サーブは昨年から、VTホールディングス系のPCIによって輸入されるようになった。販売するのはヤナセグローバルモータースを中心にしたネットワークだ。
『9-3エステート』をベースに、ルーフレールを備えた専用の外観と、高めの最低地上高によってSUV感覚を備えたモデルに仕上げられたのが『9-3X』で、サーブの中でも個性的なモデルとして注目される。
運転席に乗り込むと、イグニッションキーのシリンダーがセンターコンソールに設けられている。サーブが航空機メーカーをルーツとする自動車メーカーであることを示すひとつの特徴だ。
搭載エンジンは4気筒2.0リットルのインタークーラー付きターボ。サーブ9-3系のラインナップの中で最もパワフルなエンジンであり、強烈な加速感を味わえる。
6速ATにはマニュアルモードが設けられていてパドルによって変速操作をすることも可能。きびきびした走りを楽しみたいなら積極的にパドルを操作すれば良い。
ステアリングはちょっと柔らかめの操舵感覚で、しっかり舵を取るにはやや手応え不足の印象もあった。足回りも標準の9-3に比べるとやや柔らかめの印象。これはやや高める最低地上高を持つことも影響している。
今回はドライのオンロードで走っただけなのでその恩恵に預かることはできなかったが、9-3XはXWDと呼ぶハルデックスカップリングを採用した4WDシステムを持つ。前後輪の駆動力配分をするだけでなく、アクティブリヤLSDによって左右配分も行うので、滑りやすい路面でも最適のロードホールディングを実現するという。
販売台数の限られるモデルだけに、価格設定はやや高めにならざるを得ないが、ほかのクルマとは違う個性的なクルマに乗りたいなら、こんな選択もあり得る。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。