2005年から11年間にわたり近代ランボルギーニを牽引し、ブランド拡大の礎を築いたステファン・ヴィンケルマン氏が、2020年12月1日付けでランボルギーニの社長兼CEOに復帰した。2018年1月に就任したブガッティ社長との兼務となる“Mr.ランボルギーニ”は今、何を考え、何を創り出そうとしているのか。
就任発表直後の12月、オンラインインタビューの機会を得た。インタビュアーは「スーパーカーを知る男」モータージャーナリストの西川淳氏。
急拡大したブランドをさらに成長させる
1万台をラインオフしたランボルギーニ ウルス
----:ヴィンケルマンさんがおられなかった4年の間に、ランボルギーニ社は規模が倍になるなど根本的に大きく変わりました。ウルスのプロジェクトを含めご自身が撒かれた種が実を結んだものだと理解していますが、外から見ていたランボルギーニの印象はいかがでしたか?また、戻ってこられてまず抱かれた印象はどんなものだったでしょうか?社員の皆さんの反応はいかがでしたか?
ヴィンケルマン氏:驚くほどの大歓迎を受けましたよ。ランボルギーニのことはずっと気にかけていましたし、いろんなニュースを見て誇りにも思っていました。特に2018年、『ウルス』のローンチに伴って会社の規模そのものが倍になりましたからね。これからの課題は、急激に大きくなった会社をさらに成長させるために、新型モデルの開発を急がなければなりませんし、同時にこれまでのポジティブな評価も守っていかなければなりません。
----:ブガッティでもこの4年間に特別なモデルをたくさんデビューさせるなど、ヴィンケルマンCEOは多くの変化をもたらしました。現時点でこれからのランボルギーニについて、現状の路線を続けるのか、変化させるのか、変化させるとすればどのようにする必要があるのか、したいのか、お聞かせください。
ヴィンケルマン氏:まだ来たばかり(インタビューは12月第2週に行われた)で、会社の現状についていろんな角度からスタッフたちと分析しているところです。
----:喫緊の課題は『アヴェンタドール』の後継モデルでしょうか?
ヴィンケルマン氏:これもまた話をするのは早すぎますね。離れていた4年間の間に変わったことも沢山あります。今我々がどういう状況にあるのか、どこを向いているのか、もう少し正確に把握する時間をいただきたいと思います。近々改めてお話しできる日が来ると思います。
ランボルギーニとブガッティがそれぞれ目指すもの
----:引き続きブガッティブランドとの兼任ということですが、モールスハイム、サンタガータ・ボロニエーゼ、ウォルスブルグをどのくらいの頻度で行ったり来たりされる予定ですか?両立することに関して、難しさはありそうですか?
ヴィンケルマン氏:そうですね、新型コロナのために今までのように自由な移動ができません。そのかわりにオンラインで会議などは便利にできるようになりました。今後、どのくらいの割合でランボルギーニとブガッティの仕事をこなしていくのかはまだ分かりませんが、少なくともしばらくはランボルギーニの仕事が確実に多くなりそうです。ここ数年の状況を詳しく知らないという意味ではランボルギーニの方がそれに当てはまりますから。
----:ブガッティではあらゆる意味でこの地球上で最高のカスタマーを相手にされていると思います。ランボルギーニとブガッティの目指すところの違いは何でしょうか?今後、両ブランドにおけるなにがしらのコラボレーション、例えばプラットフォームの共有などのプランはあるのでしょうか?
ランボルギーニ ウルス、ブガッティ シロンとステファン・ヴィンケルマン氏
ヴィンケルマン氏:いずれもラグジュアリィな高級スーパースポーツカービジネスという点では同じです。けれどもブガッティは究極のテクノロジーを使って夢をどんどん実現していくブランドです。『シロン』や『ディーボ』といったモデルには、二つの性格、イージーさと最高級のラグジュアリィ空間における信じられないほどの快適性、ターボエンジンによる驚くべきパフォーマンスが宿っています。
一方、ランボルギーニもまたスーパースポーツカーですが、このセグメントにおけるオーセンティンクなベストブランドとして存在しています。ブガッティはとにかく今望みうるすべての実現を追求しますが、ランボルギーニは多くの人が望むクルマを作るのです。ここが最大の違いです。価格の話は重要ではありません。
環境であったり、ボリュームであったり、操る楽しさであったりをより重視しています。中でもウルスは今後も引き続きランボルギーニの大きな柱になるでしょう。
ポストコロナのスーパースポーツカービジネス
ランボルギーニ SC20
----:ポストコロナに向けて、スーパースポーツカーのセグメントはどのように変わるとお考えですか?また、ブガッティやランボルギーニにも大きな変化は求められていくのでしょうか?例えば電動化やサスティナビリティの面において。お考えをお聞かせください。
ヴィンケルマン氏:とても印象的だったことは、グローバルカーなどに比べるとこのコロナ禍においてスーパースポーツカーのセグメントがさほど甚大な影響を、例えばセールスの面でも受けなかったことです。これは今後のことを考えるにあたっての重要な示唆になると思います。
また未来のことですが、スーパースポーツカービジネスの将来はとても明るいと私自身は思っています。移動手段としてのクルマというよりも、ドライブすること自体を楽しむものとして評価されているからです。電動化に関しても将来は必要になるでしょう。けれどもそれはあくまでも、電動化によってすべての性能が向上する場合に有効な手段として採用するということになります。
そうしなければならないから、ではなく、性能のために必要だから行うことになるでしょう。
----:日本にはヴィンケルマンさんのファン、特に女性、が沢山います。最後にメッセージをください。
ヴィンケルマン氏:それは嬉しいことです。けれどもきっと皆さん、私というよりも熱心なランボルギーニファンなのでしょう。いずれにしてもコロナ禍が落ち着いてまた以前のように行き来ができるようになりましたら、できるだけ早くに皆さんに直接お会いして色々お話ししたいと思っています。