【ドゥカティ ムルティストラーダV4S 試乗】歴代最大の進化!市販バイク初のACCを試す…丸山浩

新設計のV4エンジンはツアラーにお誂え向き

コーナリング対応のACCは移動を楽にしてくれるに違いない

ACCが全車速対応ではないのは2輪が故

ドゥカティ ムルティストラーダV4S
ドゥカティ ムルティストラーダV4S全 20 枚

いよいよ日本国内でも3月13日から発売が始まったドゥカティの『ムルティストラーダV4S』。第4世代となる今回は、歴代の中でも最大と呼べる大きな進化を2つ遂げた。1つはエンジン型式が従来のV型2気筒(Vツイン)からV型4気筒へ変わったこと。これに伴い車体もスリムだったVツイン時代からエンジンまわりのボリュームがグンと増してツアラーらしい貫禄さが加わった。

ドゥカティ ムルティストラーダV4Sドゥカティ ムルティストラーダV4S
そしてもう1つが、車体前後に装備された何やら不思議な2つの四角いボックスだ。なんと、この正体は世界で初めて市販2輪車に搭載されることとなったACC=アダプティブクルーズコントロール用のレーダー。4輪でも普及してきた前後にいる他車を検知して自動追尾や死角への接近報告を可能にしてくれる最新の電脳装備だ。今回はこの2つの進化にクローズアップしてレポートしたい。

新設計のV4エンジンはツアラーにお誂え向き

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まずエンジンからだ。ドゥカティのV4と聞くと、多くの人が想像するのは何と言っても『パニガーレV4』。214psの激しいパワーを発揮するあのスーパーバイクだろう。だが、このムルティストラーダV4のエンジンは同じV4といっても設計の異なる新ユニット。エンジンをかけてみると、アイドリング付近では爆発タイミングによりドコドコした鼓動感が強調されておりVツインのような雰囲気だ。このあたりはパニガーレにも見られたドゥカティらしい演出。

ところが回転を上げていくと非常に滑らかに回って、上の方までいってもパニガーレのようなドッカンパワーではなく、どこまでもフラットトルクで一直線に伸びていくという本来のV4的なキレイな回り方を見せてくれる。使える回転域がとにかく広く、ツアラーとしてのムルティストラーダの用途には非常に合っていると感じた。

ドゥカティ ムルティストラーダV4Sドゥカティ ムルティストラーダV4S

コーナリング対応のACCは移動を楽にしてくれるに違いない

さて、次はいよいよ初体験となる2輪でのACCだ。まずはテストコース外周を単独で走行。ACCの指定速度を95km/hにセットした状態でコーナーへと進入を試みてみる。スロットルやブレーキ操作を一切しない機械任せの進入だ。これが予想以上に賢いのに驚かされた。

車体の姿勢センサーが走行状態をちゃんと把握し、コーナリングを始めると速度を70km/h台へと下げるように自動で制御。コーナーを抜けて直線に出たら再び95km/hへと回復してくれるではないか。コーナーに入っても指定速度のままだったこれまでのクルーズコントロールとは一線を画している。

ドゥカティ ムルティストラーダV4Sドゥカティ ムルティストラーダV4S
次に4輪の前走車の後について、ちゃんと追従走行してくれるかどうか試してみる。任意に調整可能な前走車との距離をセットするとしっかりレーダーが捕らえており、その車間距離を保ったまま走行を続けてくれる。まさに4輪のACCと同じ感覚だ。これならツーリングでの移動中は格段にラクになる。

コーナーでわざとレーダー方向から前走車を外すように車体を向けてみたら一瞬加速して車間距離は近づいたものの、再認識したらすぐに元通りの距離に戻ってくれた。速度は高速域だけでなく50~60km/hでも追従してくれたので一般道でも出番がありそうだ。

ACCが全車速対応ではないのは2輪が故

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ただ、4輪のACCとまったく一緒かというとそうではない点も。4輪のACCでは完全停止するまで反応してくれる物が多い現在。前車が再発進したらこちらもそれに従ってくれるのだが、さすがにバイクは止まってしまうと自動では車体を支えきれない。そこでだいたい30km/h前後まで車速が低下したところでACCは自動でオフになるという。最後の停止操作はこれまでどおりライダーが行わなければならないというわけだ。

同様に前走車の急ブレーキにどこまで反応してくれるかも試してみたかったが、残念ながら万が一のことがあったらとメーカー側からNG。倒れてしまう2輪の場合は、横から何か急に飛び出してきたときも含めてACCによる急制動は思わぬ事故の原因となってしまう。なので、ある程度まではブレーキを自動的に掛けて減速してくれても、完全停止に至るまでの制御はまだまだこれから開発の余地が残されているという。

もっとも完全停止までいかなくても、今までのクルーズコントロールよりは格段に進化しており現在では最高水準の安全技術。レーダーは前車追従のための前側だけでいいのではと思ったのだが、後方レーダーがこれまた便利だ。

ドゥカティ ムルティストラーダV4Sドゥカティ ムルティストラーダV4S
隣車線から接近する後続車まで感知し、バックミラーに内蔵されたLEDが点滅してそれを知らせてくれる。LEDが点灯しっぱなしとなったら、それは後方死角に車両がいる証拠。レーンチェンジでの事故を未然に防いでくれる。これらレーダーによる機能は工場オプションとして購入時に選択するようになっているが、ぜひとも付けておきたい。

ムルティストラーダはオンロードからオフロードまですべての道を思いのままに楽しむことを目的とした欲張りモデルだ。Vツインの従来型の方が鼓動感やトルクの出方がV4より強めだったり軽さやスリムさでスポーツ色が出ていたりしたが、V4はツアラーとしての性格をより高めた印象だった。

片手で操作できる可変スクリーンや、タンク上にメーターとブルートゥース接続してナビや音楽を制御するためのスマホを入れておけるポケットがあるなんてのもニクイ気配りだね。

ドゥカティ ムルティストラーダV4S と 丸山浩 氏ドゥカティ ムルティストラーダV4S と 丸山浩 氏

■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★★★★
足着き:★★★★
オススメ度:★★★★


丸山浩|プロレーサー、テストライダー・ドライバー
1988年から2輪専門誌のテスターとして活動する傍ら、国際A級ライダーとして全日本ロード、鈴鹿8耐などに参戦。97年より4輪レースシーンにもチャレンジ。スーパー耐久シリーズで優勝を収めるなど、現在でも2輪4輪レースに参戦し続けている。また同時にサーキット走行会やレースイベントをプロデュース。地上波で放送された「MOTOR STATION TV」の放送製作を皮切りに、ビデオ、DVD、BS放送、そして現在はYouTubeでコンテンツを制作、放映している。また自ら興したレースメンテナンス会社、株式会社WITH MEの現会長として、自社製品、販売車両のテストライド、ドライブを日々行っている。身長は168cm。

《丸山浩》

丸山浩

丸山浩|プロレーサー、テストライダー・ドライバー 1988年から2輪専門誌のテスターとして活動する傍ら、国際A級ライダーとして全日本ロード、鈴鹿8耐などに参戦。97年より4輪レースシーンにもチャレンジ。スーパー耐久シリーズで優勝を収めるなど、現在でも2輪4輪レースに参戦し続けている。また同時にサーキット走行会やレースイベントをプロデュース。地上波で放送された「MOTOR STATION TV」の放送製作を皮切りに、ビデオ、DVD、BS放送、そして現在はYouTubeでコンテンツを制作、放映している。また自ら興したレースメンテナンス会社、株式会社WITH MEの現会長として、自社製品、販売車両のテストライド、ドライブを日々行っている。身長は168cm。

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