[フロントスピーカー、どう鳴らす?]3ウェイを実行するとき

「3ウェイ」スピーカーの一例(フォーカル)。
「3ウェイ」スピーカーの一例(フォーカル)。全 2 枚

フロントスピーカーの“鳴らし方”を研究してきた当特集。今回はその最終回をお贈りする。テーマは「3ウェイ」。今使っている「2ウェイ」スピーカーを「3ウェイ化」することで得られる利点からその実践方法までを、じっくりと解説していく。

「3ウェイ化」を実行すると、情報量がアップする!?

「3ウェイ」スピーカーの一例(DLS)。「3ウェイ」スピーカーの一例(DLS)。

最初に、「3ウェイ」のメリットとデメリットの両方を説明していく。まずメリットは、「情報量が増えること」。これが最大の利点だ。

情報量が増える理由はさまざまある。中域再生のスペシャリストである「スコーカー(ミッドレンジ)」を加えることにより効率的な中域再生が可能となり、またツイーターとミッドウーファー(特にミッドウーファー)の担当帯域を減らせるのでそれぞれが自分の得意な仕事だけに専念できる。ゆえにツイーターとミッドウーファーの仕事のクオリティも上がってくる。

また、中域の出どころを比較的に高い位置に持って来られることも、情報量のアップに好影響を及ぼす。「2ウェイ」の場合は中域の音が足元のミッドウーファーから聴こえてくるが、「3ウェイ」ではスコーカーをAピラー等に取り付けられるので、中域を正対もしくはそれに近い状態のスピーカーから聴ける。結果、中域の音をロスなく感じ取れるようになる。

しかしながらデメリットもある。デメリットは主には2つある。1つが「コストが掛かること」、もう1つが「コントロールが難しくなること」だ。コストが掛かる要因は3つある。1つが「スコーカー代」、2つ目が「取り付け費用」、そして3つ目が「周辺ユニット代」だ。場合によっては、パワーアンプ等も買い足す必要性が生じてくるからだ。

そして、「コントロールが難しくなる」こともなかなかにやっかいだ。プロセッサーを用いる場合には、スピーカーユニットが増えることでケアしなくてはならない項目がぐっと増える。プロセッサーを用いない場合にも、取り付けにおいての物理的なチューニングが一層シビアになる。メリットを引き出しきるためには、相当な技術と経験が必要になってくる。

使用中の「2ウェイ」スピーカーと似たタイプのスコーカーを選ぶベシ!

続いては、「3ウェイ化」する方法について考えていく。まずは、スコーカーの選び方から考察する。

なお、今使っているスピーカーと同シリーズにスコーカーがラインナップしていれば、それを使うのが最善の策となる。しかし、同シリーズにスコーカーがラインナップしていない場合にはどうすれば良いのかと言うと…。

その場合には、同ブランドの別シリーズにスコーカーがラインナップしていないか確認しよう。そして、グレードが異なっていても単体で手に入れられるスコーカーがあればしめたものだ。それを使えばOKだ。同ブランドであれば音の傾向が大きく乖離するはずはなく、スコーカーだけがハイグレードモデルであったとしても問題はない。

または、他ブランドの製品を選んでも大丈夫だ。その場合は、できれば振動板素材の材質が近いものの中からチョイスするとベターだが、意外な組み合わせが良い結果をもたらすことも往々にして有り得る。ショップと良く相談して相性が良さそうなモデルを探してみよう。

さて、製品選びが済んだその先の工程においては、乗り越えるべきハードルがいくつか立ちはだかる。最初の壁となるのは、インストール作業だ。スコーカーは基本的には、どこかしらに埋め込み加工をして取り付けることになるので、手間とコストがそれなりに掛かってくる。

なお、ツイーターが既にドアミラー裏に埋め込まれている場合には、スコーカーをAピラーに取り付けるのがベターな作戦となる。また、ツイーターがAピラーに取り付けられている場合には、再びAピラーを作り直してそこにツイーターとスコーカーの両方を埋め込み直すのが順当な取り付け方法となる。

ちなみにスコーカーが割と小型でドアミラー裏に取り付けられるのであれば、そこも取り付け場所の候補に成り得る。とはいえ、ツイーターとスコーカーはAピラーに近接配置されることが多い。その方が、ある程度コントロールがしやすくなるからだ。

使用中のDSPが「3ウェイ」に対応していない場合には…。

次いでは、コントロールに関することを説明していく。現状、すでになんらかDSPを導入しているというのならそれを活用すれば良いのだが、それが「3ウェイ」に対応していない場合、または現状DSPを導入していない場合には、「3ウェイ」スピーカーをコントロールするための新たなDSP、もしくは「3ウェイ」用のパッシブクロスオーバーネットワークのどちらかを用意しなくてはならなくなる。

コストを低く抑えようと思ったら本来ならパッシブに分があるはずだが、使用しているスピーカーに専用の「3ウェイ」パッシブが用意されていない場合が少なくない。そうであるならばパッシブをワンオフすることとなり、案外コストが掛かってくる。であるならば「3ウェイ」をコントロールできるDSPを導入した方が話が早い、とも言える。

ところで「2ウェイ」をコントロール可能なDSPを使っているのなら、ツイーターとスコーカー間に「2ウェイ」用のパッシブを使うという手はなくはない。ツイーターとスコーカーとを1つのスピーカーとして扱うことにはなるが、一応のコントロールは可能となる。

ちなみに、使用中のメインユニットが三菱電機の『ダイヤトーンサウンドナビ』である場合には、ツイーターとスコーカー間にパッシブを使ったときでも、ツイーターとスコーカーの個別制御が可能となる。なぜなら『ダイヤトーンサウンドナビ』には「マルチウェイ・タイムアライメント」という機能が搭載されているからだ。つまり『ダイヤトーンサウンドナビ』ユーザーは、「3ウェイ化」が比較的にしやすい状況下にある。覚えておこう。

さて、当特集はこれにて終了とさせていただく。カーオーディオでは、スピーカーの「鳴らし方」を工夫することで、そのポテンシャルを一層引き出すことが可能となる。カーオーディオは奥が深い。いろいろと試行錯誤をしながら、理想のサウンドを追求しよう。そこにこそ楽しさの真髄がある。参考にしていただきたい。

フロントスピーカー、貴方ならどう鳴らす? 第10回「3ウェイ」を実行!

《太田祥三》

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