EU・中国は電気、日本は水素、アジア・アフリカはガソリン、世界のスタンド事情…油客網 創始者兼CEO 邢瑞松氏[インタビュー]

EU・中国は電気、日本は水素、アジア・アフリカはガソリン、世界のスタンド事情…油客網 創始者兼CEO 邢瑞松氏[インタビュー]
EU・中国は電気、日本は水素、アジア・アフリカはガソリン、世界のスタンド事情…油客網 創始者兼CEO 邢瑞松氏[インタビュー]全 1 枚

中国北京にある油客網(GasLook)は世界のガソリンスタンドや充電スタンド他、エネルギースタンドの情報をカタログ化している企業だ。保有データは、スタンド・ステーション数にして100万件以上にのぼり、現在も拡張・更新を続けている。

その代表である邢瑞松氏が、4月23日開催のオンラインセミナーコネクテッド・OTA2021(無料)にて各国のエネルギースタンドの状況について講演を行う。講演に先だって、油客網の創始者兼CEO邢瑞松氏に話を聞いた。

---:今回はお時間をいただきありがとうございます。さっそくですが、「油客網(GasLook)」の事業や集めているデータについて教えてください。

「油客網(GasLook)」は、2009年に設立された自動車エネルギーデータ提供会社です。扱っているデータは、ガソリンスタンドを中心に世界の自動車エネルギー供給スタンドのさまざまな情報です。世界中から集めた情報を自動車メーカー、地図事業者、カーナビメーカー、データ分析会社などに提供しています。

調査対象は5大陸、82か国・地域に及び、ガソリンスタンドで52万軒、充電スタンド(充電器)が46万基、水素ステーションが807、CNGなどのガススタンドが3万2千軒ほどになります。提供可能な情報は、位置情報、ガソリン等の銘柄、店舗のサービス内容(給油、整備、ショップ、他サービス)、充電出力や仕様など多岐にわたります。

---:日本では、主に過疎地域においてガソリンスタンドが減っている現状があります。これは、単に地方では経営が成り立たなくなっており、法律が規定する設備投資や更新ができず、老朽化で事業をたたむスタンドが増えているからです。中国は急速に電動化が進んでいますが、中国でもガソリンスタンドが減っているということはあるのでしょうか。

たしかに増加率でいえば充電器・充電スタンドのほうが大きいですね。中国国内にはおよそ10万軒のガソリンスタンドがあると言われていますが、ガソリンスタンドが減っているという状況はありません。2019年のデータですが、世界の新車販売8800万台のうち2800万台、約25%が中国での販売です。現在中国には3億台の車両が走っていると言われています。

いまのところ電動化の動きがガソリンスタンドを減らすということはありません。

---:なるほど。減っている日本でも3万件近くあるので、中国全土を考えるとまだ少ないのかもしれませんね。

ガソリンスタンドのほとんどが都市部に集中していますが、営利を目的としない公共性の高いスタンドもあります。また、道路上のガソリンスタンドの間隔について法的な規制もあります。ガソリンスタンドは計画的に整備が進んでいます。

---:中国のガソリンスタンド業界の課題はなんでしょうか。

売上、収益の問題は当然あります。集客のために値段を下げるところもあり、競争も起きています。そのため、修理やメンテナンスの他、コンビニや用品販売、レストランなどサービス事業の併設など多角化が広がっています。

また中国にもガソリンスタンドの設置基準や安全基準があります。設置や当局が規制・管理しており、審査も厳格です。

---:多角化の中で電動化の影響はあるのでしょうか。日本でもガソリンスタンドが充電設備を設置する動きがあります。

中国では「総合エネルギー港」が増えています。政策的な支援もあり、ガソリン、ガス、充電、バッテリー交換ができる総合施設が増えています。設置基準や審査は当然厳しいですが、政策的なプロジェクトとしてエネルギーインフラ全体を整備することも課題のひとつです。

たとえば、中国には、急速と低速の2種類の充電スタンドがあります。急速と低速はメーカーや車両に依存することが多いのですが、誰でも使える充電器として、公共充電器の整備も進めています。公共充電器は、現在約18万基になります。

---:エネルギースタンド全体の情報をカタログ化している企業というのは珍しいと思います。「油客網(GasLook)」のライバルと言える企業はあるのでしょうか。

フランスに1社、同じようなデータを扱っている企業が存在します。ただし、こちらはEU圏の情報がメインで、中国、北米、アジア、アフリカ、EUまでカバーしているのはうちだけです。

---:世界中のエネルギースタンドの状況を見ているわけですが、その視点で各国のエネルギー政策や電動化シフトについてどう分析しているのでしょうか。

ゼロエミッション政策は主要国に共通するものです。電動化シフトは急速に進むと思っています。グローバルの動きでいくと、電動化が進むとガソリン価格が下がるという予想があります。充電スタンド、充電器は増える傾向が続いています。おそらくその数は、2030年から35年にかけてバランスして安定してくると思います。

中長期の傾向として、次世代車は、EVとFCVが発展していくでしょう。電動化は中国とEUが牽引している状態です。日本は水素、FCVに注力する戦略と分析しています。東南アジアとアフリカは、電動化にまだ時間がかかるので、しばらくガソリン車の市場が続くでしょう。

邢瑞松氏の講演は、4月23日開催のオンラインセミナーコネクテッド・OTA2021(無料)にて聞くことができる。

《中尾真二》

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