電動スポーツカーならではの「音の楽しみ方」…GLMとローランド、サウンドシステムを共同開発

エコカー EV
サウンドシステムを搭載したトミーカイラZZと小間社長(右)と三木社長
サウンドシステムを搭載したトミーカイラZZと小間社長(右)と三木社長 全 11 枚 拡大写真
GLMは6月2日、ローランドと開発したEV向けサウンドシステムの共同記者発表会を開催した。これはEVスポーツカー『トミーカイラZZ』のオプションとして設定され、2015年秋から販売が開始される。

背景には「EVは静粛性に優れるという長所はあるが、スポーツカーなどで走りを楽しむ人にとっては物足りないという声もある」ということがあるという。そこで「ノイズがない」ことを逆手にとって「スポーツカーだから、おもしろくて心躍らせる音を付加しようと考えました」とGLMの小間裕康・代表取締役社長。

EVで音といえば歩行者に気づいてもらうため、車外に向けて音を出す装置が思い浮かぶが、このサウンドシステムはそうした「安全装備」として開発されたものではない。乗員の感性に作用するものであり、EVだから味わえる楽しさを提案するものだ。

「EVとは”Exotic Vehicle”だと考えています」と小間社長。「環境に優しいというだけでは、なかなか消費に結びつかない。EVを欲しいという気持ちになる、ワクワクするものが必要」と考え、そのひとつとして「魅力的なサウンド」を着想したのだとか。

GLMとともに開発を手がけたローランドは、電子楽器の分野で40年以上の歴史を持つ。「ミュージシャンの要求に応えるだけでなく、そのノウハウを楽器以外にも応用できることは嬉しい」と三木純一・代表取締役社長。開発プロジェクトは「アーティスティックな側面のある、チャレンジしがいのあるもの」だったという。

ローランドの湯川純郎・上席執行役員によれば「ローランドの技術には3つの要素があります。それはハードウェアとソフトウェア、そして”アートウェア”です」と説明。アートウェアとは遊び心といったような感覚的な要素のことだという。

サウンドシステムではこの感性領域の性能のために、ローランドが独自の音色(おんしょく)技術を用いて開発したデジタルシンセサイザー音源「スーパー・ナチュラル」を採用。走行状況に合った、違和感の少ない自然な音を実現している。

一般的なPCM音源では、サンプリングした「ひとつの音データ」を変化させるため、メロディにするとどうしても不自然な音に聴こえてしまう。EVの場合、低速時には自然に聴こえる音データでも、モーターの回転に合わせて音を変化させるにつれ、違和感も大きくなってゆく。

しかしスーパー・ナチュラルは楽器などの音をデータとしてモデリングするだけでなく、演奏時における楽器ごとの奏法や「振る舞い」に合わせてリアルタイムにモデリングをおこなう。これにより自然でダイナミックな音を実現。

EVの疑似エンジン音の場合、車載ネットワークから得られる車速やアクセルの踏み込み量、動力系への負荷といった車両の状況を検知して、リアルタイムにモデリングをおこなっている。

発表会で披露されたいくつかの音サンプルでは、エンジン音に若干の近未来感を加えているのが印象的だった。今後はさらに、さまざまなサウンドクリエイターによる独自の音を追加し、ユーザーが取り込むことで「音をカスタマイズ」できるようにする可能性もあるという。

「後付けだからこそ、おもしろい音ができるんです。公道を安全走行していても、レーシングカーさながらの音で高揚感を得られるというのは楽しみ方のひとつですね」と小間社長。

たしかにカーマニアの中には、モーターの高負荷時にマツダの4ロータリーやマトラのV12など、甲高くむせび泣くような官能的な音を欲しがる人もいるかもしれない。

またSF映画やアニメで使われているような、エンジンではあり得ない典型的な「未来の乗り物」の、それでいて違和感を覚えない自然な音を出すこともできるだろう。

なおオーディオレスのトミーカイラZZに搭載した状態では、運転席の背後にスピーカーがあり、フロントガラス下にツイーターを並べている。ローランドの三木社長によれば「システムの他社への供給や応用も考えていきたい」とのことで、幅広い分野での活用が期待される。

《古庄 速人》

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