ボーズ、走行ノイズをコントロールして車内を最適化する新技術を公開…CES 2021

CES2021で公開された自動車向けノイズコントロール技術「Bose QuietComfort Road Noise Control」
CES2021で公開された自動車向けノイズコントロール技術「Bose QuietComfort Road Noise Control」全 15 枚

ボーズ・オートモーティブはオールデジタルで開催した「CES 2021」に出展し、ヘッドホンで培ったアクティブ・ノイズキャンセリング機能を車載システム向けに応用した新システムを紹介した。今後進む自動運転下において、より静粛な車内空間の実現に向けて開発していく。

ノイキャンではない新技術「Bose QuietComfort Road Noise Control」とは?

RNCは凹凸のある不均等な路面に対しても柔軟に対応してノイズを抑制できるRNCは凹凸のある不均等な路面に対しても柔軟に対応してノイズを抑制できる

CES 2021でボーズが公開したのは、開発中の「Bose Quiet Comfort Road Noise Control(RNC)」である。これは、車室に侵入する路面とタイヤからのノイズを広い周波数帯域にわたって抑制するシステムで、広帯域のノイズキャンセリング アルゴリズムと車両のオーディオシステムによって構成される。そこにはこれまで多くの車種に採用されてきたEngine Harmonics Cancellation(EHC)や、「Engine Harmonic Enhancement(EHE)」などを含むボーズのActive Sound Managementポートフォリオが深く関わる。

EHCはオーディオシステムから発生させた逆位相の波形をぶつけてノイズを軽減する技術で、EHEはエンジンサウンドの特定音域を増幅してクルマらしい活き活きとした走行音を聴かせる技術。この二つは独立して機能するものだが、互いに相反するような印象も受ける。しかし、ボーズは長いことクルマと深い関係を築いてきただけに、走行中に発生するノイズは一定量、必要と考えているようだ。

加速度センサーはサスペンションのアッパーマウント部に装着してセンシングする加速度センサーはサスペンションのアッパーマウント部に装着してセンシングする

RNCはこの考え方を基礎として開発されており、それだけにヘッドホンに多くあるようなノイズキャンセリングとして使うことはしていない。あくまで走行中のサウンドを最適化するよう“コントロール”するために開発されたのがRNCと言っていいだろう。

かつて走行中の静音性能を高めるには、吸音材や防音・防振材などを活用するのが一般的だった。しかし、これは車重増を招くだけでなく、特に低域については対応するのは難しい。そこで今ではマイクで拾ったノイズに対して逆位相の信号を与えて消音効果を狙う方法が使われるようになってきた。ただ、その方法ではノイズを拾ってから対応するため、発生源との時間差はどうしても生まれ、完璧に制御するのは困難だ。さらに言えば、マイクでは消すべきノイズとそれ以外を判別できないということもある。

マイクは6カ所に設定することを想定しているマイクは6カ所に設定することを想定している

そこでRNCではノイズの発生源となるサスペンションのアッパーマウント付近等に加速度センサーを取り付け、路面の状態や走行による振動から直接検知。ノイズとしてドライバーの耳元まで伝わる前に時間差なく検出することを可能にした。さらにそこで取りこぼれたノイズはマイクで拾い上げ、これらを独自のアルゴリズムで総合的に解析してノイズと逆位相の波形をカーオーディオのスピーカーから発信する。これによってRNCでは走行中に発生するノイズの最適化し、路面や速度の変化によらず常に静粛なドライブを可能としているのだ。

RNCを体験してその効果は? 正式リリースはいつになる?

RNCの概念図。車重の増加なしに静粛性を向上させるデジタル信号処理ソリューションだRNCの概念図。車重の増加なしに静粛性を向上させるデジタル信号処理ソリューションだ

ボーズ・オートモーティブのシニアプロダクトコミュニケーションズ マネージャーを務める遠藤真樹氏によれば、加速度センサーは前後左右のサスペンションのアッパーマウント付近等の4カ所に取り付けることで可能となり、またマイクについては乗員の耳元で最適化するために、各シートの天井部に6カ所取り付けるのが適当とする。また、加速センサーは数10gと小さく、「それ自体が車両の走行に影響を与えるものではない」(遠藤氏)とのことだ。

実はシステムそのものは2019年のCESが開催された時点ではメディアにも公開されており、実際にインフィニティ『Q50』を使った体験会も開催された。この時はラスベガス市内の比較的荒れた路面を走り、スイッチでON/OFFを繰り返してその効果を体験。まだ試作レベルとのことだったが、定常的に発生する路面のざらつきや継ぎ目が定期的に続く場所でも静粛の中にも適度な走行音が伝わるなど、その効果をはっきりと体感することができた。

RNCを装着した場合、安価なクラスの車種でもラグジュアリーサルーンを凌駕する静粛性を示したというRNCを装着した場合、安価なクラスの車種でもラグジュアリーサルーンを凌駕する静粛性を示したという

遠藤氏によれば、近いうちに改めてメディア関係者にも体験会を開催する予定にしているという。最初の体験から2年が経ち、どこまでレベルアップしているか大いに興味が湧くところだ。なお、RNCが車両に搭載される時期は当初、2021年末頃を予定とアナウンスされたが、現時点では未定となっている。

これから先、自動運転技術が進化していくに伴い、車内でエンターテインメント系コンテンツを思う存分楽しみ、移動中でもリモート会議などを車内で行う未来が訪れることも想定される。そんな時代にこそRNCは真価を発揮できるのだろう。RNCの効果を実体験できる日が楽しみになってきた。

加速度センサーで検出した振動と、マイクで拾い上げたノイズを総合的に解析し、ノイズと逆位相の波形をスピーカーから発信してノイズを最適化する加速度センサーで検出した振動と、マイクで拾い上げたノイズを総合的に解析し、ノイズと逆位相の波形をスピーカーから発信してノイズを最適化する

《会田肇》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

アクセスランキング

  1. マツダ、電動セダン『EZ-6』世界初公開、24年発売へ SUVコンセプトも…北京モーターショー2024
  2. 【ホンダ ヴェゼル 改良新型】開発責任者に聞いた、改良に求められた「バリュー」と「世界観」とは
  3. トヨタが新型BEVの『bZ3C』と『bZ3X』を世界初公開…北京モーターショー2024
  4. Sズキが電動マッサージ器を「魔改造」、25mドラッグレースに挑戦!!
  5. 見逃せない! ホイールのブレーキダスト除去術 ~Weeklyメンテナンス~
  6. <新連載>[低予算サウンドアップ術]“超基本機能”を駆使して「低音増強」を図る!
  7. 郵便局の集配車が「赤く蘇る」、KeePerが8000台を施工
  8. ホンダ『ヴェゼル』マイナーチェンジで3グレードに集約、納期改善へ…「HuNT」「PLaY」新設定で個性強調
  9. 中国製部品の急成長で2025年以降日本製の車載半導体は使われなくなる…名古屋大学 山本真義 教授[インタビュー]
  10. 多胡運輸が破産、首都高のローリー火災事故で損害賠償32億円
ランキングをもっと見る