一台で、二色の特徴を味わえるというわけだ。

「選択と集中」の三菱、車種構成に魅力

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アウトランダーとエクリプスクロスの選択肢があり、同じSUVといえどもそれぞれに持ち味があるとともに、エクリプスクロスではエンジン車とPHEVでそれぞれに趣もある。三菱は、電動車両とSUVという2本の商品構成を柱とするが、そのなかにさらに多彩な魅力を提供する車種構成となっていることを知ることができた。

選択と集中を進める三菱だが、そのなかにもクルマ選びの面白さが残されている。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

御堀直嗣|フリーランス・ライター
玉川大学工学部卒業。1988~89年FL500参戦。90~91年FJ1600参戦(優勝1回)。94年からフリーランスライターとなる。著書は、『知らなきゃヤバイ!電気自動車は市場をつくれるか』『ハイブリッドカーのしくみがよくわかる本』『電気自動車は日本を救う』『クルマはなぜ走るのか』『電気自動車が加速する!』『クルマ創りの挑戦者たち』『メルセデスの魂』『未来カー・新型プリウス』『高性能タイヤ理論』『図解エコフレンドリーカー』『燃料電池のすべてが面白いほどわかる本』『ホンダトップトークス』『快走・電気自動車レーシング』『タイヤの科学』『ホンダF1エンジン・究極を目指して』『ポルシェへの頂上作戦・高性能タイヤ開発ストーリー』など20冊。

《御堀直嗣》

御堀直嗣

御堀直嗣|フリーランス・ライター 玉川大学工学部卒業。1988~89年FL500参戦。90~91年FJ1600参戦(優勝1回)。94年からフリーランスライターとなる。著書は、『知らなきゃヤバイ!電気自動車は市場をつくれるか』『ハイブリッドカーのしくみがよくわかる本』『電気自動車は日本を救う』『クルマはなぜ走るのか』『電気自動車が加速する!』『クルマ創りの挑戦者たち』『メルセデスの魂』『未来カー・新型プリウス』『高性能タイヤ理論』『図解エコフレンドリーカー』『燃料電池のすべてが面白いほどわかる本』『ホンダトップトークス』『快走・電気自動車レーシング』『タイヤの科学』『ホンダF1エンジン・究極を目指して』『ポルシェへの頂上作戦・高性能タイヤ開発ストーリー』など20冊。

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