ミニカーの安全技術への心意気
年間販売200万台突破が確実で、今年のヒット商品の代表格となる軽自動車は、安全技術面でも意欲的なチャレンジが続いている。ダイハツ工業が5日発売した主力車種『ムーヴ』シリーズでは、プリクラッシュセーフティ・システムや車線逸脱警報装置など登録車の上級モデルで搭載が始まったばかりの技術が実用化された。
これらの技術はパック形態のオプションとして12月に発売され、装着したモデルは190万円台。コストパフォーマンスへの評価は分かれるところだろうが、ミニカーへの安全技術普及にかける心意気は高く評価されてよい。
◆実用化4年弱で軽にも展開されるプリクラ
脇見や居眠りなどが主因となる追突事故の防止や、その被害軽減につなげるプリクラッシュセーフティは、2003年2月にトヨタ自動車の『ハリアー』で世界初の実用化となった。日本の交通事故では「追突」の件数が最も多く、プリクラの普及が事故防止に果たす役割が期待されている。
ダイハツが開発したシステムは、バンパーに設置したレーザーレーダーと車室内の前方監視カメラによる画像処理を融合させて先行車を認識する。例えばカーブ時のガードレールを車と見誤らないよう認識性能を高め、「比較的コストも安く仕上げた」(開発担当者)という。
ムーヴではスポーティタイプ「ムーヴカスタム」の最上級モデル「RS」の2輪駆動車に、他の安全技術とともにメーカーオプションで設定されている。
◆標準装備への道は先駆的取り組みが第一歩
このオプションは、すでに旧型車でも設定されていたVSC(ビークル・スタビリティ・コントロール)や、今回、軽では初採用となった車線逸脱警報装置、さらにクルーズコントロール、サイドおよびカーテンシールドエアバッグなどとパックになった豪華版。
価格は36万7500円で、設定モデルの車両本体と合わせると約192万円になる。先端安全技術を200万円を切るところで実現した。経済性が魅力の軽に200万円近い対価を支払うかどうかは、まさにユーザーの価値観であろうが、技術の普及は適正なコストを反映した商品化から始まる。
いまや標準装備の前席エアバッグは、1987年にホンダが実用化した時、運転席用だけで数十万円もした。クルマの価値をもう一段アップさせる「標準装備」への道は、熾烈な開発競争を勝ち抜いた先駆的な取り組みが第一歩となるのは、安全技術史が証明している。