北海道は4月21日、2030年度末に予定されている北海道新幹線札幌延伸時に経営分離される並行在来線(函館本線函館~小樽)のうち、長万部~小樽間の収支見通しを明らかにした。
これは、同日に開かれた「北海道新幹線並行在来線対策協議会」の後志(しりべし)ブロック会議で公表されたもの。同協議会は北海道と沿線自治体から構成されており、長万部駅(北海道長万部町)を境に、北を後志ブロック会議、南を渡島(おしま)ブロック会議が協議している。
今回、後志ブロック会議で示された収支見通しは、2015~19年度の輸送密度や2018~60年の将来推計人口などを基に、全線での鉄道存続、余市~小樽間のみの鉄道存続、全線バス転換という3つの「交通モード」ごとに、分離から30年間分を推計したもので、鉄道での存続は第3セクター方式とされている。
それによると、全線鉄道存続の場合、初期投資に191.2億円を想定。単年で23億7000万~24億8000万円の赤字が見込まれている。
函館本線長万部駅。同駅以南の並行在来線については渡島ブロック会議で協議されているが、貨物列車の問題があり、存続の方向性は長万部~小樽間よりも紛糾することが予想される。比較的輸送密度が高い余市~小樽間のみ鉄道を存続させた場合は、鉄道部分の初期投資が53億円。単年で6億3000万~6億9000万円の赤字が見込まれている。これにバス転換を想定した長万部~余市間を加えると、初期投資は64億5000万円。単年で7億4000万~8億6000万円の赤字が見込まれ、全線鉄道存続の3分の1程度まで圧縮される。
全線バス転換の場合は、初期投資が18億3000万円。単年では2億~2億8000万円の赤字となり、全線鉄道存続の1割程度にまで圧縮される。ただし、バス転換のケースでは、国や北海道からの補助を考慮していない。
推計に際してベースのひとつとなった長万部~小樽間の区間ごとの輸送密度。北海道後志総合振興局管内で唯一の市である小樽市に近く、札幌への直通客も多い余市~小樽間は比較的高いものの、それでも北海道新幹線札幌延伸から30年後には2018年度の4分の1近くまで低下することが予測されている。北海道では今後、3回のブロック会議を予定しているが、9月に開催される会議で交通モードの方向性を決め、2022年には最終的に方策を決定したいとしている。