【竹岡圭の大きな夢を】第14回「サラリーマンでもラリージャパンに出たい!」木村悟士さん

木村悟士さんがJN-3でコドライバーとして走ったBRZ
木村悟士さんがJN-3でコドライバーとして走ったBRZ全 2 枚

木村悟士さんがモータースポーツに興味を持たれたのは、28年ほど前の高校1年生の時。「当時、クラブ活動でアマチュア無線をしていたのですが、何かの時に学校の正門に同級生のお兄さんがラリー車で現れて、それ見てすげぇなぁ~って思ったのが始まりです。車種はAE92(トヨタ カローラFX)でした」とのこと。

その翌年の高校2年生の夏休みに、ラリーをやっていた皆さんについて行って、練習会合宿。夜はテント張って皆でBBQ&キャンプしたりしたのを、いまでも楽しかった思い出として鮮明に覚えていらっしゃるんだそうです。

「私のナビゲーターの師匠が、当時はドライバーとしてアルトワークスで群馬戦に出ていたので、サービス会場へ行ったこともありました。当時はナイトラリーが主流でしたので、暗闇の広場に電気が灯され、こんな夜に走っている人がいるんだと驚きましたね」と、木村さん。そうそう! 私もナイトラリーのことを知った時は、ビックリしたのを覚えています。

コドライバーとして約18年、ドライバーとしての伝説も…?

そんな木村さんがモータースポーツを始めたのは、社会人になって半年後。「高校を卒業し就職し、社会人になって半年くらい経った時に、同級生のお兄さんから、ウチのクラブへ入ってみないか?と誘われて入りました。しばらくは、オフィシャルで勉強しなさいと師匠から言われ、3年くらいだったかな?オフィシャルに専念していました。その3年の間に、毎年群馬ではラリーセミナーというのがあって、先輩が借りてきたスバルヴィヴィオで、ナビとして模擬ラリーにも出ました。当時まだ19歳でしたので、申し込み時に親の親権者サインがないとダメでした(笑)。結果は確か、最小減点だったような気がします」と木村さん。この最小減点というのは、とてもよい成績ということなんです。

「当時はまだ今みたいなTC方式ではなく、ナビ区間とSS区間というのが合って、ナビもしっかり仕事しないと、勝敗に影響が出てしまうというルールでした。ちなみに、ナビ区間はゼロがいちばんいい点数になります。でもその時は、ルールがよく分からなくて、ただ隣に乗っていただけの感じで、先輩がドラゲーターとして頑張って、最小減点取得だったような気がします(笑)」。いやいや初ラリーでそれは立派! アベレージラリー等のいわゆるTC方式じゃないラリーは、計算式などもかなり難しいですからね。ちなみにデビュー戦は、JMRC埼群フレッシュマンシリーズ。ナビとして出場されて、デビューウィンされたそうですよ~。お見事!

ちなみにドライバーとして、競技車両を自分で保有したのは1台だけ(三菱 ミラージュ)という木村さん。「走ってもセンスがないなぁ~って思っていて、ちょうどそのころ結婚したということもあって、競技車を友人へ売り、ナビゲーターに専念しようと決心しました。ですので、ナビゲーター(コドライバー)歴の方がドライバー歴をとっくに超えていて、もう、18年くらいでしょうか」とのことですから、ずっとドライバーを速く走らせる役目を担ってこられたということですね。

でもドライバーとしての伝説も持っていらっしゃるそう。「競技車ではありませんでしたが、免許取った時に親に買ってもらった車(トヨタ ターセル)にラリコンつけて、ラリータイヤ履いて、赤いマッドフラップつけて、ダートラ場をアンダーガード無しで走ったら、みんなに怒られた…」という伝説は、木村さんが所属されるクラブの中では有名な話なんだそうですよ。

ナビゲーター(コドライバー)として、たくさんのクルマに乗ってこられたという木村さん。三菱 ランサー、ミラージュ、スバル インプレッサ(GC8、GDB、VAB)、ヴィヴィオ、BRZ、トヨタ ヴィッツ、アクア、スズキ スイフト、マツダ ロードスター等々と、サッと挙げていただいただけで、名前がズラリと並びます。

全日本ラリー選手権で2戦連続優勝の実績

2012年には、APRC ラリー北海道へ出場。このラリーは国際格式のラリーのため、年明け早々からインターライセンスを取るために、東日本選手権に竹内源樹選手とクルーを組んで出場したのが、現在コンビを組んでいらっしゃる竹内選手と接点を持った始まりなんだそうです。

「その時の彼のイメージは、とにかくいろいろ緻密に考えて走っているなぁ~、という感じでした。いま思えば、そこまで考えて走らないと全日本のトップクラスのドライバーなんて務まらないですよね。実は、2013年から2014年の6月まで、業務で海外赴任をしていて、帰国後、全日本ラリー選手権のモントレー大会のコドライバーとして、オープンクラスで出場。それがきっかけとなり、2014年、遅咲きながら全日本ラリー選手権に出場するようになりました。全日本ラリーへ出場するようになってから、今までの県戦、地区戦と同じ考えでは、全日本選手権は通用しないということがわかり、考えがガラッと変わりましたね」という木村さん。これが、竹内選手の考えがわかったと言われたポイントだったのかもしれませんね。

その竹内選手から2019年の11月頃、2020年のオファーをいただいたという木村さん。「竹内君はクスコレーシングで、当時のJN-6クラスで上位争いをしていたドライバーでした。もちろんJN-3クラスでもシリーズ優勝に絡むスキルを持ったドライバーですから、自分が彼をマネージメントすることができるのか?と不安がありました。引き受けようか断ろうか悩んでいた時、ある方へ相談したところ、逆に彼の胸を借り、勉強させてもらうつもりで務めみろ!と後押しされ、こんなチャンス今後絶対ないだろうと心を鼓舞して、決心しました」

「実質開幕戦となった2020年新城ラリーのレッキ中には、世界のトシ・アライ(新井敏弘)選手から「ちゃんとノート作れているのか?」と聞かれる始末でしたが…(笑)」とおっしゃいますが、今年の全日本ラリー選手権は10戦中6戦が中止。4戦での戦いとなりましたが、内2戦は優勝。しかも2戦連続優勝ですから、さすがです。

「この2戦連続優勝は、まわりからの反応がすごいですね。もちろん竹内君の走り、戦略が緻密にできているから勝てているのですが、モータースポーツ好きの会社の方もSNSなどで見てくださったりしているようで『すごいねぇ~、優勝したんじゃん!』って知らない人からも声をかけていただいたりと、とてもうれしい限りです。今年、私たちは残り1戦参戦予定です。今年の全日本選手権シリーズ表彰式は、コロナ禍の影響でみなさまの前での表彰式ではなくなってしまいましたが、シリーズ優勝を何としてでも取りたいと思っています。さらに、その先はまだわかりませんが、来年こそはラリージャパンが開催されると願って、機会があれば出てみたいですね。ですが、ほぼ1週間会社を休まないといけないので、サラリーマンという立場のツラさもあり、実現するかどうかはわかりませんが…(まぁ、まだオファーもありませんが…)」と、気合がみなぎっていらっしゃいます。

会社のコドライバーとしても活躍

そんな木村さんがモータースポーツ以外で興味があることは、スキューバダイビングと写真撮影、そしてプロ野球観戦なんだとか。「某都内の傘をフリフリするチームを、嫁にはめられて応援しています。私のラリー関係者のまわりにも、ファンの方がいるようで、緊急事態宣言の中でいつ始まるんだろうねぇ~なんていうコミュニケーション取りながら待っていました。あとは、かわいい私の姪っ子甥っ子と遊ぶこと。5人の姪っ子甥っ子のおじさんにとなり、いつか、この5人の中のひとりでもいいからラリーに興味持ってもらって、走ってくれるといいなぁ~って思っています」とのこと。

普段は会社員としてお勤めされている木村さん、ラリー以外でこれだけ趣味をこなされているのは(ご本人はラリーにどっぷりで、それ以外は広く浅くとおっしゃってますが)、かなり時間のやりくりがお上手なのでしょう。さすがはコドライバーさんです。

ちなみに木村さんのお仕事は「CD-Rを世界で初めて開発した企業にいます。基本的には縁の下の力持ち的な部品メーカーです。入社後、二十数年間、みなさまがお使いのあらゆる電子機器や車両に使われる電子部品の設計開発業務についていました。2年ほど前、部署異動し、いまはCSRとかBCPとか、作業現場の安全衛生の確保とか、ちょっとお堅い部署で業務しています。基本的に根が優しいので、まわりの皆さんとは仲良くお仕事させてもらっていますし、上司もクルマ好きなので、ラリーで休みますといっても理解いただいて、とても感謝しています」とのこと。

会社の労働組合の代表も担っていらっしゃるそうで、会社で働く仲間たちの代弁者となって日々奮闘されているそうですよ。皆さんの意見をきちんと聞いてまとめあげ導く、会社のコドライバーとしても活躍していらっしゃるご様子ですね。

竹内源樹選手(左)と木村悟士さん(右)竹内源樹選手(左)と木村悟士さん(右)

木村悟士さんにとってラリーとは
会社で、50代、60代位の先輩方にラリーって話すと、スゴイねぇ~って言っていただくことが多いです。昔、ラリー出ていた方が多いからなのでしょう。しかし、最近の20代、30代前半くらいの方に話をしても、なかなか興味がなさそうな感じです。そもそもクルマに興味がない人が多くなっているかなと。

日本とヨーロッパでがラリー認知度が違い、なかなか理解いただけないのかなと思っています。私は、群馬ラリーシリーズを開催している主催者クラブに所属しているので、主催準備をする際、沿道住民の方へ理解していただくための苦労も分かります。もっともっと皆さんに興味を持っていただくことができるように、私達が一生懸命アピールしていく必要があると常に思っています。

前述した通り、私が始めたころは、ナイトラリーが主流で、皆さんが寝ている間に走っていたということを思えば、いまは基本的に明るいうちにラリーが終わる。ある意味健全です。TOYOTA Gazoo Racing ラリーチャレンジなど、最低限の安全装備などを装着し、リーズナブルに出ることができますし、JMRC(JAF Motorsports Clubs Regional Conference)組織が各地にあり、全日本ラリー選手権で使用したことのある道も走ることができたりします。今年はコロナの影響であちこち大会が中止になってしまっていますが、来年開催されるようであれば、是非まずはラリーを見てみるところから、たくさんの方にラリーに触れていただきたいと思います。

木村悟士さんからのメッセージ
群馬では、世界のAraiと言われている新井敏弘選手を始めとして、全日本でトップを争える選手がたくさんいます。古い話をすると、群馬スペシャリスト(群スぺ)という言葉もあったこともあります。とてもラリーが盛んな県です。私の今年のテーマは、今年、参戦数は少ないもののシリーズ優勝を目指す。そんな密かな思いを持ちながら、来年、再来年とステップアップできるといいなと思っています。

《竹岡圭》

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