これでは「アウディへの領空侵犯じゃないの?」とも思えるカッコ良さこそが、このモデル最大の存在理由。ルックスで納得できるか否かが、『ゴルフ』ベースの構造・内容のクルマで遥かに高い支払い金額に応じられるかどうかの分かれ道。
1.8m超の全幅に巨大な左右のドアという組み合わせゆえ、降車の際には隣のクルマや壁に当たらないかとハラハラさせられる事は避けられない。一方で、強い平面絞りが施されたキャビン内に2席分をセンター寄りに配置した後席が“まともに座れる空間”なのは、ワイドボディがあってこそ実現されたパッケージ。
もしもあと50mmほど全幅が狭かったら「何ともカッコ悪いクーペ」になったか、「後席は完全緊急用のクーペ」になったかのいずれかに違いない。というわけで、日常シーンでのマイナス面は、「このクルマに限ってはOK」と判定。
2種のエンジンが用意される日本仕様のシロッコで、個人的に選ぶとなれば「迷わず1.4リットルモデル」。理由は「動力性能はこちらで十分な上に、フットワークの軽快さもこちらが明確に上を行く」から。18インチシューズを履く2.0リットルモデルには電子制御の可変減衰力ダンパー「DCC」が採用されるものの、それでも少々ドタバタ感が強い。17インチ+DCCという組み合わせが選べると良いのに。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
河村康彦|モータージャーナリスト
1985年よりフリーランス活動を開始。自動車専門誌を中心に健筆を振るっているモータージャーナリスト。ワールド・カーオブザイヤー選考委員、インターナショナル・エンジンオブザイヤー選考委員。