[EV充電インフラレポート]世界標準への最大の課題は“使い勝手”

エコカー EV
急速充電用のノズルは非常に重く、硬い。給電口へ差し込むのもひと苦労だ
急速充電用のノズルは非常に重く、硬い。給電口へ差し込むのもひと苦労だ 全 16 枚 拡大写真

三菱自動車『i-MiEV』を使ったエコラン大会で、実際に急速充電を繰り返すドライブを体験した。EV普及において最重要課題のひとつとされている急速充電器のインフラだが、今回のコースとなった東京-神奈川間では現段階でも数の上では不足はないように思われた。早急な改善が必要と感じられたのは、その使い勝手だ。

画像16枚:EV充電インフラレポート

第一の問題は、ガソリン給油機のノズルに似た充電プラグをソケットに差し込むのが非常に困難であること。少し力を込めればスポッとはまるようなものではなく、どこかが折損するのではないかと心配になるくらいグリグリと押す必要があるのだ。また、急速充電の大電流に耐えるため、ケーブルもガソリン給油機より太く、重く、硬い。力の弱い女性や高齢者が自分で操作するのはかなり難しいように思われた。重いケーブルとプラグを簡単に動かせるようにするため、ガイドアーム方式にしたり、ソケットを小さい力で確実に挿入できるような形状に変更するといった改善は必須だ。

接続時のプラグ操作法にも違和感がある。取っ手に可動式のレバーがあるのだが、挿し込むときにはそのレバーを握らずに挿入し、完全にはまってからレバーを握って抜けないように固定するという手順となっている。給油口にノズルを入れてからレバーを操作する給油機に似せたつもりなのであろうが、充電プラグを固定するという操作の場合、人間工学的には握って挿入、リリースして固定という、一般の機械におけるロック操作と手順のほうがはるかに自然なのだ。

正直に言って、使い勝手はガソリン、軽油、灯油のセルフ給油とは比べ物にならないほど悪かった。急速充電器の規格化を推進しているチャデモ協議会会長の勝俣恒久東京電力会長は「この方式を世界標準にしていきたい」と意気込んでいたが、そのためにはまず、このユーザビリティを早急に改善するべきだ。説明がなくとも、誰でも、気軽に使う事ができなければ、日本だけでなく世界での標準化などとても見込む事はできない。

また、実証実験段階であるとはいえ、充電の操作法や車両情報をユーザーに知らせるグラフィックインターフェイスの出来も非常に稚拙に感じた。屋外に置かれているのに、液晶はグレアが激しく、ちょっと日射の方向が悪いと情報を読むのにも一苦労。グラフィック自体も解像度が低く、10年以上前のDSTN液晶でもここまで低品位ではないという表示品質だった。

情報表示は電池残量が棒グラフで大まかに表示されるだけで、パーセンテージや電力量など、具体的な数値は一切なし。充電残時間も、充電開始直後はほんの10%未満の充電に14分ほどもかかると表示され、それがあっという間に8分、6分と短くなっていく。まるでインターネットのファイルダウンロードの残時間のようなデタラメさだ。

もっともインターフェイスについては改善は決して難しいものではない。現在試験導入されているENEOSの急速充電器では、充電器本体とは別に、操作も情報表示もNECと共同開発した高度なタッチパネルインターフェースを用意するといった工夫がされており、他の充電設備にも応用していくことは可能だ。問題はやはり充電作業にかかわる部分の洗練。ダメなシステムがいったん普及してしまうと、その更新には膨大なエネルギーを要する。それだけに、対策を急ぐ必要がある。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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