数字だけでは語れない『ベントレー コンチネンタルGT V8』が示す一流の思考性とは

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ベントレー コンチネンタルGT V8 試乗
ベントレー コンチネンタルGT V8 試乗全 37 枚

ラグジュアリーカー界においてベントレーほど好調なブランドはないだろう。実際このコロナ禍においても順調な推移をみせ、つい先ごろにはクーペモデルのコンチネンタルGTが18年間3世代に渡って80,000台の生産を達成するなど、驚異的な支持率を得ることに成功している。

初代コンチネンタルGTのデビュー時、ここまでの数字を実現するとは予想もしていなかったが、今となっては納得の連続で、その理由を最新モデルの「コンチネンタルGT V8」のステアリングを握って、あらためて理解できた気がする。

ベントレー コンチネンタルGT V8 クーペベントレー コンチネンタルGT V8 クーペ

まず理由に挙げられるのは、やはりベントレーならではの普遍性。いわゆる英国の理念とも言うべき“アンダーステイトメント”という控えめな美学による、唯一無二の造形美にある。しかも初代コンチネンタルGTがデビューした2003年から3代目となった今作まで、エクステリアデザインに大胆な変更はなく、あくまでも“洗練”という二文字に収まる範囲で仕上げているのが一流の思考性をもつ証しで、決して流行りには乗らないことを示すと同時に、それこそが“独自の世界観”につながると言わしめている。

とはいえ、それでも控えめに“最新の造形”にこだわっているのもベントレーの憎いところだ。航空宇宙産業で開発されたスーパーフォーミング加工によって造られる最新モデルのボディは、アルミニウムを摂氏500度以上に加熱し、空気圧を用いて型に流し込むという手法で造られるだけに、従来よりもエッジの効いたボディラインに仕上げられているのが特徴。光の当たり方次第で大きく表情を変えていくのは、まさにそれが理由で、3代目は過去2作よりも明らかに綺羅びやかな印象を与える。

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イギリス人らしい粋な演出を感じる"最新とクラシックの共存"

インテリアに関しても妥協しらず。今や多くのライバルが存在する中、ベントレーは独自のラグジュアリー性を強化するべく、内装に使われるレザーは以前にも増して上質な素材を使用。その一方でウッドパネルには環境に配慮して摂取されたものを採用するなど、サスティナブルなアプローチを採っているから意識の高い富裕層の心をも鷲掴みにする。しかも金属パーツの一部には、日本の伝統工芸である切子にも似たダイヤモンド模様のローレット加工も見られるため、往年のベントレーファンをも唸らせる。

ベントレー コンチネンタルGT V8 試乗ベントレー コンチネンタルGT V8 試乗

最高の素材に、見事なまでにこだわった装飾類をもつ一方、クラシカルなダッシュボードデザインの中に最新のインフォテイメントシステムを備えているのは有り難い限りだ。12.3インチのタッチスクリーン式メインディスプレイは従来のカーナビゲーションのほかに「Android Auto」や「Apple CarPlay」と連動できるほか、車両の全方位を映し出すことも可能。

ましてやスイッチひとつで旧式ベントレーを彷彿とさせる3連アナログメーターに変更できるうえ、イグニッションをオフにすればダッシュパネルのみになるなど、イギリス人らしい粋な演出が見られるのもベントレーらしい計らいで、最新とクラシックの共存を演出している。

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ベントレーの思惑が見え隠れするW12とV8 それぞれの狙いとは

こうして継承を続ける“最新と普遍”の両立のほかに、もうひとつベントレーの特異性がある。それはグレードによる違い。というのも、冒頭でも触れたようにここでの主役はコンチネンタルGT V8という、W12エンジンを搭載するモデルの弟的存在。しかし一見するとそう思われるかもしれないが、これが多くの誤解を招いているのは事実。確かに価格帯もパフォーマンスも数値上では劣るように映るが、数字だけで判断してはいけないのがベントレーのラインアップ構成の特徴でもある。

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このコンチネンタルGT V8に搭載されるエンジンは、車名にも示されているように4.0リッターV型8気筒ツインターボ。最高出力550ps、最大トルク770Nmを出力し、8速DCTを介してAWDで駆動するというのが基本。6.0リッターW12モデルの635ps&900Nmと比較すると、85ps&130Nmほどの差が見られるが、これはあくまでも数字上の違いであって、実際に乗り比べると、それぞれにベントレーの狙いが見え隠れする。

即ち、わかりやすく表すなら、このV8はGT=グラドツアラーでありながらもスポーツ性のほうが強調されている仕上がりで、どちらかと言えば、その気になった際にエンジンを回して活気ある走りを好む層に向いているだろう。ハンドリングもノーズが軽いぶん、コーナリング時の進入が素直で、ドライビングそのものを満喫できる。その一方、W12は長く巡航する真のGTを具現化した印象で、アクセルを一気に踏み込めば怒涛の加速感を味わえる、重厚な乗り味が魅力だ。

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いずれも一長一短とも解釈できるが、ではV8が巡航に向いていないかと言えばそうではない。デフォルトのベントレーモード(いわゆる車両任せのオートモード)で普通に走行すれば快適そのもので、しかも環境保全に一役買うべく、3500rpm以下かつ250Nmを下回る領域では気筒休止システムが働き、8気筒から4気筒で巡航を続けるため、燃費性能にも貢献する。

直進安定性も抜群!V8エンジンの鼓動を感じながら最新のターボ車らしい心地よいトルクによってスムーズに素早く移動を続ける。

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それでいて、一度スポーツモードに入れてやれば、ステアフィールがズシッと重くなり、4輪がスクラムを組んで高い接地性で安定感ある走りで魅了するから見事だ。しかも、エアサスペンションと軽量型の中空アンチロールバーによる足まわりは、やや硬さを伴うものの、不快には思わない程度の乗り心地を確保しているからインフォメーション性が高いこともあって平常心すら保ててしまう。

従来のスポーツカーならこれらに高揚感が加わるため、精神的にも興奮しやすくなるのだが、コンチネンタルGT V8の場合は、目的地に向かうまでに遭遇するワインディングをも巡航するかのような安定感をみせるため不思議と冷静でいられる。アクティブAWDシステムによる前後トルク配分の効果も大きいだろう。この感触は実にジェントルでベントレーらしい。

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そういう意味でもコンバーチブルという選択も魅力的だ。ボディカラーとインテリアの仕様を同時に楽しめるオープンモデルは、ラグジュアリーの極み。広いキャビンをもつ4シーターゆえに組み合わせ次第でオーナーのセンスが問われるかもしれないが、コーディネートが決まれば、これほど洒落たモデルはないと思わせる。

ソフトトップの開閉もこれだけ大きいにも関わらず19秒で完了し、50km/h以下であれば走行中でも操作可能。シートヒーターとネックウォーマー、さらにステアリングホイールとアームレストにもヒーターを備えているため、今回撮影したような寒い日でも予想を超えて心地よいドライブが楽しめた。

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ベントレーに学ぶ真のラグジュアリー それは"控えめな美学"である

こうしてコンチネンタルGT V8を満喫していると、ふと思い出したことがある。以前、イギリスに出張した時のこと。とある田舎のレストランの駐車場で、ちょっと旧い1台のクーペから中高年のご夫婦が降りてきた後、後部座席からふたりのお子さんが姿をあらわした。今の日本では到底見ることのない、2ドアクーペの4名乗車だ。聞けば、イギリスでは珍しくないという。しかも自宅からそのレストランまでの距離はおよそ200km、ほぼ毎週末これくらいの距離を家族と共にする、と平然と加えた。

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これこそGTの使い方かもしれない。4名乗車が多いなら4ドアサルーンを選ぶはずだが、あくまでもクーペにこだわるのは、根底に粋なライフスタイルを求めている証し。そして、これみよがしな華やかさを求めない、ベントレーの普遍性はこうした使い方こそ相応しい。控えめな美学に仕立てられているからこそ、真のラグジュアリーも味わえる。ましてや、このコンチネンタルGT V8であれば、それにスポーツ性も加わる。

野口優野口優

そんな1台と長く付き合いたいから選びたくなるのだろう。3代にわたって支持されてきた理由はまさにそれだと痛感した。コンチネンタルGT V8で、遠方の名店を訪ねてみる人生、日本でもそうした使い方するオーナーを見てみたいものだ。今や昔とは違って、高い精度でサポートするACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)やレーンキープアシストを装備しているからロングドライブも苦にならない。

ベントレー コンチネンタルGT V8の詳細はこちら

撮影協力 THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS SENGOKUHARA 

野口 優|モータージャーナリスト
1967年 東京都生まれ。1993年に某輸入車専門誌の編集者としてキャリアをスタート。後に三栄書房に転職、GENROQ編集部に勤務し、2008年から同誌の編集長に就任。2018年にはGENROQ Webを立ち上げた。その後、2020年に独立。25年以上にも渡る経験を活かしてモータージャーナリスト及びプロデューサーとして活動中。

《野口 優》

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