【マツダ 開発者 徹底インタビュー】 CX-5 編…オンオフ問わず自分を主張できる、SUVの“ど真ん中”

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マツダ CX-5を担当した、大塚正志 開発主査(左)と玉谷聡チーフデザイナー(右)
マツダ CX-5を担当した、大塚正志 開発主査(左)と玉谷聡チーフデザイナー(右) 全 18 枚 拡大写真

マツダ『CX-5』のデビューから、3年余りが経った。今日まで、「SKYACTIV技術」とデザインテーマ「魂動」を一貫して採用し、開発された新世代商品群は6モデルに及ぶ。『アテンザ』『アクセラ』『デミオ』『CX-3』、そして先日発表となった『ロードスター』で一つの節目を迎えた。

今年1月に大幅改良を行い、技術面の向上とデザインの刷新をはかったCX-5。同車のマツダラインナップにおける位置づけは、発売当初と今で異なるのか。今後の方向性も含め、大塚正志 開発主査と玉谷聡チーフデザイナーに話を聞いた。

◆クロスオーバー寄りのSUVから本格SUVへ

----:現在は本格SUVという位置付けのCX-5ですが、デビュー当時はクロスオーバーと謳っていましたよね。

玉谷聡チーフデザイナー(以下敬称略):SUVには背の高さやボディとキャビンの比率など、こうでなければいけないという骨格のバランスがあります。これを踏まえた上で快適性やマルチユーティリティを実現し、「魂動デザイン」を表現したものをきちんと作っていますよ。

たしかに開発当時は、クロカンも含めたSUVというカテゴリーの中で、クロスオーバー寄りのポジションを意識していました。しかし実際に発売してみたら、他社からもっと乗用車寄りのクロスオーバーモデルがたくさん出てきた。SUVの枠組み全体が乗用車のほうへ動いたことで、SUVの中心に位置することになったわけです。

----:クリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」を搭載したことも話題になりました。

大塚正志 主査(以下敬称略):CX-5が日本市場で高く評価された理由として、クリーンディーゼルの存在は大きいですね。発売前は半信半疑だったところもあったと思うのですが、お客様にはディーゼルのよさを理解していただけました。

その後の車種にも設定されるようになったのは、CX-5が役割を果たした結果だと思います。ディーゼルの力強さはSUVと相性がいい。それがマツダ車でなければ得られない、他にはない価値になったんです。

----:ロードスター発表会後に行われた、ファンイベント「Be a driver. Celebration」ではユーザーからどんな意見がありましたか?

大塚:「10数年ぶりにクルマを買い替え、CX-5に乗っている。それからはカスタマイズしたり、ドライブで遠くまで出かけるようになった」という方がいらっしゃいました。人生をいい方向に変えるきっかけとして僕らが関与できた。製品を作って売る立場の人間として、すごく嬉しいことですね。

玉谷:熱烈なファンが多くて、褒め言葉と同時に厳しい指摘もいただきました。「いいデザインだ」と言ってくれるのは大きな励みになっています。

◆SUVの本質を磨いた改良

----:今年の1月には大幅なアップデートを受けました。カテゴリーの中心となったことで、どのようなポイントを改良したのでしょうか?

大塚:ファッション、ライフスタイルなどの価値観の変化で、クルマ選びでもSUVを選ぶ理由が変わってきている。こうした中でCX-5はどの方向に進化していけばいいのか。これを考えたときに出てきたのが「センター・オブ・SUV」という言葉です。

----:SUVの本質を磨いたということですね?

大塚:お客様がSUVというものに期待するのは、オフタイムでもオンタイムでも、自分というものをしっかり主張できるかどうか。カジュアルでもスーツ姿でも恥ずかしくないものを期待します。

ですから快適な乗り心地、家族を安全に運べて荷物もしっかり積める使い勝手といった基本的な部分を絶対に外さず、理想を追求して作り込んでいこうとデザイナーにもエンジニアにも注文を出しました。

玉谷:SUV的な表現をより強めて、インテリアの品質感向上も同時にやりました。マツダの中では唯一のSUVですから、それをラインナップの中でしっかり主張するようにしています。

大塚:SUVのある生活が楽しくなって、またSUVを買いたくなる。そういうふうになってくれるといいなという思いを込めて商品改良しています。

◆マツダなりの解釈で定めた「カテゴリーの中心」

----:しかしカテゴリーの中心を狙って投入するということは、もともと典型的なものを欲しがる人だけがユーザーということになってしまいませんか? すると先ほどの「人生を変えるきっかけ」とはならなくなってしまうのでは…。

大塚:100人いたら、100通りの個性があります。実際にはさまざまな価値観があって、感覚が近い人を集めて商品を提供すれば共感されやすい。だからどこをマジョリティ(多数派)と捉えるかによって、考え方はまったく変わってくるんです。

たとえばミニバンは「ファミリー向け」と思われていますが、実際は子離れした年配夫婦のユーザーもかなり多い。これはたまに来る孫のための座席として用意してるんです。ですから「どんな楽しみを期待してクルマを選んでいるのか?」という切り口次第なんです。

----:マツダらしい切り口で考えた結果の、カテゴリーの中心なんですね。

大塚:他社の考える中心点とは異なるかもしれませんが、いろいろな考え方や選択肢があっていいと思っています。

玉谷:マツダというブランドは、同一セグメントの同じカテゴリーに複数の車種を投入するほどの規模ではありません。1車種ずつになるからには、「マツダネス(マツダらしさの度合い)」が濃厚であり、ラインナップの中で役割をしっかり担えることが肝になります。

◆楽しくクルマ選びをしてほしい

----:『CX-3」が登場したことで、マツダの中でCX-5の位置付けが少し変わったりということはないのでしょうか?

大塚:全くありません。あるユーザーから「CX-3を買うつもりでディーラーへ行ったんですが、CX-5を買ってしまいました」という声をいただきました。どちらを選んだかではなく、どっちを買おうか悩んでくれたことが重要です。クルマ選びを楽しんでくれた、ということですから。

たとえこれが他社の商品を選ぶ結果になったとしても、「クルマってつまらないよね」と思われるよりは、楽しんでクルマ選びをしてくれるほうがいい。「クルマ離れ」なんていうのは、業界側の怠慢ですね。

玉谷:楽しんでクルマ選びをして、その結果としてマツダ車を買ってくれたら最高ですね。購入に至らなくてもいい。マツダというブランドに興味を持ち続けてくれれば、いつか買っていただくチャンスを作ることができますから。

◆前向きな人にマツダ車を選んでほしい

----:改良を受けたばかりですが、これからのCX-5、あるいはSUVの新型車が向かうべき方向を教えていただけますか?

大塚:まだまだSUVに多くの人が興味を持っているので、これからも他メーカーからどんどん出てくることになるでしょう。選択肢が増えるのはそれはそれでいいことです。そんな中で僕らが忘れてはいけないのは、特定の価値観のお客様に評価してもらえる「マツダらしさ」です。

----:その価値観とは、どんなものなのでしょう?

大塚:いろいろなことに、前向きにチャレンジしてゆく。さまざまなことに興味を抱いて、人生を楽しんでいる。こういう人がマツダのターゲットです。完璧を目指したいと思って生きている人です。

だから次のSUVも、そこを狙ったものになります。おそらく「ただ、なんとなく生きている」という人には共感してもらえないでしょう。ただ世の中はどんどん変わっていきますので、ソリューション(要素の組み合わせ)は現行モデルから変わりますよ。どんなものになるかは楽しみにしていてください。

《古庄 速人》

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