【インタビュー】間違いだらけの自転車交通、認識の修正が急務…ホダカ 大宅宏幸氏

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ホダカ 大宅宏幸氏
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2013年6月に成立した改正道路交通法により、自転車は、これまで双方向に通行できた道路の路側帯の走行が、左側通行に限定される。

サイクリストの増大など自転車に対する注目は高まる一方で、マナー低下による事故や道路環境の根本的な不備など自転車の安全な利用に関する課題は山積だ。

現在の自転車を取り巻く環境について「マルキン」ブランドの自転車を全国展開するホダカのブランドマネージャー、大宅宏幸氏に話を聞いた。

現在、ホダカはホームセンターや家電量販店に向けて「マルキン」ブランドの自転車を展開。また、自転車専門店に向けてスポーツタイプの「コーダーブルーム」ブランド、イオンで展開するスポーツタイプの「モーメンタム」ブランドと、日常の足から、増大するサイクリストのニーズに応えている。

自転車好きが集まり“サイクリング文化の構築”を会社の理念に掲げる同社では、自転車通勤の推奨に加えて、月に一回、土曜日に出勤日を設けて社内サイクリングの実施や大会出場など、全社員出勤扱いにして自転車を使った活動を仕事として実施している。

自転車の正しい交通ルールを大多数が知らない

---:日常の足となるいわゆる“ママチャリ”から、人気が高まっているスポーツタイプの自転車を扱うホダカですが、現在の日本における自転車の利用状況について、自転車メーカーとしてはどのような認識ですか。

大宅氏(以下敬称略):まずは法規的な部分を話しますと、自転車は道路交通法上は“軽車両”との位置づけで、車と同じなので基本的に車道の左側を走行することになります。しかし、現在の日本の道路状況を考えると、車道を走ると交通量が多くて危なく、仕方なく歩道を走行せざるをえない状況もあるかと思います。昨今、自転車に対する規制が徹底してきていて、東京都などのようすをみると、“ママチャリ”で走る人たちも車道を走行するように指導されていますが、まだまだ課題はあると思います。

車と自転車の共存

---:確かに、自転車のスペックや乗る人の体力によって、スピードも違いますよね。歩道を追い出された自転車が車道側を走行してくるようになるといった部分、自動車ドライバー側の認識も薄いと思います。

大宅:自転車に関する交通ルールに対して、道路の状況が追いついていない印象を受けます。ロードバイクの場合20-30km/hのスピードが出ますのでほとんど原付バイク並ですが、“ママチャリ”の場合は車道を走行すると自動車との速度差がありすぎて危険な場所もあり、道路状況が対応していない実情があります。

---:メーカーとして、交通環境や道路環境に関して、行政などに意見をされたりすることは。

---:自転車業界全体としては、その辺をどうやって変えていくのかが課題となっています。自転車を売るだけでなく、インフラや交通システムといった自転車の利用環境を整える取り組みをすることが、私たちにも求められていると感じています。

---:自転車に対する問題が注目されるのも、自転車を楽しむ人が増えていることが要因としてあるのでしょうか。

大宅:自転車に乗る人は非常に増えていて需要も高まっていると思います。環境や健康に対する意識の高まりと、自転車スポーツに対する認知や、実際に街中を走っている人を見て、新たに自転車に乗る人が出てくるといった流れがあるように感じます。私自身も大学から自転車をやっていて今でも通勤で1日往復で35kmくらい走っていますが、自転車が走る上での道路環境の不備は痛切に感じます。

---:今回、自転車に対する規制が見直されて、自転車による路側帯の通行が左側通行に限定されることになりましたが、どのような印象を持たれましたか。

大宅:非常に良い流れだと思います。業界全体としても“チームキープレフト”運動を行ってきましたが、それを徹底するだけで、逆走による衝突などを少なくする事が出来ると思います。自転車の安全な利用環境を作る上での第一歩になってくれればと思います。

自転車と歩行者、交通ルールの認識共有は急務

---:一番保護しなければならないのは歩行者であると思いますが、歩行者と同じ道を走る、自転車に乗る人、自動車を運転する人も、お互いの意識、知識を共有しないといけませんね。

大宅:自分でも不思議なのですが、自転車に乗っているときは自動車の危険な部分が目についてしまいますが、車で道路を走っていると、危ない乗り方をしている自転車が目についてしまいます。自転車も自動車も、お互いに同じ道路を共有して走っているという意識を持つことが大切になってくると思います。

特に、自転車に乗る人に関して言うと、やむを得ず歩道を走行する場合は歩行者を意識すること、車道側を走るときは車を意識して運転することが、歩行者や自動車ドライバーへの安心に繋がるはずです。

---:ジャパンカップ13が開催された宇都宮では、大きな道路で自転車が走るところは、きちんと自転車用レーンが青く塗られていて、街全体で自転車が走りやすいような環境が出来上がっていると感じました。こういった環境が全国に広がっていくと交通流は安全になりますね。

大宅:そうですね。自転車を走ることを想定した道路環境の整備が必要だと思います。

自転車のハンドルを握ったらドライバー出る意識を

---:自動車の国内保有台数は7000-8000万台あって、自転車も国内に約7000万台あるとの調査結果があります。自動車には自賠責保険や任意保険がありますが、自転車には自賠責保険すらありません。自転車に乗った子供が加害者になって多額の賠償請求を求められるといった事象も発生し、自転車による加害事故があるという意識は自動車に比べて極端に薄い気がします。

大宅:当社の社員に関しては、会社の行事としてサイクリングを行っていることから、団体で契約している保険に必ず入ってもらっています。また、イベントを開催したときに自転車に試乗してもらう場合にも、お客様には必ず保険に入ってもらっています。ハンドルを握れば自動車のドライバーと一緒で、自分がケガをするだけでなく、相手を傷つけることもあるという認識が必要になります。

---:自動車と違って自転車は運転免許もいらず、誰にでも手軽に乗れるだけに、安全に対する意識が薄い部分が拭いきれません。意識を改める取り組みが必要になる気がします。

大宅:最近では自転車向けの保険というのも出てきています。我々メーカーとしても、自転車を運転することには大きな責任があるという認識を広めるとともに、お客様に安心・安全といったソフトの提供もしていけたらと思っています。

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