【ホンダ オデッセイ 改良新型】強さはあるがオラオラ系にはしない…デザイナー[インタビュー]

本田技術研究所デザインセンターオートモビルデザイン開発室デザインエクステリア担当の森岡圭介さん
本田技術研究所デザインセンターオートモビルデザイン開発室デザインエクステリア担当の森岡圭介さん全 11 枚

ホンダは5代目オデッセイとして2度目の改良を行った。特にデザインに関してはマイナーチェンジとしては大幅な変更だ。そこで、担当したエクステリアデザイナーに話を聞いてみた。

フードを70mm上げる

ホンダ・オデッセイ改良新型ホンダ・オデッセイ改良新型

まずは本田技術研究所デザインセンターオートモビルデザイン開発室デザインエクステリア担当の森岡圭介さんにデザインの概要を語ってもらおう。

「エクステリアデザインのコンセプトはスタイリッシュプレミアム。今回2回目のビッグマイナーということもあり、フロント周りやリア周りを大幅に変更した」という。その目的は車格を1段上げるためだ。特に、「厚みや強さを持たせるためにフードを70mm持ち上げることによって表現している」と説明し、フロントでは、フード、フェンダー、ヘッドライト、バンパー、グリルもそれに合わせて変更された。

ホンダ・オデッセイ改良新型ホンダ・オデッセイ改良新型

このフードに関して森岡さんは、「2回目のMMC(ホンダ流にいうマイナーモデルチェンジ)ということもあり、パッと見で変わったように見せたい。実は1回目の時はあまり変わっていないというコメントを営業マンからもらっていたので、まずはパッと見て変わって見えるように、デザイン優先でフードを持ち上げた」とコメント。

車格は上げる一方、「あくまでもディテールは大人の表情を残した」。そこで、「ワイド&シャープさを表現するために、メッキをあしらいながらも“ゴリッ”とした太いものではなく、ディテールまでデザインされたものを採用している」と述べる。

ホンダ・オデッセイ改良新型ホンダ・オデッセイ改良新型

そのモチーフは、中国向け『エリシオン』だ。これは、「オデッセイのお兄さん的存在で、その塊感をこのクルマにも用いることで、弟分から双子になるくらいのものにしたかった」と語る。

車格アップのために

ホンダ・オデッセイ改良新型ホンダ・オデッセイ改良新型

灯体も、時代性と車格を踏まえ全てLEDを採用。薄型のターンランプを上側に配置し、シーケンシャルとした。その下には薄型の前照灯とした。そして、「薄型にすることで出来たスペースをめいっぱい使って特徴的なDRLとした。技術的にはもっと薄く出来るが、車格を考えると全体的に細くしてしまうのは合わないと考えた」とのこと。

リアも同じ考えで、「厚みや強さを表現しながら、洗練されたディテールを表現」。大きく変わったのは、横に繋がっているコンビランプから、セパレートタイプになったことだ。さらに水平基調にすることで、「大人のしっとりした感じを表現している」と森岡さん。また、リアガラスも中央部分をより曲率を強めることで後ろに出し、「全体的に立体的なデザインを表した」と話す。

ホンダ・オデッセイ改良新型ホンダ・オデッセイ改良新型

リアコンビもフロントと同様にフルLED化。上側にストップランプ、メッキの下のところにシーケンシャルランプ、内側の部分にバックランプを採用。「LEDを使って薄型化しながら一番よく目立つ、夜見える部分を特徴的に見えることを念頭においてデザインしている」と説明。

カラーラインナップは全部で5色。オブシダンブルーパールが新色として追加された。このカラーは、「車格を表現しながら鮮度アップを図るために採用した」と述べた。

ホンダ・オデッセイの新色、オブシダンブルーパールホンダ・オデッセイの新色、オブシダンブルーパール

森岡さんによると、「デザインに関してお客さまからの不満はなくて、購入者からはすごく満足してもらっていた。しかし、7年間販売し続けて2回目のマイナーチェンジで、まずこの車両価格に対しての車格、価値観を与えたいという思いだ。お客さまがフードを上げてくれということもなく、周りを見ながらそうしたいと考えたわけでもない」と述べた。

モチーフは中国向けエリシオン

ホンダ・オデッセイ改良新型ホンダ・オデッセイ改良新型

ここからは、より詳細なデザインについてインタビューしたのでその模様をお送りする。

----:2回目のマイナーチェンジに関して、会社からはどういった指示や内容があったのですか。

ホンダ・オデッセイ改良新型ホンダ・オデッセイ改良新型

森岡圭介さん(以下敬称略):1回目のMMCの時に変えられる場所が少なく、かつ、お客さまのデザインに対する満足度が高かったこともあり、通常の変更、バンパーとグリルだけを変更しました。それに対して良いといってくださるお客さまもたくさんいたのですが、営業マンから代り映えがしないという話が出てきたのです。そこで7年経ち、また2回目ということで、今回は大幅に変えようという話がまずありました。

また、このクルマにはエリシオン(中国市場向け)という兄弟車があり、栃木のテストコースなどに行くとこのクルマと一緒に走っていることがあるのです。最初にオデッセイを開発し、その次にエリシオンでした。プラットフォームは共有なのですがちょっとお兄さん的な存在、格上な感じがするのですね。そういったシーンで見ていると、あっちがいいねという話が実は社内から出ていたのです。そこでまずはそこに近づけようと、(フロント周りの)塊の表現を参考にすることが私の中ではありました。

ホンダ・オデッセイ改良新型ホンダ・オデッセイ改良新型

日本市場では、最近ちょっと怖いお兄さん達、ちょっとオラオラ系の顔をしたクルマ達がいますが、それらに最低限防御が出来るぐらいのものにはしたい。ですから塊で強さや家族を守るようなところはデザインしています。ですが、威張ったりオラオラしたりというのはこのクルマには入れたくないという思いがありますので、ディテールの処理は大人しく、上品にデザインしています。

他とは違うオデッセイ

中国向けホンダ・エリシオン中国向けホンダ・エリシオン

----:個人的に気になったのはパッと見て変わって見せるためにというフレーズが冒頭であったことです。そこだけ聞くと、どうしてもマイナーチェンジのためのマイナーチェンジに感じてしまうのです。そうであれば極端にはそのままでもいいという考え方もあると思います。営業サイドの声のほかに、デザインとしても古臭く感じてしまった部分もあったのでしょうか。

森岡:その辺りが難しいところなのですが、今回のオデッセイの場合は中身を変えることが出来ないという条件がまずあります。そういった中で今回のマイナーチェンジをやりきるとすると、まずはパッと見で変わって見えるというところに重点を置きました。

そこで上層部から(前述の通り)エリシオンはいいじゃないかという意見とともに、営業サイドの代り映えしないということに対して、まず応えることが出来ます。

それから、どうしても他社の大型ミニバン系と比べたくなってしまうかもしれないのですが、このクルマはそことは全然違う位置にいます。向こうは豪華客船みたいなクルマで、乗員がゆったり乗るイメージ。オデッセイはちゃんと意のままにコントロール出来る走りの部分も残しているミニバンですから、そことは一線を置きたい。ですからオラオラを真似るというのは正直やりたくなかったのです。ただし、周りはちょっと強い人達ばかりなので最低限の筋肉をつけるというか、強さを残しておかないというのもあります。

中身を全部刷新するのであれば、いままでのフォルムのままでも良いのではないかという議論は、もしかしたらあったかもしれません。しかしそういうクルマではなかったというところも大きくありました。

デザインは変わったねというきっかけになればいい

----:そうすると今回のマイナーチェンジではデザインが最も重要なポイントだという理解で良いですか。

森岡:まずデザインはお客さまが気にして見に来てくれるだけだと思っています。特にミニバンに関しては、購入時の最大理由にデザインがあるのかないのかはグレーだと自分は感じているのです。ですからデザインを変えたから売れるとは思っていません。

このクルマのターゲットのひとつとして7年前に購入したユーザーも狙っています。その時代はガソリン車しかありませんでしたが、いまはハイブリッドも用意されていますし、安全性も格段に向上しています。パワーテールゲートも装備され、静粛性も乗り心地もすごく良くなりました。そこで、そういったお客さまが乗り換えるためのきっかけとしてデザインを使うのはアリかなと。デザインがウリなので買ってくださいという感じは正直思っていません。

----:ボンネットを70mm高くしてフロント周りを大幅に変更していますのでパネル類は全部変わって来ます。リアも大きく変更されているにも関わらずですか。

森岡:あくまでもデザインは見て、(変わったと)気づいてくれるためのきっかけに過ぎないのです。

----:はじめにデザインを見るのでそこで刺激を与えたいということですね。

森岡:それが重要だと思っていて、そのための(フロントの)塊なのです。デザインはちょっと線を変えたりしてもあまり変わらないのです、塊から変えていかないと。そこでお金をかけてやったのはそういう意味があるからなのです。

ボンネットを70mm上げたこだわり

----:ではデザインとしてこだわったところはどこですか。

森岡:それはボンネットを70mm上げたところです。そこをいかに違和感なくやりきるかはこだわりました。後は、高級感、上質な価値を残しつつ威圧的にならないところは自分としてすごくこだわった部分です。それが実際にこのクルマを見てお客さまがどう捉えるかは正直出してみないと分からないところではありますが。

----:上質さや高級感はどういうところで演出しているのでしょう。

森岡:メッキに関しては細くして、上品にあしらっています。“ドーンとグリルです!”みたいなやつはやっていないことが一番大きいですね。

----:ヘッドランプもかなりこだわってデザインしているようです。

森岡:時代進化させるためというのはあります。それから夜でもこのクルマの存在感を表現したいという思いもありました。

----:リア周りではコンビランプを繋げるのを止めましたが、繋げていた方が高級感を感じる人もいるかもしれませんし、また安定感にも貢献すると思いますが。

森岡:その辺りは難しいところで、あえてセパレートにしたのは、繋がっているデザインはワイドに見せたり先進性があったりという意味で良いデザインだったと思います。それに対してセパレートにして水平基調にしました。その結果、上質で大人な感じに見えていると考えています。実はフロントよりもリアの方が私は好きで、自信のある部分です。

マイナーチェンジ前(の中央部)は少し斜めに降りてきているので、元気な感じや未来感は表現されているのですが、クルマとしてそこが繋がっている必要があるかということを考えると、分かれている方が上質な感じには見えると思っています。

----:リアウインドウも変えていますね。

森岡:はい、リアウインドウの中央部分を少し引っ張り出しています。そうすることで曲面を大きくし立体感を出しました。その結果、サード席の人とガラスが少し離れますので、ちょっと安心感も生まれるかなと思っています。実はこのちょっとの差が意外に効いていたりするのです。

その他にデザインでこだわったところはテールランプも、メインと3本のサブを(リアからサイドに回り込んだ部分で)立体交差させています。このサイド面を光らせるにはサイドマーカー機能を追加させることで可能となりました。下のクラスのクルマではなかなか出来ない手法です。法規的にはいらないものなのですが、それをつけてでもサイドマーカーを光らせたいというこだわりです。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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