【広州モーターショー10】氾濫する偽造部品の危険性を呼びかける

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旭硝子が展示する中国生産の模倣品の例。模倣品のガラスは細かく砕けず、危険だ
旭硝子が展示する中国生産の模倣品の例。模倣品のガラスは細かく砕けず、危険だ 全 12 枚 拡大写真

日本貿易振興機構(JETRO)は、日本の自動車メーカーや部品メーカーと協力して、中国市場に氾濫する自動車部品の模倣品の根絶、知的財産権の保護をめざし、模倣品を使用した際の危険性をうったえる活動を続けている。

広州モーターショーでもブースを設け、一般ユーザーに向けて注意を呼びかけた。

中国では自動車部品の模倣品が数多く市場に出回っており、政府としても生産拠点、販売ネットワーク、取り扱い業者の特定をしようと試みているが、全ての実態をつかめずにいるというのが現状だ。

模倣品は正規品に比べて10分の1程度の価格で販売されるなどかなり安価で、収益の少ない個人運営の整備工場などで用いられることが多いのだという。こうした整備工場で修理をおこなった場合、「7割の確率で模倣品が取付けられてしまう」(JETRO関係者)という。

正規ディーラーに比べ整備費用も安く、近所にあり気軽に利用出来るため、ユーザーは整備工場に修理を依頼し、気づかぬうちに模倣品が装着されている、ということになる。悪質な工場では、「正規品を取付ける」と部品を見せておきながら、実際の行程では模倣品を取付けてしまうという事例もあるようだ。

旭硝子・知的財産センターで商標チームのチームリーダーを務める石橋賢一氏は、「こうした模倣品は、外観を見ただけでは正規品と区別がつきません。まして一般ユーザーならなおさら。そして、自動車の安全性に深くかかわる部品に多くの模倣品が使われている点が大きな問題です。模倣品は外観はそっくりにつくられていても、耐久性や性能の面では非常に質が低いのです」と語る。車両火災や整備不良による事故の原因となるだけでなく、いざという時にエアバッグが開かないといった命にかかわる危険な事例もあるという。

「我々の取り扱うガラスを例にあげますと、通常、正規品のフロントガラスは事故があった際には細かく砕けて、中に挟んでいるフィルムの層もあわせて乗員、または歩行者の衝撃を和らげる役割をします。しかし模倣品は、形状はまったく同じでも、ガラスのコップのように大きい破片となって割れ衝撃を吸収できないばかりか、破片による怪我の原因にもなり、大変危険なのです」

模倣品の取付工場がわかれば販売網を特定することはできないのだろうか。石橋氏は「難しいですね」と眉をひそめる。「弊社の製品は生産ライン上で正規品である証のマークを入れます。しかし模倣品は違います。プレーンな状態のガラスを大量に生産する。そして正規品のマークを精巧に真似たものを別に用意する。そして販売店に卸す際にマークをつけるという手法を取るのです。こうすることで、万が一摘発されても、工場から出てくるのは“ただのガラス”のため、それ以上追求することができないという事態に陥るのです」と話した。

このように業者を特定できたとしても偽造を立証することが困難な上、こうした闇業者の数はあとを断たないため、政府としても腰が重くなってしまうようだ。また、模倣部品が氾濫する現状を大々的にアピールすることにつながってしまうことを嫌がり、模倣部品根絶に向けて積極的な対策を打つことを避けているのだという。

模倣品の根絶、知的財産権の保護の重要性についてはJETROだけでなく、日本自動車工業会、日本自動車研究所(JARI)などと協力し、国内外の自動車メーカー、部品メーカーとともに世界中に向けて発信をおこなっている。

しかしこうした取組みが現実のものとなっていくためには、模倣部品を使わない、使わせないというユーザーのユーザーの意識向上が欠かせない。石橋氏は、「まずは現状を知ってもらいたい。そして模倣品が使われた際の危険性を意識してもらいたい。はっきり言って、模倣品が全てなくなるのはかなり難しいでしょう。ユーザーの意識変化が少しでも大きな流れになって行く事ができれば」と抱負を語った。

《宮崎壮人》

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