VWの「We Connect」を一足早く体験! インフォテイメントを完全オンライン化

「We Connect」を起動すると、履歴から主要ルートと所要時間が表示される
「We Connect」を起動すると、履歴から主要ルートと所要時間が表示される全 14 枚

フォルクスワーゲンはクロスオーバーSUV『Tロック』とコンパクトSUVである『Tクロス』を一部改良し、常時コネクテッドを実現した新世代のインフォテイメントシステム「We Connect(ウィー・コネクト)」を搭載したと発表した。そのプロトタイプを一足早く体験した。

対応システムは3種類。すべてにeSIMを内蔵してオンライン化

「We Connect」を搭載した2021年型T-Rocのインパネ「We Connect」を搭載した2021年型T-Rocのインパネ

体験で用意されていたのはWe Connectに先行して対応したTロック。地図データなど日本仕様として準備されたもので、そのシステムのラインアップは大きく3種類ある。この車両に搭載されていたのは、ディスプレイを9.2インチの大型モニターとした最上位の「Discover Pro(ディスカバープロ)」だ。

他にもっともベーシックなのが8インチ液晶を搭載したディスプレイオーディオ「Ready 2 Discover(レディートゥーディスカバー)」と、ディスプレイは8インチのままだがナビゲーション機能を内蔵した「Discover Media(ディスカバーメディア)」がある。これらは車種に応じて選択することが可能だ。

We Connect Plusで近所のガソリンスタンドを検索。ディーゼル車の場合は軽油の価格が優先して表示されるWe Connect Plusで近所のガソリンスタンドを検索。ディーゼル車の場合は軽油の価格が優先して表示される

We Connectで最大のポイントとなるのが、全てのインフォテイメントシステムにeSIM内蔵の通信モジュールを搭載したことだ。これにより日本で販売されるフォルクスワーゲン車としては初めてヘッドユニットの常時オンライン接続が可能となる。また、We Connectのサービスは10年間無料の基本プランと、3年間は無料で使え4年目からは有料となる「We Connect Plus」の2プランが選べる。

基本プランのWe Connectで可能となるのは、車両上のトラブルが発生したときにオペレーターと通話できる「ブレークダウンコール」をはじめ、定期点検や警告灯情報を販売店に自動通知して販売店への入庫のアレンジができる「サービススケジューリング」などのメンテナンス系のサービス。さらにドライバーの運転を分析して燃費情報を知ることができる「ドライビングデータ」、GPS機能を活用して駐車した自社の位置をスマホ上に表示できるサービス、ドアロックの状態をチェックするサービスも利用可能だ。

選択した画路リンスタンドを表示。ここから目的地として設定できる。道路状には交通状況が示されている選択した画路リンスタンドを表示。ここから目的地として設定できる。道路状には交通状況が示されている

また、基本プランで見逃せないのが「パーソナルセッティング」で、この機能はフォルクスワーゲンのIDと自車を紐付けることで可能となるものだ。車両の装備内容に応じてシートやライト、エアコン、インフォテイメントシステム(ナビ含む)など、多数のセッティング内容を自動保存。それはパーソナルデータとして車両乗り換え時にも引き継がれることとなり、VWを乗り続ける人にとっては今後重宝する機能となっていくだろう。

上位の「Plus」では交通情報取得や地図更新をオンラインで実現

We Connect Plusでは近所の駐車場を検索。距離優先と空き状況優先で探せるWe Connect Plusでは近所の駐車場を検索。距離優先と空き状況優先で探せる

次に4年目以降の有料アドオンプランとなるWe Connect Plus。このプランでは基本プランに、ドアやトランクのロック/アンロックをスマホから操作できる機能が加わるほか、ナビゲーション付きモデルならオンラインでの交通情報取得が可能となって、その情報に基づいたルート案内が実施される。オンライン検索では、ルート沿いにあるガソリンスタンドの燃料価格や駐車場の満空情報情報も取得でき、スマホで設定した目的地をクラウド経由でナビゲーションへ転送することも実現している。

VWジャパン広報部の山崎信雄氏によれば「提供される交通情報はTomTomが用意したもの」だそうで、そこにはユーザーの利用履歴に基づくプローブデータを活用しているという。また、山崎氏は「提供エリアは具体的には不明だが、VICSが提供しているエリアよりは広くなるため、ルート案内として使うのに最適なルートガイドができると判断した」とも語った。これに伴い、We Connectでは交通情報の取得はすべてオンラインとなり、VICSレシーバーユニットは搭載しない。グローバルでシステムを共通化するにはコスト的にもベストな判断と言えるだろう。

空き状況が台数で表示されている。グラフィカルに表示されるとわかりやすかったかもしれない空き状況が台数で表示されている。グラフィカルに表示されるとわかりやすかったかもしれない

参考までにWe Connectのデータ供給元としたTomTomが発表した資料を追加しておく。それによれば日本国内で同社が提供する交通情報は約44万kmで、その中には日本道路交通情報センター(JARTIC)のデータも含まれる。JARTICはVICSにも情報提供していることから、基本的にこのデータにはVICS情報も含まれると判断してもいいだろう。この44万kmは、細街路までを含んだ総延長距離128万kmの1/3ほどとなり、TomTomでは今後もプローブの対象エリアを広げていく計画としている。

さて、話はWe Connect Plusに戻る。このプランでは、カーナビで重要な地図データ更新にもオンラインで対応した。登録した居住エリアの地図データは最新情報に自動更新され、出掛けた先に未更新データがあった場合でも更新される。これまでも3年間は無料で地図データ更新ができたが、今まではその都度PCやディーラーで更新作業が必要だった。それがインフォテイメントシステムの通信環境だけで更新可能となったわけで、この使い勝手は大きく進化したと言えるだろう。

渋滞情報は地図上からリアルタイムの状況を知ることができる(We Connect Plus)渋滞情報は地図上からリアルタイムの状況を知ることができる(We Connect Plus)

その他、オンラインを活用した「エリアアラート」や「スピードアラート」、「盗難防止アラーム」も搭載した。エリアアラートでは自車の走行エリアを指定しておいてそのエリアから外れると、スピードアラートは設定した速度を超えて走行するとスマホまでそれぞれ通知する。日本では馴染みがない機能だが、海外ではシェアリングも含め、マストとなっている機能のようだ。また、盗難防止アラームは、盗難防止システムを装備することが前提にはなるが盗難の恐れがある状態になるとスマホに通知が届く仕組みとなっている。

クラウド経由の音声認識に日本は非対応。今後の対応拡大に期待

スマホで検索した目的地をカーナビ側に転送することが可能(We Connect Plus)スマホで検索した目的地をカーナビ側に転送することが可能(We Connect Plus)

一方でApple MusicおよびKK BOXの音楽ストリーミングサービスには対応したが、通信には手持ちのスマホなどのテザリングが必要となる。VWジャパン広報部の山崎信雄氏によれば、「交通情報や地図更新などに比べてストリーミングサービスはパケットの使用量が大きくなり、そこまで使い放題とすることはできなかった」と話す。VWのユーザーでもテザリング接続なの接続環境を作るのが不得手な人も多数いると聞いており、せっかくここまでの環境を用意したわけだから、たとえばオプションプランとして使い放題プランなどを用意しても良かったのではないかとも思った。

それと、We Connectではクラウドを経由した音声認識に対応していないのも残念な点。これまでのディスカバープロはテザリングが必要だったとは言え、その機能を用意していた。今後、音声認識はインフォテイメントシステムのインターフェースとして主役となるのは明らかであって、これから展開するシステムとしてこれが用意できていないのは残念としか言いようがない。このままでは音声による目的地検索ができるCarPlayやAndroidAutoに切り替えた方が便利となりかねない。山崎氏によると「(We Connectでは)英語とドイツ語には対応しているが、日本語には対応できていないため非対応とした」のだという。

ストリーミングサービスにも対応したが、通信は手持ちのスマホなどでテザリングする必要があるストリーミングサービスにも対応したが、通信は手持ちのスマホなどでテザリングする必要がある

とはいえ、オンライン化によってもたらされるメリットは極めて大きい。様々な情報がリアルタイムで更新されればより効率的なドライブが可能になるのは間違いなく、何よりもクラウド下で利用環境が管理されるようになることはあらゆる可能性が広がることも意味する。今回発表された内容では不足を感じる部分もあるが、これらはソフトウェアのアップデートで改良できる内容でもある。VWがオンライン化に踏み出したことで、その環境を活かしたアップデートを期待したいと思う。

《会田肇》

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